第126話 アトム教の崩壊③

ノエルは浮遊魔法を使い、教会の真上まで来ていた。

こっそりと中に入るつもりだったが、巨大な魔力反応を感知してピタリと動きを止める。


ノエルはゆっくりと教会に向かって手を伸ばした。

すると、「バチバチ」っと音がしてノエルの手が焼けこげる。


「ふぅー。かなり厄介な結界だ」


ノエルは異空間から魔剣を取り出す。

ノエルの最大火力はこの魔剣での一撃だ。

思いっきり振りかぶり、結界を切り付ける。


結界と魔剣がぶつかり合い、眩い光を放つが、やがて魔剣の方が「バキィーーン」と激しい音を立てて弾かれる。


ノエルはやれやれと首を振り、諦めてその場を去っていった。



ノエルは孤児院に帰って来るとタクトに告げる。


「僕でもあの結界は無理だね。聖属性の結界だから、タクトの聖槍はもっと相性悪いだろうし、外から破壊は100パーセント無理だね。たぶん結界のスキル、それもレベルマックスなんじゃないかな、大司教は。おそらく、大司教本人が結界を解かない限り、教会には誰も入れないよ」


「くそぉー!!」


タクトは現状に絶望し、思わず大きな叫び声を上げた。


………


……



「大司教様!入り口の門番から連絡がありました!大聖女様が帰って来たとのことです!」


「何!すぐに行く!」


誰が大聖女を見つけたのか?一応見つけた部隊には褒美をやらねばならない。

そんな事を考えながら、私は上機嫌で門まで向かった。


私が張った結界の境目の所に、確かに門番と女が一人いた。

間違いない。セシリアだ。


私はその姿を見て、思わず笑みが溢れる。

虚な目、そして首には『人形のネックレス』を付けている。


「クックック」


そうか、やはり大聖女を見つけたのは『人形のネックレス』を預けていたラーチだったか。


「大司教様?」


警備兵が私の歪んだ笑みを見て怪訝な顔をする。

おっといかん。素が出てしまっていたようだ。

この顔を見た警備兵は後で処分するとして、今はセシリアだ。


「いや何。大聖女様が帰って来たのが嬉しくてついな。それより大聖女を連れてきたのはどいつだ?褒美をやるぞ」


「いえ、大聖女様お一人でこちらにいらっしゃいました」


「なるほど」


ラーチには戦闘には不向きだが、複数人で一日一回人間一人を特定の場所に転移させるという、高位の転移魔法を使うことができる警備隊を貸していたので、そいつらの力でここまで来たのだろう。

おそらく警備隊自体は大分遅れて到着するはずだ。

なんにせよ良くやってくれた。


私はセシリアの手を取り結界の中に引き入れた。

私と触れている者でないとこの結界は通り抜けることができない。


私は側に来たセシリアに耳元で指示を出した。


「明日正式に俺との婚約発表をする。それまで部屋で大人しくしていろ」


そう言うとセシリアは黙ってコクリとうなづき、自分の部屋に帰っていった。


あの生意気なセシリアが私の言うことを黙って聞いている。

思わずまた顔がにやけ、余りの快感にゾクリとした。


明日だ!明日私は全てを手に入れる事ができるのだ!

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