第33話 8時(朝)だよ!全員集合ってマジですか?

「今日もやっばいぞ!この人数!」


ゴチンコのおっさんがギルドの外に並んでいる人数をそっと覗き見て戻ってくる。


嬉しいやら悲しいやら。


事務作業で今日も寝れないのは確実そうだ。


「今日も俺手伝いますから。頑張りましょう」


「いえ!タクヤンさんは今日は休んでください!」


「そうだぞ!明日は本戦なんだ!」


そうは言っても……。


毎日数百人の冒険者をこの人数で捌くなんて無理が……と思っていた時だった。


ゴチンコのギルドの入り口ドアが勢いよく開き、開店前のギルドに誰かが駆け込んできた。


「タクトーーー!」


そう言って入ってきた若い女の子。


羽?角?尻尾?


え?人間じゃない!?


俺は女の子に飛びつかれ、そのまま押し倒された。


女の子はぺろぺろと俺の顔を舐める。


「えへへへ、た、く、とー♪」


「駄目ですよ、リナさん、はしたない」


リナ!?リナってまさか……


「はーい。ごめんなさい」


いつの間にかもう一人入っていた女性の言葉に、亜人の女の子は素直に従う。


「リナって、もしかして、南の洞窟であった?」


「そうだぞー。リナは、リナだぞ。タクトー、あいたかったぞー」


あのルビーのようなメスドラゴンが今俺の上に乗ってる女の子!?


なしてこーなった!?


リナと一緒に入ってきた女性はツカツカとロビーに入ってくる。


女性は女神の様に美しく、とてつもなくお胸が大きい。


誰だ?この絶世の美女?ゴチンコのおっさんの知り合い?


「遅くなってすみません、連絡をいただいたのに。返信を送る前に直接来てしまいました」


あれ、なんか俺に話しかけてる感じなんだけど?


こんなとんでもない美女の知り合い俺にはいなかったぞ?


「えっと、あのー」


「他の皆さんももうすぐ来ると思います。みんなリナさんの背中に乗って来たので。ただリナさんは流石にドラゴンの姿のままでは王都に入れませんので、すぐ近くで地上に降りて、一旦別行動にしました」


「えっと、みんなって……」


「だってタクトさんからの誘いなんですもの、断れるはずがありません。皆タクトさんからの風の精霊の伝言を受け取ってすぐに、王都に行くことを決めたみたいですよ」


「お、いたいた。おーい、タクト。久しぶり、ってまだ数日か」


「えっドンさん?なんで?」


「なんでってお前が呼んだんだろ?ギルドで働く人手が欲しいって」


続々とロビーに見知った顔が入ってくる。


「お、外はアレだけど、中はすごく綺麗!いいじゃん!」


「外人数すごいよ!久しぶりにやりがいがあるね!」


「あ、このお髭がダンディーなおじさんがこのギルドの偉い人?よろしくね」


続々と49支部のメンバーが集まる。


「た、タクトさん!良かった本当に無事だった!!!」


「ユキちゃん!?えっ?待って?これ49支部のメンバー全員じゃないですか?そっちはどうしたんですか?」


「やめた」


「私も〜」


「なんか仕事内容が変わって、ゴールズの秘書になれとか言われたんで、辞表を本部に送りつけてそのまま職場に行かずに来ちゃいました」


俺がびっくりしていると、もっとびっくりした顔をしたゴチンコのおっさんが話しかけてきた。


「ちょちょちょちょちょっと待てタクヤン!これはどう言うことだ?それとお前タクトって」


「えーっと、話すと長くなりますんで簡単に話します。俺が前言ってたギルドの仕事を手伝ってくれる即戦力です。みんな『鷹の爪』で働いていた優秀なギルド職員です。そして俺の本当の名前はタクトと言います。これに関してはごめんなさい」


ゴチンコのおっさんとローラさんは唖然としている。


そんな2人の事はお構いなしに、絶世の美女はこの場を仕切って行く。


「では皆さん、開店前に外の行列を整備しましょう。1番新規登録、2番他のギルドからの移籍、3番依頼の発注、4番依頼達成の確認、5番その他。この5つで別々に列を作って下さい。今日は受付を5つ作りましょう。ギルド長、それでよろしいですね」


美女にギルド長と呼ばれたゴチンコのおっさんは満更でもないようだ。


「お、おう。そうだな」


「とのギルド長のお言葉です。一つ注意して下さい。新規登録の内、依頼達成料での支払いを希望する方は、新規登録の列ではなく依頼の発注の列に並ばせるようにお願いします」


「OK」


「すぐやっちゃおー」


ユキちゃんや皆はギルドの外に出て行き、さっそく列の並び直しを始めた。


この女性、仕事めっちゃできるじゃん!


より一層謎は深まる。


いったい、あなたは誰ですか?


「あのー大変失礼な質問なのですが、私、あなたとどこかでお会いしたことがあったでしょうか」


そう言うと美女ははっと口に手を当て、恥ずかしそうに頬を染めた。


「すみませんタクトさん。そういえばこの姿で会うのは初めてでしたね」


「この姿?」


「ウランです」


ウラン?なんかよく聞いた名前だな。


「ウラン、ウラン、ウラン…………ってウラン部長!!??」


「いえ、もう部長ではありませんので、皆さんお気軽に、『ウランちゃん』とお呼び下さい」

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