第27話 登場人物ショートショート②
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ローラ視点
「ギルド対抗の御前試合にタクヤンさんに出てもらう!?」
「おう、さっき決まった。それで、あいつ今日ここに泊まっていくから、飯は3人分な。あ、あとお酒いっぱい。今日タクヤンと飲むから」
「ダメですよ!いきなり御前試合なんて!タクヤンさんは今日冒険者になったばかりなんですよ!危ないです」
「大丈夫だよ。ちゃんと本人から了承は取った。お酒あいつどんくらい飲めるかな?」
「嘘です!そんなタクヤンさんにメリットのないこと……」
「それなら大丈夫だ。お前の尻を揉ませることにした。お、そういや米酒あったな!キツいやつ」
「お、お尻?わ、私の!?」
「快諾してくれたよ」
顔に火がついたように熱くなってしまう。
「お父さん!勝手に何してるの!!」
「お前嫌いじゃないだろ。ああ言うタイプ」
私はさらに顔を真っ赤にしてしまう。
「もう!」
もうお父さんには何を言ってもダメだと思い、料理の支度のためその場を離れた。
だ、大丈夫よね。
タクヤンさん紳士な感じだし。
それに、私になんか興味ないよね。
きっとお父さんに泣きつかれたから、タクヤンさん優しいから了承しただけよ!
……でも……もし触りたいって言ってきたら……。
「いいよ」って言っちゃうかも……。
あぁ!!馬鹿!私の馬鹿!!
……もしかして、私、タクヤンさんに一目惚れ!?
確かに、タクヤンさんの事を考えると、お腹の辺りが……
↓
ルイズ視点
お腹の辺りが熱い!
あの魔族の事を考えるとお腹がジュンと熱くなる。
何でよ!!
「ルイズ様、お風呂の準備ができました」
お風呂。
ずっと旅をしていてまともにお風呂に入れなかった。
すごく嬉しいのだが……。
「きょ、今日は1人で入るから!侍女(ジジョ)は誰も入らないで!」
「え!?で、ではお着替えのお世話だけ……」
「それも大丈夫!自分でやる!」
「さ、流石にそれは……」
「いいから!お願い!」
絶対にお風呂は1人じゃなきゃダメなぜなら……。
私は1人お風呂に入り、自分のお腹を憎々しく眺めた。
こんなタトゥー絶対に誰にも見られたくない!
「あの魔族!んっ!」
あいつの事を考えた途端下半身に電気が走ったみたいになる。
……さ、触りたい……。
だ、駄目よルイズ!そんな所!
私は王族だし。
光の聖女のスキルを持ってるのよ!
聖女がそんな所いじるなんて……。
今までそんな事した事ないし……。
はしたないし……。
「……ん!ん!んっ!んん!!…………っ…………!!!!……はぁ……はぁはぁ……」
私はお風呂の中で放心状態になりながら、今後の事を考えた。
……絶対に見つけてやる……。
……あの魔族を絶対に見つける!
そして見つけたら……
↓
ゴールズ視点
見つけたら絶対に殺してやる。
ウランの野郎。
ウランを殺すために殺し屋を雇ったのに、ウランの野郎自宅に帰っていないらしい。
どこかに隠れやがったな、臆病者め!
ウランをクビにしたその後、俺が49支部の部長代理として行くと、従業員全員がポカンという顔をしていた。
間抜けな奴らだ。
もちろん全員左遷した。
おっぱいエルフ以外。
本部から優秀な人材を何人も連れてきているから、全員総とっかえだ!
巨乳のエルフだけは話が違う。
あの女は回復を担当していると聞いたから、優秀なヒーラーを3人用意した。
エルフには回復役をやめさせて、俺の秘書にする……と思ったのに、なんであの女来てないんだ!
聞いてみたら休みを取ったと言っていた。
ウランのやろうも、巨乳エルフも、いったいどこに行ったんだ?
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ドラゴン娘リナ視点
いったいどこに行ったんだろう。タクト。
私の事綺麗って言って、ランチに行こうって誘っておいて、一度も会いに来ないなんて……。
タクトが行った後、また戻ってきた時のためにと思って、すぐに滝に行って水浴びをしてきたのに……。
まぁランチだけって言ってたけど、男って獣(ケダモノ)だから、そのまま……って事もあるし、体は綺麗にしておかないとね!
ずっと洞窟で待ってたのに来ないし!文句の一つでも言ってやらなきゃ!
タクト、どこにいるんだろう?
そういえば、『鷹の爪』って言ってた?
そこに行ってみようかしら?
働いているって言ってたから、そこにいるよね、きっと。
「ふふふふ♪」
またタクトに会える。
そう考えているだけで、顔のニヤケが止まらなかった。
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Sクラス冒険者ドラン視点
顔のニヤケが止まらないぜ!
ゴブリンキングの討伐で一気にSクラスに昇格した上に、討伐賞金としてCクラスじゃ一生働いても稼げないほどの大金を手にした。
さらにさらに!破格の条件であのギルド『鷹の爪』から引き抜きの誘いがあったのだ!
人生楽勝だぜ!
今は3人で高級宿を押さえ、酒盛りの真っ最中だ。
「あはははははは!最高!お酒もっと!」
リザは既に出来上がっている。
ダンは何故かシラフで頭を抱えている。
面白みのない奴。
「ドラン、だーいじょうぶなの?御前試合の件?」
酔っ払いながらリザが話しかけてきた。
そう、御前試合。
実は俺たちはSクラスになったのだが、それは3人パーティとしての事なのだ。
ゴブリンキングの討伐はパーティでやったことになっているので当然といえば当然。
個人の昇格はまだなのだ。
しかし個人昇格もめちゃくちゃいい条件を出してもらっている。
俺が代表として御前試合の本戦に出て1勝する事。
御前試合の1勝だけでSクラス昇格が決まるのだ!
「大丈夫だ。俺の御前試合の1回戦は誰と当たるか知ってるのか?あんなの出来レースだろ!」
「まぁそうか、ルーキー大会の優勝者とだもんね。流石に楽勝か」
そう、御前試合の本戦にはルーキー大会の優勝者の枠が一枠設けられている。
俺の対戦相手はそのルーキーの優勝者と既に決まっているのだ。
ルーキー大会の出場条件は冒険者を初めて1年以内の者。
さらにランクがE、Dまでの冒険者に限定される。
今までルーキー大会の優勝者で本戦1回戦を突破した者はいない。
それもそのはず。
ランクDとCとの間には、天と地程の実力差があるからだ。
本戦出場の冒険者は大抵Bランク以上の冒険者だ。
ランクの差の戦力差は大きい。
だからこそ、冒険者ランクの昇級は難しいのだ。
しかも俺はランクCとはいえ、間も無くランクBだろうと言われていた期待の男。
ランクBとランクD、Eの冒険者では、大人と子供のようなものだ。
負けるはずがない。
「しみったれた事言ってないで、今日は飲むぞ!」
俺がそういうと、リザは「おー!」と言ってワインを飲み干した。
「ほら、ダン、お前も飲めよ!」
「そ、そんなに飲んだら二日酔いになるぞ!明日のゴブリンキング討伐の勲章授与の時に……」
こいつは一々うるさい奴だ。
「……誰に物を言ってるんだ!俺を誰だと思っている!Sランク冒険者ドラン様だぞ!二日酔いになんかなるかよ!!!」
↓
混沌を主る漆黒の翼ジェイド視点
「二日酔いだ」
ゴチンコのおっさんに飲まされすぎた。
「た、タクヤンさん!こんな所に寝てたんですか!」
ローラさんが驚いて駆け寄ってくる。
あ、ほんとだ。
俺床に寝てる。
ゴチンコのおっさんも隣でいびきをかいている。
「お父さんも起きて!今日予選大会なんだよ!付き添い行くんでしょ!」
あぁ、そうだ。
御前試合ルーキー大会の予選。
駄目だ。頭がぼんやりする。
「タクヤンさん。お水。それとこれ」
ローラさんがお水と薬を用意してくれる。
「二日酔いに効きますから。苦いけど飲んでね」
「うん」
頭が、ガンガンする。
ローラさん優しい。
いい匂いする。
「ローラ、俺ちょっと駄目だ!トイレで吐いてくる!」
そう言ってゴチンコのおっさんは駆け出していった。
「もう!」
ローラさんは眉を吊り上げている。
「飲みすぎてごめんなさい……」
俺はローラさんに謝る。
「ギルドの大事な宣伝になる大会なのに。その前にこんなに飲んじゃって本当にすみません……」
そう言うと、ローラさんは俺を見て柔らかな笑顔を作る。
「本当に、そうですよ。大会前に深酒なんて。大会中は大怪我する人もいるんですから。みんな真剣なんですよ!」
怒ると言うより、心配するといった口調のローラさん。
本当に心配してくれてるんだな、きっと。
「……あの、俺頑張ります!予選突破して、このギルドの宣伝して、ギルドが賑わうように……」
そう言うとローラさんは俺のおでこにチョップした。
「いてっ」
「そんな事どうでもいいの!」
「えっ?」
ローラさんは俺の手を優しく取ってギュッと握りしめる。
「怪我しないで帰って来てくれれば、私はそれでいいんです」
「え、でもそれだけじゃ……」
「約束して、怪我しないで帰ってくるって」
「……はい」
俺がそう言うと、ローラさんがにっこり笑った。
「大会が終わったらまたご飯を食べに来て下さい。もっと美味しいもの、作っちゃうから」
大会中は魔眼の力は使えない。
無詠唱なんてしてしまえば注目を浴びてしまい、俺の正体がバレてしまうかもしれない。
つまり俺はユニークスキルなしで戦わなければならない。
魔眼の無い俺なんて、きっと毎日魔物と戦っている冒険者の中では相当貧弱な部類に入ってしまうのだろう。
でも……ローラさんのためにも、俺は大会に全力で挑もうと決めた。
大会に行く準備は、全てローラさんがしてくれた。
予選会会場前、
「ハンカチ持った?ちり紙は?」
「はい」
「トイレ行った?ご飯食べすぎると大会中気持ち悪くなるから、持ってるおにぎりは一個だけにしておいてね」
「はい」
「水筒の水。冷たいからお腹壊さないように。でも今日暑いから、水分補給はこまめに」
「はい」
「えーっと後それと……」
「……ローラさん。恥ずかしい。俺子供みたい」
他の冒険者がクスクスと笑い、俺たちを見ている。
ローラさんも気がついて顔を真っ赤にする。
「……ありがとう。ローラさん」
「うん。応援席で見てる。行ってらっしゃい」
そう言って小さく手を振るローラさん。
「……行ってきます」
俺の運命を変える御前試合が、ついに始まった。
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