第102話 みんな結構怒ってるってマジですか?①
【アリスの場合】
アリスはタクトを狙った子供の一人が爆裂魔法を使っていたと聞いて一つ思い当たることがあったため、すぐにその場所に足を運んでいた。
「ふぅー。またここに来ることになるとはね」
憂いを帯びた美しい表情で、アリスはその看板をじっと見つめる。
『奴隷館黒薔薇』
「気乗りしないけどやるしかないわね」
そう言ってアリスはバンと勢いよく奴隷館の扉を開けた。
すぐさま店主と思われる小狡そうな小男が話しかけてくる。
「いらっしゃいませお客様、本日は……ってアリス!!ひっ!お前たち!取り押さえろ」
小男がそう言うと、店内にいたガラの悪そうな大男3人がアリス目掛けて勢いよく飛びかかるが、一人目の顔面を傘で強かに打ち付けたかと思うと、二人目三人目も銃を使うことなく軽々と捻り上げて見せた。
アリスは倒れて積み重なっている三人の大男にどしんと腰掛け店主に話しかける。
「いきなりご挨拶じゃないの、ビーゴ」
ビーゴと呼ばれた小男は顔を引き攣らせながら、無理やり笑顔を作っている。
「い、いやーちょっとした冗談じゃないか、アリス。昔のことは忘れて今日はゆっくりお茶でも……」
と話したかと思うと、ビーゴは近くにあった散弾銃に飛びつき、すぐさまアリスに銃口を向けた。
「ガハハ!形勢逆転だぜアリス!散々俺の事を邪魔しやがって!この距離なら外さないぜ!長年の恨みだ!殺してやるぜ」
銃を構えるビーゴを、心底呆れたと言う顔で、アリスは見つめた」
「長年の恨みですって?あんたが7歳の私を騙して奴隷にして売ろうとした。だから私はあんたの店をぶっ壊して全部の奴隷を逃してやっただけ」
「けっ!奴隷商人ってのは人を騙すのが仕事なんだ、騙されるお前がアホなんだよ!どの道お前はこの場で死ぬんだ!この散弾銃の弾は普通の弾じゃねぇ!Bクラスの魔物も1発で殺しちまう特別な魔弾なんだよ!」
「ふーん」
アリスはそんなビーゴの言葉に怯むこともなく、一歩一歩逆に近づいていく。
「お、おい、よせ!近寄るな!本当に撃つぞ!」
アリスはニヤリと悪魔のように笑い、銃口を自分の胸の前までぐいっと引っ張り持ってきた。
「ここが私の心臓。ほら撃ってみなさい」
「な、舐めやがって!!」
ビーゴが引き金を引くと物凄い反動でビーゴはそのままひっくり返る。
もちろんアリスの胸には魔弾が命中した。
しかし、銃弾はアリスのゴスロリ服、月季に傷一つ残すことなく、床に転がる。
「新しい月季(ゲッキ)の性能は上々ね」
「ひっ、ひぃぃぃぃぃ!!」
逃げようとするビーゴの首をスカートから取り出した黒い鞭で縛り上げるアリス。
「まだ逃げるのは早いわビーゴ、今日はあなたに聞きたいことがあってきたの」
ビーゴは口をパクパクして苦しそうに唸っている。
「確か何年か前に性懲りも無くまた奴隷を集めていた時のリストに、爆裂魔法のスキル持ちを売った販売記録があったわね。あの記録まだ残っているでしょ。すぐに出しなさい」
ビーゴを青い顔でアリスを見つめ、相変わらず口をパクパクさせている。
「酷いわビーゴ。私とは話したくないっていうの?この私がこうやって頭を下げているのに」
そう言って苦しむビーゴをアリスは心底楽しそうに見つめる。
「もう一度聞くわ。ビーゴ奴隷の販売リストはどこ?」
ビーゴは蚊の鳴くような声で、命からがら叫んでみせる。
「く、く、首……い、いき……し、しし、ぬ……」
アリスはパッとムチを絞める手を緩める。
「あら、私としたことが、首を絞めていたのを忘れていたわ。危うく殺すところだった、うふ❤︎」
ビーゴは咳き込み、ゼーゼー息をしている。
「もう一度聞くわ。ビーゴ、販売記録はどこ?」
ビーゴはくるりとアリスに向きなおり、精一杯の笑顔を作った。
「はい、すぐに持って参ります!だからどうか命だけは……」
【ノエルの場合】
「ふーん……それでタクトさんは殺されそうになって、安全なところにと言うことでうちに来たんだー……」
「そうなんだけど、ノエルなんかちょっと雰囲気違くない?」
俺が暗殺されかけた経緯を話した途端、ノエルは目が据わるし、久しぶりに体から瘴気が漏れ出しているし、何だかやばい雰囲気だ。
「べっつにー、普段通りだけど?」
そう言いながらノエルは服を着替え出した。
「あれ、ノエル、なんか準備してるけど、どっか出かけるの?」
「うん、ちょっと野暮用ができてさ、タクトさんはゆっくりしててよ。すぐに終わっちゃう用事だから」
野暮用?俺は嫌な予感がしてノエルに尋ねる。
「……野暮用って、具体的には何なのかな?」
「何って……そりゃもちろん、私の命より大切な旦那様を狙ったやつを、ぶっ殺しに行くだけ♡」
そう言ってノエルは無邪気に笑って見せた。
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