第34話 この国は一夫多妻制ってマジですか?

ゴチンコのギルドに訪れた突然の激務は、ウラン部長と49支部の皆のおかげでなんとか捌くことができた。


ゴチンコのおっさんは良ければ臨時じゃなく全員正職員として雇いたいと言っていた。


たぶん皆んな喜ぶ。


俺が偽名を使っていた事については、ゴチンコのおっさんは理由を話したら分かってくれたが、ローラさんはちょっとムスっとしていた。


後でもう一度ちゃんと謝ろう。


そして今俺は、仕事を終えたウラン部長に、これまでに何があったのか話を聞きたいと言った所、


「でしたら私たちの泊まっている宿に来て下さい」


と言われた。


というわけで俺はウラン部長とリナが宿泊している宿に来ている。


かなり良い宿だ。長期滞在もできるらしい。


キッチンなどの設備もついており、そのまましばらく住んでしまっても構わなそうだ。


俺もいつまでもゴチンコのギルドに留まるわけにいかないし宿を探さなけらば。


しばらく、一方的にウラン部長がこれまでの経緯を話した。


一通り話を聞くと、俺は自己嫌悪を感じてしまい、ふぅーと重い溜め息をついた。


俺がいなくなってから色々あったんだな。


「ちょっと整理しますね。まず最初に、ウラン部長は幹部のゴールズを殴ってしまって鷹の爪を解雇された、と」


「違います。今は部長じゃないのでウランちゃんです」


めっちゃ、こだわるな。


「それでウラン……ちゃんは49支部のみんなに謝りに行こうとしたところ、おそらくゴールズが雇ったと思われる暗殺者に狙われた、と」


表情は1ミリも変わっていないが、ウランちゃんと言われてムフーと心なしか満足そうなウランちゃん。


「はい、そうです」


「そしてあまりにも暗殺者がしつこいので、ウランちゃんはユニークスキルを使って姿を変えた、と」


「それも違います。正しくはユニークスキルを解除しました」


「解除?」


「はい、私は10歳の鑑定前に自分のユニークスキルに気がついて使えていました。変化です」


「変化?」


「はい、自分の体の一部や全体を変化させるユニークスキルです」


「へーそんなのがあるんですね」


「私は両親が女ではなく男の子を欲しがっていたと知っていました。だから変化のスキルを使って、男の子に変身したのです。そしてその日から先日までずっと男として生きて来ました」


「ちょ、ちょっと待って下さい!ってことはウラン部長、いえ、ウランちゃんは幼い頃からずっと変化のスキルを使いっぱなしだったってことですか!?」


「はい。先日変化のスキルを解除して、私はこんな容姿をしていたのだと、自分自身初めて知りました」


「な、なんというか、すごい……ですね」


「鷹の爪で働く時も男の方が都合が良かったので、全然気になりませんでした。性別なんて瑣末(サマツ)なことですしね」


「そ、そうですか?」


「タクトさん。私はたとえあなたが女だったとしてもあなたを好きになったと思いますよ」


この人は好きだってはっきり言うんだから、もう照れちゃうよ。


「そ、それでその後は全員がゴチンコのギルドに行くことになったから、行く前最後に一目49支部を見ようと行ってみた、と」


「はい」


「行って見ると49支部の前にリナがいてタクトはどこだと言っていた、と」


「リナだぞー」


そう言ってリナが後ろからガバッとくっついて胸を押し付けてくる。難しい言葉が分からないから自分の名前とかには過敏に反応する。


「タクトー、ローラとおなじにおいするー」


ギクっ!


「あーリナ、ちょっと今大事な話してるから静かにね」


「わかったー」


「コホン。そこで、ウランちゃんはリナに俺と合わせると約束をして大人しくさせた。そしてもう一回ゴールズを殴った後、リナの背中に49支部の皆を乗せてここまでやってきた」


「そうです」


「そして来る途中に、ウランちゃんはリナに人間の言葉と人間に変化するコツを教えた、と」


「そうだー。ウランはリナのセンセイだぞー」


俺はもう一度深いため息をついた。


「ウランちゃん、すいませんでした。俺のせいでみんなの人生がめちゃくちゃになっちゃって」


ウランちゃんは無表情のまま首を傾げる。


「私たちは皆んなタクトさんに感謝こそすれ、謝られるような事は何一つありませんよ?」


そう言ってくれるとありがたい。


「じゃあもう遅いので、そろそろ俺帰ります」


「タクトー、かえるなー、ここいろー」


「そうです。もう遅いんで今日は泊まっていって下さい。明日は御前試合本選です。ここのベッドはふかふかですよ。ゆっくり休めます」


「え、でも……」


「タクトー、ローラとこづくりしたかー?」


「り、リナ!しー!しー!」


「いいなーローラ、わたしもタクトとこづくりしたい」


「そ、そんな何人もとそんな事……」


「つよいオスはたくさんおよめさんいるぞー!タクトつよい、こづくりいっぱい、あたりまえ」


そ、そうなのか?ドラゴンではそれが常識なのか?


「そうですよタクトさん。別にこの国は一夫多妻制なんですし、誰と関係を持とうがいいじゃありませんか」


「一夫多妻って、それは一部の貴族の話じゃ……」


「貴族に限った話じゃありません。AクラスSクラスの冒険者も金銭に余裕がありますし、奥さんが何人もいるなんてのも珍しくないじゃないですか」


「で、でも俺今Eランクで……」


「タクトさんなら御前試合優勝は決まっています。御前試合で優勝すれば一気にSランク昇格。そして賞金も大量に出ます」


「で、でも……そ、そう!ドラゴンとそういうののやり方違うかもしれないし!」


「あー、たしかにリナこのからだはじめて。タクトとえっちっちできない」


「そ、そうそう、だからそれはまたこん……」


上手く断ろうとした俺の言葉を遮るように、ウランちゃんはわざとらしく「あー!そうですね!」と大きな声で言った。


「確かにそうです!大変です!リナさんに正しい性知識を教えないと」


そう言ってウランちゃんはモゾモゾと服を脱ぎ出した。


「え、え、え?何を」


「リナさん、私が人間のえっちの仕方を今からやってみせますので、そこで見ておいて下さいね」


そう言って裸になったウランちゃんは俺に抱きつき、優しくキスをした。


こんな美人からのキス、抗える人いるんですか?


「う、ウラン部長、え、なんでキスがそんなにうま……?女になったのつい先日じゃ……」


「めっ!部長じゃないでしょ。タクトさんを満足させるために、知識はいっぱい頭に詰め混んできました。それに、男の体の事は誰よりも知っています。今まで男の体で生きてきたので」


お、男の体の事を隅々まで知り尽くす絶世の美女!そして処女!


そんな人この世に他にいる?


「せんせー、よろしくたのむぞー」


「リナさん。良く見ていて下さい。ここをこうすると……」


「ちょ!ま!そんなとこ!おっ、おっおっ!アッー!」


俺はロンギヌスの槍でノエルとローラさんのスキルに続き、さらにウランちゃん、リナのスキルを手に入れたのであった。

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