第129話 最低最悪ってマジですか?
ウランちゃんが無事に大聖堂から戻ってきた時は本当にホッとした。
ウランちゃんは持てる限りの証拠資料と、おそらく宝物庫にあったのだろう、教会が保管する聖遺物(アーティファクト)を大量に持ってきた。
ウランちゃん曰く、
「どれが人形のネックレスを解呪するアーティファクトかすぐに判断できなかったので」
との事だ。
ウランちゃんが持って来た聖遺物の中にはしっかりと人形のネックレスを解呪できる道具があった。
そのため、セシリアは無事呪いから解き放たれたのだが、精神的負担が大きかったせいで、まだ目を覚まさなかった。
しかし命に別状もなく、今は寝息を立てていると言うので心配はないだろう。
ウランちゃんは帰ってきてから、ダメ押しといった感じで、教会の不正事実を証拠資料を元に暴き出し、見事に1枚の用紙にまとめて見せた。
「これを大量に作成してばら撒きましょう」
ウランちゃんの指示通りにしてみると、教会への批判はさらに大きくなり、大司教はもう処刑は免れないだろうと言う状況になった。
もちろん、ジェイドへの懸賞金も事実無根ということで王様が直々に取り消してくれた。
その頃になるとセシリアも目を覚ましており、
「本当に!?本当に私、もうあそこに戻らなくてもいいの?」
そう言って大粒の涙をこぼした。
「みんな、ありがとう」
そう言って何度もみんなに頭を下げるセシリアを見て、大変だったが色々手を回して良かったと思っていた。
これでハッピーエンド、大円団だと思っていた。
だが……
王宮にて、王は苛立ちながら部下に尋ねる。
「大聖堂の結界はまだ解除できないのか?」
「申し訳ありません。今隣国から腕のいい、結界解除のスペシャリストを呼んでおりますので今しばらく」
自分が苛立っても、事が早く進む訳でないのは分かっているが、どうしても焦りが出てしまう。
きつく部下に言ってしまった事を恥じ、王は落ち着いた様子で続ける。
「中にいた人質は全員大聖堂から出られたのか?」
「はい、脱出した者達から話を聞いておりますが、大司教自ら、『誰も信用できないから出て行けと言われたようで』今大聖堂には大司教一人でいるのは間違いありませんし、そこは安心かと」
「うむ。大司教、いやジョゴスは何をしでかすか分からん。すぐに身柄を拘束しなくてはな……」
そう大司教、いや、今はその位を剥奪されたので、ただのジョゴスという老人は、あの市民達から今も笑いものにされている衝撃の婚約発表のすぐ後に、大聖堂に結界を張り籠城していたのだ。
「このまま結界を打ち破るまで、何もないといいのだが……」
そんな王の希望は虚しく打ち砕かれる。
その日は突然来た。
世界中の人々のスキルが、一瞬のうちに消えた。
そしてジョゴスが立てこもっていた大聖堂が、その建物ごと浮遊し、どこかに行ってしまったのだ。
………
……
…
ジョゴスは大聖堂の秘密の地下室にある拷問部屋に来ていた。
そこには浮遊する巨大な赤いクリスタルがあり、その中には美しい女性が閉じ込められていた。
閉じ込められて女性は眠っているのか死んでいるのか、ずっと目を瞑っている。
美しいだけでなく、どこか神々しいその女性にジョゴスは怒鳴りつける。
「アトム神!全てのスキルを剥奪だ!俺以外の全ての者からスキルをとり上げろ!!そしてそのスキルを全て俺に付与するんだ!!!」
気狂いのように何度もそう叫ぶが、クリスタルの中のアトム神は反応しない。
「ふざけるな!!」
そう言ってジョゴスがその指につけている指輪に邪悪な力を送り込むと、途端にクリスタルは濁り、クリスタルの中のアトム神は悶え苦しみ出した。
それでも頑なに応じないアトム神に痺れを切らしたジョゴスは、さらに邪悪な力を注ぐ。
「神なんだからこんな事で死なんだろ!!」
そう言って大量の邪気を流し込むと、アトム神はついに意識を失った。
「おい、起きろ!」
そう言ってまた邪気を流し込むと、アトム神はびくりと跳ね起きた。
「お前が私に従うまでこれは続ける!」
そう言ってジョゴスは拷問を続けた。
アトム神が拷問を受けて数日、思考能力もほとんど残っていなかったアトム神はついにジョゴスに屈した。
ジョゴスの命令通り、世界中の人々のスキルを取り上げ、それを全てジョゴスに渡したのだ。
「ふ、ふ、ふはは!やったぞ!ついにやったぞ!初めからこうしておけば良かったんだ!とりあえずこんなクソみたいな街からは出るぞ」
ジョゴスは浮遊魔法のスキルをレベルマックスで使用した。
大聖堂ごと、浮かび上がる。
「浮遊する城だ!神である私に相応しい。さぁ色々とやることはあるが、まずは私をこけにしたセシリアとジェイドを殺しに行くか」
ジョゴスは探知スキルを使用した。
レベルマックスのその力は簡単にセシリアとタクトの居場所を暴き出す。
「おお、ちょうど同じ場所にいるのか。ふははは!首を洗って待っていろよ!セシリア!ジェイド!!!」
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