第30話 ゴスロリ服と機関銃ってマジですか?

次の日、ローラさんとまったーり過ごしたいなと思っていた所に、突然の知らせが入った。


知らせを聞いたゴチンコのおっさんは、仕方ないので、ギルドは今日も休みにしようと言った。


俺たち3人は知らせの手紙に書いてあった場所に大人しく向かった。


そして……


「どうしてこんな事になっちゃったのか……」


俺はルーキー大会予選が行われた会場よりも遥かに大きな会場のど真ん中に立ち、周りから声援を受けていた。


そして目の前にはゴスロリ風の衣装に身を包み、大きな赤い傘を持った女性。


「それはあんた自身のせいでしょ。調子乗って予選で全員片付けちゃうんだもん。決勝トーナメントの場所も押さえてあって、チケットだって売れちゃってんだから、なんかやるしかないでしょ」


「だからってこんな……いっぱい人いるし……」


とんでもない人数の観客。予選の1000人なんて比じゃないぞ。


本戦と同じくらいの人数がいるんじゃないか?


「そりゃそうよ、このアリスちゃんが戦うんだから。当日券バカ売れで立見までいるのよ」


思い出したよ。アリス。


服装で思い出した。


『鷹の爪』でイベントやった時この人の警備したよ。


なんか『鷹の爪』のアイドル的存在で広告塔だから傷ひとつつけるなって言われた。


絶対彼女自身が戦うことのないように、危ないからって指示があったな。


きっと広告塔だからビジュアル重視で戦闘はイマイチなのだろう。


確かにアリスのイベントは大人気で、カルト的なファンが何人も押しかけたから大変だった記憶がある。


この人と戦うのか……。


「ま、この試合の結果がどうであれ、ルーキー大会の優勝はあなたで決まりだから」


「じゃあこの試合の意味って」


「デモンストレーション。それと私があなたがどのくらい強いのか知りたいから」


いや、元職場の広告塔の女性と戦うのなんか複雑なんですが?


「じゃあ仲良く安全に戦いましょう。アリスさん」


「そうね。あんまり早く終わってもしょうがないし、2割くらいの力でいこうかしらね。せっかくのデモンストレーションだから魅せる試合をね♪」


俺たちが話終えると、レフェリーが紹介を始める。


「赤コーナー!彼女が通った後は、血の海地獄、焼け野原、薔薇姫〜〜〜ア〜リ〜ス〜〜!!」


「青コーナー!彗星の如く現れた脅威の新人!彼が今日もたらすのは興奮かはたまた混沌か!?混沌を主る漆黒の翼†ジェイ〜〜ド〜〜!!!!」


「それでは!エキシビジョンマッチを開始します。両者中央に!…………始め!」


アリスは開幕早々、ゆらりと持っていた傘を俺の方にむけた。


ニヤリと笑ったかと思うと、傘の先から銃弾が飛び出す。


「鉛はお好き?」


俺はすっと避けて見せる。


「まぁこのくらいはそうでしょうね?じゃあ雨(フルコース)ならどうかしら?喰らいな!」


傘の先からものすごい速さで銃弾が何発も飛び出してくる。


「機関銃かよ!」


俺は走って避けるが、銃弾は的確に俺を追いかけてくる。


「追尾弾?」


「そう、魔力を込めた特注品♪」


めんどくさい。


近寄って銃を取り上げる!


そう思ってアリスの方に向かって行くと。


アリスは妖艶に笑って見せる。


「機銃変態♡」


傘を開くアリス。


傘をくるくる優雅に回すと、傘の先からやはり無数の銃弾が飛び出す。


隙がない。攻守に優れたいい装備だ。


「なるほど、雨の日以外も使えそう」


「ありがとう、お気に入りよ」


いつの間にか銃弾に囲まれていたため、俺は飛び退く。


すると、


「空中では身動き、取れないよね!!!」


アリスは傘を閉じて柄の部分をグッと引っ張った。


すると物凄い量の魔力が傘の先端に集まっていくのが分かる。


「バイバーイ⭐︎」


アリスがそう言うと、傘から一気に魔力が放出される。


「ドォォォォーーーーン!!!!!」


轟音と共に会場は煙だらけになったのだった。



アリス視点


恥ずかし。SランクがEランク相手にちょーっとムキになちゃった♪


2割って言ったけど結構熱くなって、8割くらい出しちゃったかも、てへ⭐︎


「まぁでも死んではないでしょ。結構やるやつみたいだったから」


私がそう言うと、突然背後から声がした。


「まだエキシビジョンは続けた方がいいんですか」


「ヒッ!」


いつの間にか後ろに!?


というか今の避けたの?それとも受けたのに無傷?えっ?えっ?


「まだ短いですか?できれば早めに終わらせたいんですけど」


「この野郎!!!死ね死ね死ね死ね!!!」


もう追尾弾はないし、とりあえず乱射だ!当たれば!一発でも当たれば!


「ああ、やばい。こんな無茶苦茶撃っちゃ観客に当たっちゃうよ」


ジェイドは観客席の方に魔法でシールドを張ったようだ。


私と戦ってるってのに!そんな涼しい顔しやがって!


「なんで?なんで!?なんで当たらないの!!」


ジェイドはたぶん流れ弾が他の所にいかないように、あえて私に真っ直ぐ近寄ってきた。


「クソクソクソ!!」


ありったけの魔力を込めて、連射する。


「1秒70発!相手は死ぬ!!!」


ジェイドは懐からナイフを取り出し、目にも止まらぬ速さでそれを動かした。


キンキンキンキンキンキンキンキンキンキン。


「なっ!ば、化け物……あっ……」


た、弾切れ?そして目の前にはジェイドがいる。


あ、駄目、これ私死んじゃう。


生まれて初めて死を感じた。


目に涙がいっぱい溢れてきた。


戦って、近くに来られて、初めて分かった。


物凄いオーラ。


あった事あるどんなSクラスよりもSSSクラスよりも巨大な力。


それが今私の前で拳を振り上げている。


グッと……目を閉じた。


すると……


「えい」


「いたっ!」


ぽこんとおでこに何かが当たった。


「え?で、デコピン?」


「はい、俺の勝ちね」


そう言ったジェイド。顔は隠していて見えないけど、目元がにっこり笑っている。


私はドサリとその場に崩れ落ちた。


会場がシーンと鎮まり帰ったかと思うと一気に歓声が湧き上がる。


「ジェイド!ジェイド!ジェイド!ジェイド!」


「キャー!!!ジェイド様〜!!!!」


彼に注目がいったおかげで私のはしたない姿は見られてなかっただろう。


良かった。


もう下着はぐちょぐちょに濡れている。


目はハートになっていたはず。


私は会場から去っていくそのお姿をずっと見つめていた。


「ジェイドしゃま♡しゅき……♡」

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