第105話 お仕置きは嫌だ
ヒル視点
「やばい、どうする?どうする?大司教様絶対に怒ってたぞ」
ヨルとサヨはジェイドの居場所を突き止めるために調査に行ったし、アサは「眠い」って言って家に帰っちまった!
そもそもアサに報告なんか任せらんねぇから俺が大司教様に報告に行くしかなかったんだけど……最悪だ!
「次にしくじったら……分かっているな」って、絶対にやばい!
殺されるならまだいいが、お仕置き部屋だけは絶対に嫌だ!
やべぇぞ、どうする?どうする?ああぁぁ!!汗と震えが止まらねぇ!!!!
アサも、ヨルも、サヨも、レアスキル持ちだからきっと失敗しても大きな罰は無い。
見せしめに処分されるなら、風魔法なんてどノーマルなスキルしか持ってない俺に決まってる!
そもそも今回の作戦は俺の失敗じゃねぇのに。
失敗したのはアサの爆裂魔法だぞ!
……やっぱりあん時ジェイドを俺の魔法で殺しちまえばよかったんだ!
そうすれば丸く収まったのに、ヨルの野郎……。
やばいぞ!どうにかこの失態のオトシマエつけねぇと!
俺は大聖堂前の高い木の上で、一人頭をフル回転させ、この後どうすればいいか考え続けた。
だがいつまで経っても良案は浮かばない。
「あー!駄目だ!どう考えてもお仕置き部屋に入れられる未来しか見えねぇ!」
そんな時だった。
大聖堂の入り口で何か揉めているのがフッと目に入った。
「なぜ大聖女様にお会いできないのですか?」
そう食って掛かっているのは若いスタイルのいい女だ。
黒いローブの様な服を着ている。
「うるさい。今後一切大聖女様は一般人とはお会いにならないのだ!」
番兵さん、若い女にそんなに怒鳴りつけることないんじゃない?そいつ泣いちゃうかもよ?
そう思ったのだが、女は相変わらず強気だ。
「それは本当に大聖女様が望んだ事ですか?」
残念。大聖女の意思なんて関係ないの。教会の行動は全ては神の意志のもと進んでいるんだから、常識でしょ。
「黙れ!それ以上騒ぐと牢にぶち込むぞ!」
番兵がそう怒鳴りつけるのを聞くと、女は苦々しげに番兵を睨みつけ、泣く泣く帰る準備を始めた。
「このままではお兄様との約束が……」
爪を噛みながらぶつぶつ何か言っている。
美人なのに残念な感じの女だ。
それどころではないし、ほぉっておけばいいのだが、何か気になる。
「こんな事ならば私も爆発現場での調査に加われば良かった。お兄様を殺そうとした奴は絶対に許さない……」
俺はその言葉を聞いてハッとした。
「あいつ今なんて言った!?」
爆発現場?お兄様を殺そうとした奴?
おいおいおいおい!つまりこれって、あの女がジェイドの妹って事だろ!
俺は顔がほころぶのを抑えきれなかった。
やったぜ!俺はなんてツイているんだ!
いや、これも俺たちにスキルを授けて下さった万能神、アトム様の思し召しに違いない!
落ち着け、チャンスの時ほど冷静にだ。
あの女を捕まえて人質にすれば……ヒャッハー!汚名返上どころかご褒美までもらえるぜ!!
俺は瞬きひとつせずに、女の動向を見守った。
「絶対に逃さない」
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