第51話 準決勝でぷにちゃんが大活躍ってマジですか?
「試合開始!おーっと、どうしたことか!?エマ選手、様子がおかしいぞ」
俺はぷにちゃんを舞台に出したが、対戦相手のエマは魔物を召喚しようとしない。
手入れのされていないボサボサ頭、伸び切った前髪の間から、ぷにちゃんの事をギロリと凝視しているようだ。
「そ、そ、その、子」
見た目はお化けみたいなエマだが、声は意外に可愛い。でもすごく吃(ドモ)っている。
「その子ってぷにちゃんの事か」
「ぷ、ぷにちゃんって、言うの?か、可愛い」
なにぃ!俺のぷにちゃんを可愛いだと!?この野郎……なかなか話が分かるじゃねぇか!
「わ、分かる?そう、ぷにちゃんめっちゃ可愛いんだよ!しかもお掃除もしてくれるしさ!ちょーいい子!!」
「し、しかもその子、普通のブルースライムじゃない……青が綺麗。とっても美人さんでもある」
そこ気づいちゃうかー!この人分かってるわー。
「そう!こんな綺麗な色のブルースライムどこ探してもいないよ!」
「わ、私もスライムのお友達、いるから……。その子たちと、今度お茶会とか……」
「いい!それいいよ!」
これがもしかしてママ友ってやつか?
「だ、だからね、ぷにちゃんに傷ついてほしく無いから、こ、この試合、き、棄権してほしい……」
「……エマさん。あなたがおふざけでそんな事を言ってるんじゃないってのは分かる。でも俺も退けない理由がある」
「わ、私、手加減しないよ!」
「望む所だ!な、ぷにちゃん!」
「ぷー!!」
エマさん。相変わらず顔は見えないが何だか悲しそうにしている気がする。
「せ、せっかくお友達になれるかと、お、思ったのに……。……召喚。出てきてゴロタ」
エマがそう言うと闘技場に巨大な魔法陣が現れる。
「電電さん!凄い大きさの魔法陣ですよ!エマ選手が魔物を召喚しました!さてどんな魔物が出てくるのでしょう!ああっと!これは!」
召喚陣から姿を出したのは、ゴブリンキング。
「Sクラスの魔物を召喚。さすが召喚士ですね。しかも通常の個体ではありませんね。種族としてはゴブリンキングですが、単純な強さで言えば分類はSSクラスかもしれません」
解説の人が言うように、目の前に現れたゴブリンキングは通常の個体ではない。
この前森で雷を当てたやつの2倍は体が大きい。
しかもこのゴブリンキング、鎧を纏っている。
「その鎧もしかして」
「そ、そう。ゴロタのために特別に作った特注品。絶縁の鎧。雷魔法を完全に無効化する」
ゴブリンキングの唯一の弱点、雷。それを対策されると魔法でのダメージは殆ど効かないだろう。
「いくぞ、ぷにちゃん、練習の通りだ」
「ぷー!」
そう言うとぷにちゃんは俺の肩に乗る。
「や、やっぱり、ぷにちゃんが直接戦うわけじゃないよね。スライムを使役しての戦闘は、連携して攻撃力や防御力を高めたり、状態異常を付与したりするタイプの闘い方。でもそれじゃゴロタには勝てない。行くよ」
そういうとゴブリンキングは俺めがけ拳を振り下ろしてきた。
腕を十字にしてそれを受けるが物凄い衝撃を受け吹き飛ばされる。しかしあえて吹き飛ばされる事によって威力は逃してある。無事に着地。
「よーし、いい子だぷにちゃん。ちゃんと肩にしがみついてられたな」
「ぷー!」
「次はこっちからだ!」
俺はゴブリンキングの頭めがけて飛び蹴りを入れるが、ゴロタは素早く小手で受ける。でかい体に似合わず俊敏な動きだ。
「いいぞ、ぷにちゃん、また振り落とされなかったな」
「ぷっぷぷー!」
「ゴロタ、休ませないで、連続攻撃!」
物凄い速さで打撃を繰り出してくるが、今度は喰らわない。
全ていなして逆にカウンターを入れてやる。
ゴロタは顔に俺のパンチを喰らって体をのけぞらせた。
頬に少し傷ができた程度。ゴロタはニヤリと笑って俺を見た。
ぷにちゃんはやはり微動だにせず肩に乗っている。本当にいい子だ。
「電電さん。凄い攻防です!凄い攻防で非常に見応えのあるいい試合なのですが、一つ引っかかってしまいまして……あのー、よろしいでしょうか?」
「大丈夫です、メガロマンさん。会場の皆全員同じ気持ちです」
「やっぱりですか……ではすいません。全観客を代表して私の口から言わせていただきます……。いや!スライム肩に乗っとるだけやないか!お前だけで戦うんかい!!」
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