第85話 ゴールズの逆襲②

ゴールズ視点


「残念だったな、アリス。無詠唱の魔法を使える俺様は、世界でも指折りの大魔法使いだ。SSSSSランクの俺様の魔術を……」


ズキューン


「ぐふぁ!おい話の途中に撃つな!クソ、アリス、俺が恐いの……」


ズキューン


「ガハッ!おい、ホントに……」


ズキューン


「痛い!ちょ、ちょ!」


ズキューン


「痛いって!待てよ!!」


ズキューン


「ゲヘッ!いい加減にしろ!」


「だって隙だらけなんですもの。それにしゃべる姿が本当に気持ち悪くて」


このクソアマが!!


「いいから、俺の魔法をおとなしく喰らえよ!」


アリスは完全に俺を舐めている。


「はぁ。そんなに言うなら一発撃って見れば?」


「ふふふ、後悔することのなるぞ。喰らえ!火球!!」


さっきと同じ特大の火球を作り、超高速でアリス目掛けて飛ばす。

これが当たればアリスと言えどひとたまりもないはずだ!

しかし忌々しいことにアリスはそれを軽々と避けやがった。


「な、何!?あ、アレを避けるとは、やるな、アリス」


アリスは俺を馬鹿にするように大きなため息をつきやがる!


「避けるも何も、無駄な動作が多すぎる。目線も体の向きも駄目。魔法の来る位置が丸分かり。あんな魔法何千発打たれても避けられるわよ。馬鹿にしないでくれる?」


クソ!クソ!クソ!


こうなったら強力な範囲魔法でここら辺一帯を吹き飛ばしてやる!

そう思い魔力を練り上げていると、


ズキューン


「グッ!またか!おい!やめろ!魔法が撃てないだろ!!」


「当たり前でしょ。そのつもりで撃ったんだもの。いくら無詠唱で魔法を使えるとは言っても頭で使う魔法をイメージして魔力を練り上げる過程までは省略できない。魔力を練っている途中に攻撃を受ければ気が削がれて魔法は中断される。私に無詠唱の魔法は効かないわよ」


クソ、どうしたらいい?

そうだ!

敵わないふりして油断させるんだ!


「分かった俺の負けだ。賢者の石を渡すからこっちにきてくれ」


アリスは相変わらず銃を構えてはいるが、しかめっ面でこちらに歩いて来た。


ぐふふ、馬鹿め!

この間に幻術魔法の魔力を俺は練り上げた。

この強力な幻術を使えばアリスは俺の奴隷になる!

喜べ!記念すべき1人めの俺の性奴隷だ!!


(幻術発動!)


はいちょろすぎ!

これで奴隷作れるとか、初めから幻術使っておけば良かった。


アリスはゆっくり俺に近づき、俺の目の前で足を止めた。


「アリス、ひざまづいて俺の靴を舐めろ」


そう言うとアリスは俺の顔をまっすぐに見た。


「はっ?」


俺はブチギレたアリスに思いっきり傘でぶっ飛ばされる。

俺の体は数十メートルも飛ばされた。


「ひゃぶ!痛い!痛いぞ!な、なんでだ!?アリス、お前は幻術にかかって俺の奴隷のはずだ!」


「やっぱり幻術ね。あいにく私幻術って今まで効いた事がないのよ。知ってた?アレってレベルや心の弱い人がかかるものなのよ?」


「クソ!クソ!クソォォォォ!」


ズキューン


アリスは俺の懐のあたりを銃撃しやがった。

そこにしまっていた賢者の石が落ちてしまう。


「お、俺の賢者の石!」


俺は慌てて地面を転がる石を追いかける。


「無様ね。さぁ、そろそろそれを渡してもらおうかしら」


「クソ!こうなったら!」


これだけはやりたくなかったが仕方ない。

俺は地面に落ちている賢者の石を拾うのではなく、そのまま食ってやった!


「嘘でしょ?本当に豚だったのかしら」


「グ、グハハハハハハ!俺を馬鹿にしていられるのも今のうちだ!力が!力がみなぎってくるぞ!」


「と言うより魔物化が始まっているわよ。あなたそのままじゃ賢者の石に取り込まれて自我を失い、ただの獣になるわね」


「ふ、そんなはずは……」


俺は自分の体を見る。

すると、手足に毛が生えている。肌の色も緑。

な、なんだこれは!


「うわぁぁぁぁぁ!俺の美しい体が、なんだこれ!」


「心配しなくても数分で何も考えられないただの魔物になるわ。苦しむこともない」


「た、頼む!助けてくれ!!」


俺は藁にもすがる思いでアリスに懇願する。


「ふーん、助けてあげない事もないけど、条件次第ね」


「条件?なんでもいい!なんでもするから助けてくれ!」


「あなたの腹の中にある賢者の石、頂くわ。それと今後ゴチンコのギルドには一切関わらない。これ契約書、これにサインしなさい」


アリスはペンと紙を地面に投げる。

俺は慌てて駆け寄り、すぐにサインする。


「ほら、どうだ!書いたぞ!早く!早く助けてくれ」


「しょうがないわね、じゃあじっとしてなさい」


そう言うとアリスは金色の口紅を取り出した。


「口紅?こんな時に!」


「普段は口紅。でもこれはとっておきの銃弾」


アリスは口紅を傘に入れ、カシャリと装填した。


「お、おいまさか……」


「そのまさか♡はい、ドーン♪」


アリスはそう言って弾を発射した。

駄目だ!避けられない……腹のど真ん中に弾は命中し、激痛が走る。


「がっ!か、かは!」


血だ!俺の口から血が出た!死ぬ!死ぬーー!!


腹を見ると大きな穴が空いている。

ふざけるな!クソ!

コロンコロンと、ぽっかり空いた穴から賢者の石がこぼれ落ちる。


「いてぇ!いてぇよ!腹が!俺の腹が!アリス!許さんぞ!助けるんじゃなかったのか!」


アリスはヒラヒラと手を振り余裕の表情だ。


「心配しなくても魔物化は止まっているわよ」


そう言いながらアリスは俺の腹にポーションを振りかける。すると腹の傷がみるみる塞がっていく。

それでも痛いものはいてぇ!

体の中が焼けるように熱い。


「熱い!いてぇ!熱い!いてぇ!」


「ああ、本当にブーブーうるさい豚」


「アリス!ゆるさねぇ!この借りは絶対に返すから……な」




「……痛みで気絶。まぁ命に別状は無さそうね。それより、賢者の石。うふふ。こんな魔力濃度の濃い物を食べるなんて馬鹿なのかしら。こう言うものは、武器の素材にするに決まってるでしょうに。うふふふふふ♡」

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