第50話 準決勝は魔物対決ってマジですか?

「タクト、お前はビーストテイマーか召喚士だったりするのか?」


ゴチンコのおっさんが俺にそう聞いた。それもそのはず、魔物を手名付けるというのはとても難しい。


おっさんの言ったビーストテイマーや召喚士のスキルがないと魔物と意志疎通するのはまず無理だ。ちなみにどっちもレアスキル。


だからスライムを連れている俺を見てそう勘違いしたのもうなづける。


勘違い?ん、つまり?


「俺ってビーストテイマーに見えますかね!」


「だって肩にちっちゃい魔物乗せてるしな」


「そうですよね!普通スライム肩に乗せないですよね」


「ああ、乗せねぇな。しかもなんかちょっと魔物っぽいリナもお前に懐いているし」


「そうだそうだ!なんか俺そう言うとこあるかも!」


「その言い方だとビーストテイマーじゃあないってことか?」


「いえ、ビーストテイマーです!」


「はっ?」


「俺、今日からビーストテイマー(仮)です!」


良かった。スライムとゴチンコのおっさんのおかげでジェイドのユニークスキル(仮)が決まった。


そうなれば早速行動開始だ!


色々邪推される前に、俺は自分のスキル(仮)を大々的に広める事にした。


ちょろっと、「次のジェイドの試合ではジェイドは魔物を使って戦う。ジェイドのユニークスキルはビーストテイマーだ!」という噂を流すと、自分でも驚く程に話は広がっていった。


さぁ、スキルが確定したのはいい。問題はそれで試合に勝たなくてはいけない。


一番大事なのは魔物との絆と鍛錬だ!!


「よし、スライム。お前はぷにぷにしているから、今日からお前の名前はぷにちゃんだ!」


「ぷー!」


おお!なんか喜んでいるぞ。


「これから俺はお前を鍛える!お前は俺の魔物として代りに大会で戦わなくちゃならないんだ」


「ぷー!!!」


闘志に溢れるぷにちゃん。いいぞいいぞ!


「俺は厳しい!地獄のような特訓を今からお前に課す!今は最弱のスライムだが、お前は試合までには最強のスライムになっている事だろう!」


こうして、俺とぷにちゃんの厳しい特訓が始まったのであった……。


特訓の間に分かったぷにちゃんの特徴。魔石を食べる、というか魔石の魔力を吸い出す。

魔石の魔力を全て吸い出すと、ころんとただの石が最後に体から出てくる。


部屋のゴミもなんか吸い込み浄化する。掃除もするとてもいい子。


動く姿も可愛らしい。


地獄の特訓は終わり、あっという間に準決勝の日は来てしまった。



「さぁ、準決勝ですね電電(デンデン)さん」


「はい、実はですね、ずっと謎に包まれていたジェイドさんのユニークスキルが明らかになったようです」


「本当ですか!?ズバリそれは?」


「はい、ビーストテイマーです」


「ビーストテイマー?つまり今回の対決は……」


「そうなんです。ジェイドさんの今回の対戦相手はSSランク冒険者、召喚士のエマさんですね」


「召喚士とビーストテイマーの対決!強力な魔物対決が見られるかもしれませんね!」


「はい。ただし召喚士の方がビーストテイマーよりも格上とはされています。召喚士は違う場所にいる魔物を任意のタイミングで呼び出し使役します。対するビーストテイマーは自分で魔物をテイムしてきて育成しなければなりませんから、どうしても召喚士の方が強い魔物や大量の魔物を使役できますし、戦闘の幅も広がりますね」


「では電電(デンデン)さんは今回はエマさんに分があると」


「いえ、ジェイドさんは今までの試合でビーストテイマーの能力を一切使わずに来ました。個人の戦闘能力も相当高いようですし、テイムしている魔物との連携が決まれば、勝つ可能性は十分あると思います」


「面白くなってまいりました。さ、試合が始まりました。エマ選手vsジェイド選手、激戦必至です」

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