第23話 ツンデレ枠がついに登場ってマジですか?
「遅いぞ、ローラ!お前がいないせいで受付をやる羽目になっちまったじゃねぇか!」
「受付って言ったってお客なんて……えっ!お客さん!お父さん!新聞読んでる場合じゃないでしょ!」
「いいんだよ、こいつは。ただの鶏肉が大好きな無職だから」
鶏肉が大好きな無職……酷いパワーワードだ。
「もう!お父さんったら!すいません、父はあんな感じで、だから今ギルドも……私はローラって言います!このギルドの受付です!冒険者さん、よろしくお願いします」
ローラさん。見た感じ20歳くらい?
飾らない明るい美人といった感じ。
ポニーテールがより一層快活そうなイメージを強めている。
看板娘という言葉がしっくりくるな。
しかし実際注目すべきは、その腰回りのエロス。
うーん。素晴らしいヒップライン。フワッとするスカートを履いているのは、お尻が大きいのを気にしているのかな?
うーん勿体無い。
なんてエロ親父みたいなこと考えている場合ではない。
俺の方もちゃんと自己紹介せねば!
「タク……」
「タク……?」
しまった!偽名まだ考えてなかった!
「た、タクヤンです。よろしく」
「タクヤンさん、って言うんですか。これからよろしくお願いします」
し、しくじったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
これからしばらく使う偽名しくじった!
タクヤって言おうとしてタクヤンって言っちまった!
何だよタクヤンって!まるで大根の漬物みたいじゃねぇか!
「こちらこそ。よろしくお願いします」
いつまでも偽名の選択ミスにウジウジしていられないので、切り替えるしかない。
そう思っていると、ローラさんがじっと俺の顔を見つめてくる。
え?何?まさか偽名使ってるのがバレた?
「もしかして……」
「いえ、違いますよ!俺は生まれてこれまでずっとタクアンですよ!」
「タクヤンさん、なんか顔色悪いですよ。それにちょっとやつれている感じ……そうだ!ちょっと待っていてください!」
おー!セーフ!
バレたわけじゃなかった。
というか俺完全にタクアンって言ってたぞ。気をつけないと。タクヤンタクヤン。俺はタクヤンタクヤン……。
ローラさんは奥から葉に包まれた包みを持ってきた。
「これどうぞ」
「ローラ!そいつには構うな!」
「もう!お父さんは黙ってて!タクヤンさん。これおにぎりです。私がお昼に食べようと思ってて、作っておいたんです。お腹がすいてたら、危ないですから、冒険者は」
ローラさんの言うとおり、包みには大きな銀シャリのおにぎりが三つ。
白米がキラキラと旨そうに光っている。
ゴクリ……。
「あ、ありがとうございます!」
女神や!この人は女神だ!
この人にはいつか恩返しをせねば。
「けっ!野良猫にでも何でもエサやっちまうんだから、お前は!」
「いいでしょ!あげたのは私の分。お父さんの分はちゃんとあるから文句言わないで!ごめんなさい、うるさくて。何か困ったことや分からない事があったら何でも聞いてくださいね。できれば、お父さんじゃなくて私がいる時に」
「今、ローラさんのお昼って……やっぱり受け取れませんよ」
「気にしないでください!それよりうちみたいな弱小ギルドに来ていただいて、タクヤンさんには本当に感謝です!」
「おい、ローラ!お前はまたうちを弱小だの何だのって!」
「いいでしょ!本当のことなんだから!」
「うるさい!うちだって昔は王都でも1、2を争うギルドだったんだぞ!鷹の爪さえあんな卑怯な手を使ってこなければ……」
「もう、お父さんったらいつも同じ話し出すんだから!タクヤンさんごめんなさい。でもお父さんもあれで、悪い人では無いんですよ」
「俺はどうせ、甲斐性なしの悪い親父ですよ」
「もう!本当にすみません。あ、掲示板見るところでしたよね。やりたい依頼が見つかったら、依頼書を持って受付に来てください」
賑やかな親子だ。
鷹の爪がどうのという話はちょっと気になったが、今は速やかに依頼を受けることにしよう。
俺は掲示板を見る。
ざっと20くらい依頼が貼ってある。
とりあえず飯は確保できたから、特にいらんのよな、大金は。
本当に簡単な依頼でいいや。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『求む、ポーションに必要な薬草10種!』
報酬銀貨1枚
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これでいいや。
野草鑑定士の資格持ってるし。
森に行けば一瞬で終わる。
「あ、野草の依頼ですね。これだったら王都の東にある森に行けば見つけやすいと思いますよ。薬草10種の納品でこちらの依頼は達成となります。今日一日はタクヤンさんの納品が優先となりますが、明日以降、他の人が同じ依頼を受けた場合、納品は早い者勝ちになりますのでご注意下さい」
どこも一緒の説明。
鷹の爪で働いていた時に何万回も聞いた定型文だ。
俺が「はい」と言って森に向かおうとすると、いきなりおっさんが俺を引き止めた。
「おい、待て、『鷹喰らい』」
「ちょっと!鷹喰らいって言わないでくださいよ」
ゴチンコのおっさんは構わず話し出す。
「悪いことは言わねぇ。しばらく東の森は近づくな。最近あそこに、ゴブリンが異常発生してるって話だ。大手ギルドのBクラス冒険者が数名で原因を調査してるらしい。調査が終わるまで、あの森はやめとけ」
「えっ!?お、おやっさん!もしかして俺を心配して……」
「けっ!そんなんじゃねぇよ!お前がいなくなったら、薬草の依頼料がふんだくれねぇから言っただけだ!……いいか、依頼の失敗なんて別に恥ずかしい事じゃない!大事なのは必ず生きて帰ってくることだ。それからなるべく1人で動くな。薬草の依頼でもなるべくパーティーで仕事しろ。薬草摘むのに夢中でいつの間にか後ろからなんて事も珍しくねぇ」
「おやっさん……」
「えーっと。それじゃあ、ちょっと遠いんですけど南の洞窟の付近にも薬草が取れやすい場所がありますよ!探すのはちょっと大変になるかもしれないですけど、そこもおすすめですので」
南の洞窟付近ね、OK。
「分かりました!じゃあ行ってきます」
「気をつけろよ、ルーキー」
相変わらず新聞を見ながらゴチンコのおっさんはそう言った。
なんだ、思ったよりもいいギルドじゃないか。
俺は清々しい気持ちでゴチンコのギルドを出て、すぐに南の洞窟に向かった。
タクトが出ていった後……
ローラ視点
「お父さん、そんな情報よく知ってたね」
「あぁ。たまたま冒険者たちの噂を耳にしてな」
「あ、お客さんだ」
常連のルードさん。
確かゴブリン討伐の依頼を受けてたからそれじゃないかな。
「ローラさん今日もお綺麗ですね。はいこれ、ゴブリン討伐の証明ね。換金よろしく」
「うわぁー3匹も!大量でしたね」
「実は最近ゴブリンが異常発生しててさ。でも囲まれるとやばいから、結構ハラハラするよ。しばらくゴブリン関係はやめとくかな」
「あー聞きました、東の森ですよね」
「違うよ」
「え?」
「ゴブリンの大量発生は南の洞窟。調査の結果、ゴブリン大量発生の原因は洞窟にゴブリンキングが住み着いたかららしい。今Sクラスのパーティーを呼んで討伐に行かせるみたい。だからしばらくはあの洞窟には近づけないよ」
私は悲鳴をあげそうになる。
「う、嘘!お、お父さん!!」
お父さんは慌てて椅子から立ち上がって走り出した。
「い、急ぐぞ!あいつを追いかけるぞ!」
「う、うん!ルードさんごめんなさい!ちょっとギルドの店番お願い!」
「えーー!!!なになに!どう言うことよ!」
私とお父さんは手分けしてタクヤンさんを探した。
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