第28話 綺麗な薔薇には棘があるってマジですか?
混沌を主る漆黒の翼†ジェイドとして大会に出る事になったため、ジェイドくん(本名はジェイムズらしい)が着るはずだった衣装を身につけた。
顔には黒い布を巻いて、目以外が見えない状態にした。
これで顔バレ対策はバッチリ。
衣装はジェイムズ君の趣味で、全身黒。
所々に羽があしらってある。
アクセントは銀の装飾品。高そうだなと思ったが、本物の銀では無いらしい。
赤いスカーフがわざとボロボロ風になっており、ルーキーのくせになんかベテラン冒険者風だ。
非常に手の込んだ衣装だなと思ったら、ジェイムズくんが服がないと大会に出ないと駄々をこねたのでローラさんが作ってあげたらしい。
ローラさん凄すぎ。
しかし……この歳でこの衣装はすごく恥ずかしい。
そしてこの衣装で予選敗退もめちゃくちゃ恥ずかしい。
予選会場には参加者が50人いるけど、みんな俺を見てヒソヒソしているし。
観客として1000人くらい人が見てるよ。
予選なのにこの集客、凄いな。
ホント恥ずかしい。
予選の審査内容は毎回違う。
予選当日に発表されるので、対策はできない。
ただ毎年簡単、安全。
だからそこまで心配はしていない。
「はい、では今年の予選内容を発表します!」
バニーガールの衣装を着た綺麗なお姉さんが登場し、会場の真ん中に立った。
予選の説明をしてくれるウサギなお姉さん。
テンション上がるな。
「みなさん!胸にギルドの名前が入ったバッチをつけていますね」
確かに、入場の時胸につけて下さいと言われたのでつけた。
『ゴチンコのギルド!』と書いてあるダッサイやつ。
「皆さんにはこのバッチを奪い合ってもらいます!制限時間は10分!武器あり、魔法あり、どんな攻撃でもあり、なんでもありのバトルロワイヤルです!最後にバッチを一番たくさん持っていた8名が予選突破の単純ルール♪」
そうお姉さんが言うと会場にどよめきが起こる。
去年は風船早割とかだったよね?タイムが早かった人が予選突破ってやつ。
「それ、危険じゃないですか?そんなの予選でやっていいんですか?」
お、いい質問だぞ、メガネの参加者くん。
「もちろん、大怪我の可能性、場合によっては死者が出るかもね〜♪」
会場全体がさらにどよめく。
なんかローラさんがゴチンコのおっさんと観客席で揉めてるのが見えるよ。
ローラさん今すぐ止めましょうとか言ってそうだ。
「冒険者が怪我したらどれだけ生活に支障が出るか分かってんのかよ!ふざけんな!」
「そうだそうだ!」
参加者の半分が文句を言い始めたぞ。
お姉さんはそれを見て笑顔を崩す事なく言った。
「うっせぇ、ビチグソども」
えっ?
聞き間違いか?
会場がシーンとなる。
「調子に乗んな!この女!」
そう言って参加者の1人がお姉さんに殴りかかった。
するとお姉さんはスルリとそれをかわし、男のおでこにデコピンした。
「うっ!」
デコピンされた男は失禁し気絶。
哀れ。
医療班と思われるスタッフが気絶した男を回収していく。
「ダメね、スピードもタフネスも全然ダメ。予選通過には程遠いでしょ」
バニーガールの達人並みの動きに、会場全体が唖然としている。
「あ、ごめんなさい。申し遅れました。私、今回の予選会の監督を任されているSランク冒険者のアリスっていいます。よろしくね♡」
「あ、アリスって……」
「あぁ、薔薇姫アリス……」
「なんでそんな冒険者がバニーガールの格好なんかして……」
「あぁ、これは趣味。可愛いでしょ。とにかく、今回の予選は私に一任されてるの。レフェリー、さっさと始めて。私も暇じゃないの」
そう言って、アリスは控室の方に歩いて行く。
もう誰も彼女に文句を言ったりしない。
「10分経ったらちゃんと戻ってくるから。あ、でも10分前にみんな倒れちゃったら呼びにきてね」
「わ、分かりました!」
審判の人めちゃカチコチじゃん。
恐いんだろうな、あの女の人。
「で、では御前試合ルーキー大会予選……スタート!!!」
アリス視点
あーあ。
今回の御前試合、物凄く強いオトコが出場する可能性あるって極秘情報をゲットしたから、大会の役員に立候補したのに。
まさかこのアリスちゃんに予選、しかもルーキー大会を任せるって、あり得ないでしょ。
めんどくさいからすぐ終わるバトルロワイヤルにしちゃった。
50人くらいいたけど、しょぼそうな奴ばっか。
私なら3分で全員のバッチ取れちゃうよ。
ホント、弱い男って嫌い。
「あ、アリスさん」
あ、レフェリー。
「なになに?まだ1分ちょいしか経ってないけど」
「そ、それが……」
え、なんかトラブル?
もしかして死人出ちゃった?
やっば、問題になっちゃうかな?
「何があったの。簡潔に話して」
「は、はい。予選終わりました。一人の怪我人も出ずに」
「え?嘘?どういうこと?」
「あ、はい。予選が終わったのはいいんですが、実は困ったことが起こりまして、その……」
あーイライラするわ。
こういうマゴマゴしてるの。
「早く言いなさい!」
「えー。一人の冒険者が1分かからずに全部のバッチを取ってしまいまして。ルーキー大会の予選通過者が1名のみになってしまいました」
「はぁ!?」
「えー『混沌を主る漆黒の翼†ジェイド』という冒険者です。ルーキー大会の出場者は1名のみなので、もうこの方がルーキー大会優勝って事でよろしいんですかね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます