第113話 裁判長、ここは死刑でどうですかってマジですか?

とりあえず応急処置はしたが魔力欠乏のためフラフラのヒル少年とローラさんを連れて、俺はギルドに向かった。


ヒル少年はフラフラになりながらも、道中俺に対し、


「タクトさん、すいません……本当に、ごめんなさい」


と、辛そうな顔で、俺を暗殺しようとした事を何度も謝罪し続けた。

今はそんな事は気にせず休むように言っても、ヒル少年はうわごとの様に謝罪を繰り返す。


俺は、


「事情は分かってるし、君が謝る必要なんてない。君は命懸けで、ローラさんを守ろうとしてくれたじゃないか。君は恩人だし、仲間だ」


と言った。

するとヒル少年は少しだけ表情を明るくし、


「タクトさん……ありがとうございます」


と言って眠ってしまった。

魔力だけじゃなく、体力も限界だったのだろう。

早く寝かせてあげよう。


ギルドには職員だけが入れる休憩スペース、仮眠スペースがあるので、そこにヒル少年を寝かせた。

ローラさんにヒル少年の看病を任せると、俺はギルドに設けられている会議室に向かった。

今後の事を考えなくては。

情報をみんなで整理したい。

そう思って会議室に入ったが、会議室の中はまだ日が落ちていないのにも関わらず、カーテンがきっちりと閉められ、真っ暗であった。


「あれ?なんでこんなに暗くしてるんだ?」


そう俺が独りごちた瞬間、


ボッ


と一本のローソクが付いた。


「これより、タクトさん浮気者裁判を開始する」


ローソクを点けたのは黒いマントを着たユキちゃんであった。

手には木槌をなぜか持っている。


「えっ?何、ユキちゃん、その格好」


「被告人は勝手に発言しないこと!!」


ノリノリである。


「あ、はい」


浮気者……確かに俺は色んな女性に手を出してしまっている。

今更と言えば今更だが、そこを責められるとなんとも言えない。


「ウラン検事、罪状をお願いします」


ユキちゃんがそう言うと、またボッとローソクが点き今度はウランちゃんが現れる。


「す、すいませんタクトさん。ユキさんがどうしても裁判をやるって聞かないもので……」


「ウラン検事!審議と関係ない話は慎むように!!」


「は、はい。被告人タクトは、ある女性と結婚している身でありながら、それを隠したまま、複数の女性と交際していたものである」


それは確かに事実だ。

しかし信じてもらうのは難しいかもしれないが、俺の行動には世界を救うためという理由があって……


「えーっと、なんで結婚の話が出てきたか分からないけど、これには深い理由が……」


「シャラーーーップ!!!証人!言ってやりなさい!!!!」


そう言ってもう一つローソクが点く。

そこに姿を現したのは……


「の、ノエル!?」


ノエルは必死で笑いを堪えながら俺の方を見ている。


「はーい裁判長!タクトさんは酷いやつです!私にプロポーズをする時も、ハーレムを作るけど結婚してほしいとか言ってました!」


「ノエル!ちょ!おま!!」


「私は涙ながらに、浮気の一つや二つは許すけれど、と言ったんですけど、タクトさんの浮気は一つや二つどころではありませーん♪有罪だと思います❤︎」


「ノエル!絶対お前面白がってるだろ!」


「面白がってません!裁判長!厳罰を!」


俺とノエルが言い争いをしていると、ユキちゃんは苛立った様子で木槌をドンドン机に叩きつけた。


「被告人と証人!イチャイチャしないでください!裁判長泣いちゃいますよ!!」


収拾がつかない状況に、ウランちゃんはため息をつくが、もっとカオスな状況が起こってしまう。


キィー……


そう言って会議室のドアが開き、新たに誰かが入ってきた。


「お兄ちゃん……結婚してたって……本当……」

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