第57話 ショートストーリー「エマはもう二度とジェイドに会えない」
エマ視点
朝目が覚める。
ジェイドが隣にいる。
静かな寝息を立てて、気持ちよさそうに寝ている。
何だか無性にジェイドを抱きしめたくなってぎゅっとくっついてみる。あったかい。
何だかとっても幸せな感じ。
くっついた時に気がついた。
あれ、また腫れてる。
ふふふ。昨日の夜いっぱいしたからもうぷにちゃんに教えてもらわなくても大丈夫。
ぷにちゃんに上手って褒められたやつで……。
……。
……。
……。
……ほらこの通り♪
ジェイドの腫れは良くなった。
まだ気持ちよさそうに寝ているジェイド。
私そろそろ帰らなきゃいけない。ゴロタと会う約束がある。
起こしちゃ悪いので、私はそっと服を来て外に出る。
「バイバイジェイド。またね」
私は家でシャワーを浴びた後ゴロタの所に向かった。
今日はゴロタのお見舞い。
ゴロタの好きな真っ赤なりんごを持って。
どうゆう訳か、ジェイドの所に行った時から私の心は弾んでいて、森に向かう私の足は、ずっとスキップしていた。
街の人がスキップする私を不思議そうに見ていたが、そんな事は全然気にしない。
私は小さい頃からずっと魔物と一緒に生きてきた。
人間なんて私には全く興味のないものだった。
そんな事より、早くゴロタの所に行かなくちゃね。
ゴロタ視点
※以下ゴロタとエマの会話は独自の言語で行われていますが日本語で書いています。
エマが見舞いに来てくれた。
怪我はジェイドの魔法のおかげで既に治っていたし、見舞いなんて必要なかったのだが……まぁエマの顔を見れるのは嬉しいしそれもいいか。
エマは鼻歌を歌いながら食事を作ってくれた。
「随分楽しそうだな、エマ」
「ふふーん♪分かる?ゴロタ」
「それだけ楽しそうにしていたらな」
「だって私に人間の友達ができたのなんて初めてのことなんだよ」
ジェイドの事か。
「それが嬉しいのは分かる。でも何だかそれ以上に浮かれている感じがする」
「やっぱりゴロタには分かっちゃうかー。実は私、昨日の夜友達のジェイドの命を救ってきたんだよ」
そう言ってニヤニヤと笑うエマ。
「命を救った?」
ちょっと信じられないな。エマは戦闘の腕や魔法の習得など、冒険者としては凄いが、基本ポンコツだ。
「本当なんだってば!」
「世間知らずでおっちょこちょいのエマの事だ。何か勘違いしているだけだろ」
俺がそういうと頬を膨らますエマ。
「そんなに疑うなら教えてあげるよ、昨日会ったこと」
エマは自身満々に話をし出した。
昨日あったエマ曰く(イワク)何だかふわふわした気持ちになる、とっても気持ちがいいジェイドの治療について、俺は細部に渡り説明された。
「……おいエマ、それって……」
「ね、凄いでしょ!しかもねゴロタ、私口で治療するのがすっごく上手いみたい!ぷにちゃんにも凄く褒められたよ!」
「はぁ……世間知らずだとは思っていたけど、これ程とは……」
「世間知らずって、確かに私は人間の生活には疎いとこがあるけど、ちゃんと今まで生活できてるんだから!」
「これは取り返しの使いない事になる前にそっち関係の知識だけでも教えておかなければな。いや、もう手遅れか?」
「教えておく?なになに?私勉強は得意だよ。魔法を覚えるのは大好き」
「……いいか、エマ、今から人間の男と女についてよーく教えてやる。心して聞くんだ」
20分後
「あ、あ、あ、あ、あ」
顔を真っ赤にして涙目になっているエマ。
「わ、私ジェイドが寝ている間にそんな……それで自分も気持ちよくなって、またしたいとまで思っちゃって、それって」
「まぁ客観的にみたら完全に痴女だ」
「ああああああ!!!も、もうジェイドに一生会わない!」
「いいのかそれで?お茶会は?」
「うー、お茶会はしたい。でも顔から火が出るくらい恥ずかしいし、ジェイドの顔見れないよ」
「そもそも、お前は本当にいいのか?ジェイドに一生会えなくて」
「……あ、あれ?なんで?なんかそれすっごく嫌!でも会えない!あれ!あれ!?どうしよ?どうしよ?」
俺はエマの事は娘のように思っている。エマには幸せになってほしい。
「寝ていたからもしかしてジェイドはお前がしたことに気がついてないかもしれないぞ」
「そ、そうかな。で、でも……」
「でも、なんだ?」
「やっぱり私みたいな不細工な女が勝手にジェイドのあれをその、ナニしたって言うのは……」
「不細工?お前が?」
俺はエマの前髪を上げる。
少し幼い顔つきだが、かなりの美人と言って差し支えない。むしろエマより可愛らしい人間の女性はかなり珍しいと俺は思う。
体の方も俺のような戦士ではないので無駄な贅肉は多いが、こういう体が人間は意外と好きなのだろう。
問題はエマ自身の問題だ。
「ヒ、ヒェェェェ。何するんですかゴロタ」
「……エマ、ジェイドが好きか?」
「す、す、す、す、好きとか私よく分からないですし!それに私なんてブスがジェイドみたいな素敵な男性に目をかけられるはずもないし、好きになるなんてそもそもおこがましいというか……」
「よし、分かった!」
「え、何が?」
「エマ、俺がお前を立派な女性に変えて見せる!」
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