第119話 ウランとクレハ

ウランの場合


捉えたブレーメンの4人の子供とローラ、そして参謀役としてウランがセシリアを匿っている孤児院に派遣された。


孤児院施設の一室で、マザークレハとウランは作戦会議を行なっていた。


「まずは戦力を削ぐべきですね。個の力はタクトさんやアリスさん、リナがいるので問題ないです。あとノエルさんも力を貸してくれるので、1対1の戦闘に持ち込めれば、勝率は7割を超えるでしょう。が、いかんせん教会の信者が全て敵となると数が多すぎます」


そう話すウランを見て、戦力を削ぐという同じ策を考えていたクレハは目をギラつかせる。

しかしまだだ。ここで判断するべきではない。

クレハは顎をさすりながらウランに質問する。


「ほぉ、戦力を削ぐって、具体的にはどうする?」


「情報作戦」


「いいね!気に入ったよあんた!私と同じ考えだ!でっ?具体的には?」


「教会の悪い噂を流して不信感をつのらせましょう。元々教会に不信感を持つものを見つけて、その辺りに噂を流します。張り紙なんかもいいでしょう」


「さぁ、その作戦は本当に成功するかい?アトム神は私らにスキルを与えてる神だからね。信仰はかなり厚いと思うよ」


クレハがそう試すように言うと、ウランはメガネをクイっと上げ、揺るぎない口調で答えた。


「問題ありません」


「ほぉ、聞かせな」


「別に噂によってアトム教を裏切る者が大勢出るとは思っていません。ほんの少しの疑念で構わないのです。疑念を持ったまま戦えば、その剣にはわずかばかりの隙が生まれます。命を賭けて戦うことを躊躇うのです。それだけで教会の勢力は半減できるでしょう」


その言葉を聞いて、クレハは満足そうにうなづいた。


「想像以上に優秀なのを寄越してくれたね、タクトは。ウラン、戦力を削ぐ作戦はアンタに一任しようと思うがどうだい。悪いんだけどあたしは他にやっておきたいことがあるんでね」


「問題ありません」


冷静にそう答えるウランを見て、クレハは満足気に笑った。

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