第91話 ノエルを救う方法があるってマジですか?

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リナ ルビードラゴン レベル1992


ユニークスキル『時空移動』 スキルレベルなし

           ・任意の対象を過去、または未来に移動させる

           ・使用回数制限、過去1回、未来1回。回数制限を超えてスキルを使用した場合スキルは発動しない

           ・その時代に行きたいという強い意志がなければスキルは発動しない


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つまり俺はノエルを殺した瞬間、ノエルを殺す前に戻りたいと強く念じた。

そのせいで俺は謁見の日までタイムリープしたのだ。


凄いスキルだが回数制限がある。

過去1回、未来1回。

俺は過去への『時空移動』をすでに使ってしまったので、もう同じ手は使えない。


過去に戻ったんだ、もちろんノエルはまだ生きている!


それは良いのだが、根本が解決していない。

ノエルは俺と会えば絶対に魔眼を使って俺を操るはず。

そうなればまた、俺はノエルをこの手にかけることになる。


何故ノエルはそうまでして死にたいのか?


「ノエルまえにモリであったことあるぞ」


考え込んでいる俺にリナがそう声をかけた。


「えっ?リナってノエルと面識あったの?」


「うん、しにたいいうからコロしてやったけどすぐイキカエッタ」


魔王の称号のせいだな。

でも禁書庫の情報だと、魔王が死んだら生き返るのは数年後。

ノエルはすぐに生き返る?

ノエルの強さや魔力量が関係しているのかな?


「マオウのショウゴウのせいでカラダからショウキでる。しにたいいってた」


「瘴気、そうか!」


ノエルは魔王の称号のせいで体から瘴気が出る様になったんだ。

体から出る瘴気を止めるために死のうとしている!


「ショウキあとすこしでセカイおおう。ヨワイいきものみんなしぬ。ショクブツもヘンイする。セカイはマカイみたいになる」


それはまずい。ノエルが生きていれば世界は魔界に。

でもノエルが死ぬのは嫌だ!


「あーもう!どうすればいいんだ」


「ノエル、ロンギヌスでコロすしかない」


リナの意見は正論だ。

何も言い返せない。

そう、それしか方法はないのだ。世界を救うには。


きっとノエルは俺なんかよりも何か方法がないかずっと考えたはずだ。

それなのに俺に殺されることを選んだということはそういうことなのだ。


「あ、でも、もう1つホウホウあるかも」


「え、嘘!?本当に!?」


リナは自慢げに俺に向かい言う。


「リナのスキルでタクトをノエルがマオウになるマエにトばす!」


そうか!!

『時空移動』の対象は任意。自分以外の者も過去に飛ばせる。

リナは未来に来るのに『時空移動』を使ったから、まだ過去には移動できる!


「なるほど、それでノエルがパズスを倒して魔王の称号を継承する前に、俺がパズスを倒してしまえばいい!リナ凄いぞ!天才だ!」


「えへへ。もっとほめて」


リナはニコニコ笑う。

いくらでも褒めてやるよ。俺はリナを撫で回す。


「でも、1こモンダイある」


「問題?」


「タクトそのときコドモ、ヨワイ」


確かに!


その頃はまだ成長途中で今みたいな力もない。

当然ロンギヌスの槍のスキルはレベル1だ。

さらに魔眼もない。

そんな状態で俺は魔王に勝てるのだろうか?


でも……ノエルが幸せになれる可能性があるなら、俺はそれに賭けてみたい。


「頼むリナ。俺を過去に飛ばしてくれ」


そういうとリナは黙って頷く。


「いいよー。じゃあ、つよくねんじる。もどりたいジダイを」


言われた通り、俺はノエルを助けたいと強く念じる。そのために過去へ!

ノエルがパズスを倒す前へ!


リナの体に不思議な力が集まって、青く煌めいた。


「ジュンビできたー。タクト、おわかれ」


そう言ったリナは涙を流していた。


「リナ……」


「タクト、カコにもどったら。みんなとのオモイデぜんぶなかったことになる。ちょっとさびしくてないちゃった」


そうか。過去に戻ったら今まで俺がやってきたこと全部がなくなってしまうのか。

誰も俺を覚えてはいない。それは悲しい。


暗い顔をしている俺にリナが笑いかける。


「リナはタクトだいすき!ウランししょーもローラも、アリサもゴチンコも、ユキも、みーんなみーんなだいすき!」


「ああ、俺も皆んなが大好きだ」


「だから、リナ、タクトにおねがいある」


「うん、なんでも言ってくれ!」


「カコもどったら、またリナにあいにきて。ドウクツで、ランチいこうってまたさそって」


そうだ。リナの言う通りだ。

皆んなが俺を忘れてしまっても関係ない!

またもう一度出会えばいい!


「分かった。約束する!」


「リナだけじゃない。ほかのみんなもだぞ!ローラやゴチンコ、すごくこまってる!タスケテあげて」


「ああ!絶対に助ける!」


俺がそう言うと、リナはもう一度ニッコリ笑う。


「タクト、こっちへ」


リナに近づくと、リナは俺を優しく抱きしめる。


「いってらっしゃい、タクト」


「行ってきます……リナ」


リナのスキルで、俺は過去へと戻っていった。

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