第84話 ゴールズの逆襲

ゴールズ視点


俺のお目当ては鷹の爪本部とは別の場所にある鷹の爪の隠し施設、宝物庫!

アーティファクトを使いたいなんて、親父に言っても絶対に許してもらえない。

構うものか!俺は選ばれた人間なんだ!アレを使って、ゴチンコのギルドの奴らを皆殺しにしてやる!


宝物庫の存在を知っているのは鷹の爪の職員でも限られた者だけだ。

今回は秘書を連れて行くわけにもいかない。

俺は1人で宝物庫に向かった。


ちきしょう!面倒臭い。

せっかく時間をかけて宝物庫まで来たのに、やはり警備がいる。


こういう時は変にコソコソしない方がいいんだ。

スッと入ってしまえば意外と問題にはならんだろう。

話しかけられても勢いで押し切ってやる。


俺は警備員を無視して宝物庫の扉に向かった。


「ゴールズ様どうされました」


「うるさい!警備兵如きが!俺を止めるんじゃねぇ!」


「そう言われましても。ここは鷹の爪の代表であるグレゴール様の許可がなければ、いくらゴールズ様といえお通しできません」


親父も面倒臭い事を命令してやがる。


「宝物庫のアーティファクトが今すぐに必要なんだよ!鷹の爪49支部の存続に関わる問題だ!それが遅れて、お前に責任が取れるのか!!」


「申し訳ありません。ではすぐにグレゴール様に確認を取りますので」


「いいんだよ!親父の許可は取ってあるから、確認なんかしなくて」


「え?しかしそんな話は全く……」


「ええい!うるさい、どけ!」


俺は持っていた風魔法を封じ込めた魔石を警備に投げつけた。


「うわっ」


警備兵は怯んで隙が生まれた。その隙に!

宝物庫には結界セキュリティがある。

この結界に入れるのは親父や幹部の一部だけ。

入ってしまえば警備は入れないので手出しできない。


「ゴールズ様!出てきてください!ゴールズ様!」


「けっ!待っていやがれ、お前なんぞアーティファクトを持ってきたら殺してやるわ!」


俺は中に入って一直線にその部屋を目指す。

怪しく紫色に光り輝く石が飾られているその部屋。

そう、俺が欲しかったのはこれ、賢者の石だ!


「ふはははは、やったぞ!これで皆殺しだ!」


賢者の石を持つと、ドロリとドス黒い魔力が俺の体にこれでもかと流れ込んでくるのを感じた。


「噂以上だ!この力さえあれば、俺を馬鹿にしたウランもタクトとかいうやつもゴチンコのギルドも、全員楽勝だ!」


俺は賢者の石を懐にしまい、悠々と外に出た。

すると、


「ゴールズ様!何を持ち出したのか知りませんが、持ち出したものを置いてください」


宝物庫は数十名の警備隊にいつの間にか囲まれていた。


「まだグレゴール様には連絡していませんので今なら間に合います!宝物庫から持ってきた物をお返しください!」


「ふはははは!俺は今機嫌がいいからな。今どけば殺しはしない。今すぐ道をあけろ!警備ども」


「動かないで下さい。動いたら取り押さえます」


せっかくの俺の温情を無駄にしやがって!くそが!

まぁいい。賢者の石の力を試したいと思っていた。初めて殺すのはこいつでいいか。


「ふ、ではお前らで試させてもらうか、賢者の石の力をな!」


右手を掲げて火炎をイメージする。


「ふははははは!凄い!凄いぞ!魔法など初級魔法すら使えなかった俺がこんな力を使えるなんてな!」


俺の手から無詠唱で直径3メートルの火の玉が現れた。

それはまるで小型の隕石だ。


「死ねーー!!」


放たれた火球は生意気な警備兵に直撃して吹き飛ぶ。


「ふべらっ!」


「ふははは、死んだかな!宝物庫の警備だからAクラス以上、運が良ければ生きているかもな」


「う、嘘だろ!灼熱火球……あれ炎の最上位魔法だろ!」


「そ、それを無詠唱で……」


狼狽えてる狼狽えてる。ふははは!


「勘違いするな、今のは灼熱火球ではない、火球(ファイヤーボール)だ」


「あ、あれが、ただの火球(ファイヤーボール)?」


警備兵達が1歩下がる。


「ひ、怯むな!全員でかかれ!!」


今叫んだのが警備隊長かな?無駄なことをするやつだ。

いくらAクラスやSクラスが束になったところで、俺には敵わないのに。

何故なら今の俺の実力はSSSSSクラスだ!!!!!


「暴風(ストーム)」


俺がそう言うと、突風が俺の周囲360度をから吹きすさぶ。

警備隊長の掛け声で飛びかかってきた兵士たちは全員吹き飛んだ。


「ふははははは、愉快愉快」


「ば、化け物……」


「お前ら俺様に楯突いたな、死刑だ死刑。全員死刑。さあて次はどの魔法を使ってやるかな」


「ひぃーっ!」


警備隊は逃げようとするが1匹も逃すものか、殺す、殺す、コロス!!!

俺は手を振り上げ次の魔法を唱えようとした瞬間、


ズダダダダダダダダダッ


俺の体に何十発もの銃弾が命中した。


「な、なんだこれ、いてぇーよ!いてぇーよ!!」


「手加減はしたとはいえ、これで軽傷ということは賢者の石は身体強化もしてくれるみたいね」


「アリス!?何故ここに?」


警備隊長がアリスの姿を見て目を白黒させている。


「勘違いしないで。私は見ず知らずのあなた達を助ける程優しくはないわ。でもタクト様でしたらこうするだろうと思ってね。さぁ早く逃げなさい。最初の火球にやられた男はタクト様のご令妹が作ってくださったポーションで回復させておいたから、その子もちゃんと連れて行くのよ」


「わ、分かった!恩に着る」


「おいアリス!テメェなに勝手に俺のおもちゃを逃してんだ!!」


「はー。どうして私が戦うのってこういう気持ちの悪い男ばかりなのかしら。この前は害虫だったけれど、今回は豚だなんて」


「豚!?お前豚って言ったか?高貴なこの俺様の事を、豚だと!?」


「うるさい。さっさとやりましょう」


「アリス!お前は殺すだけじゃ許さねぇ!賢者の石の力で一生俺様のペットにして、屈辱を味合わせてやる!」

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