第22話 俺の二つ名が『鷹喰らい』になるってマジですか?

無事姫様を部屋に寝かせて、俺は難なく王城を脱出した。


無謀な事の様に思えた王城侵入だが、拍子抜けする程だ。


これも魔眼のおかげかな。


大して苦労はしなかったが、何故か体に疲労感がある。


そう言えば色んなことがありすぎて、ゆっくりしている時間がずっとなかったな。


そしてそれにしても、腹が減った。


よく考えれば、ユキちゃんの作った特製マンドラゴラ入りドラゴンの肝料理を食べてから何も食べていないじゃないか!


すぐに王都を離れ、家に帰ろうと思ったのだが、こんな腹がペコちゃんな状態じゃ帰る途中に燃料切れしてしまう。


どっか王都の飯屋に寄って行こう!


いくら持ってたっけ……


……。


……。


……ない……。


……財布落とした……。


うわぁーどこだ?結構動き回ったからな。


となるとやばいぞ!どうやって飯食べる?


いや、落ち着け。俺は腹が減っているだけなんだ!


……よし!当初の予定とは若干違うが、王都で冒険者の登録をしよう!


そんでもって簡単なクエストをささっとこなして、とりあえず飯を食うんだ、俺は!!


冒険者になる手続きは非常に簡素だ。


しかしそれぞれのギルドによって色々と特性がある。


最初に割と高額な登録料を取られる所も少なくない。


鷹の爪がそうだ。


しかし今回俺は無一文だ。


だから登録料なしのギルドを狙う!


登録料無しのギルドは登録料の代わりに何か一つ依頼をこなす事が登録の条件になる場合が多い。


依頼を終えると、実質の登録料を差し引いた依頼金額が懐に入り、なおかつギルドへの登録も済むという訳だ。


ギルドにも登録できる。飯代も入る。今の俺には好都合である。


そしてもう一つの条件。


俺は今一応王城に侵入したばかりなのだ。


顔バレはしてないけれど、あまり目立ちたくは無い。


そして妹の就職のためにも、冒険者をしている経歴を隠すつもりな訳で、偽名を使うわけだから、その辺もゆるーい所。


となると……


「王都なのに寂れてボロボロで、本当にこのギルドやってんのか?って感じの怪しさ満点のギルド」


ってそんな都合のいいギルドあるはずがないか。


あー、なんだ?目の前の建物?


割と大きいけどめっちゃボロいな?


潰れた劇場とかかな?


あ、でも灯りついてる。まだやってんだ。


劇場の名前は『安い!早い!親切丁寧!ゴチンコのギルド』


「あったーーーー!!!!!」


俺はすぐに建物に入る。中は割と綺麗にしてある。


だが怪しい匂いはプンプンしている。


そもそも誰もいない。


受付にすら人がいない。


「すいませーん。登録したいんですが」


大きな声で奥に呼びかけると、髭面の中年男性が満面の笑みで顔を出した。


「はーい!ご登録ですね、ありがとうございます!見たところ30歳くらいですか?って事は他のギルドからの移籍?体格も悪くない。もしかしてCランク?いやBもしかしてAなんてことも!Sランクなんて言っちゃったら、私の娘差し上げますよ!いやーこれが中々の器量良しで、私に似なくて良かった!」


めっちゃ話すな、このおじさん。


「いや、普通に新規登録です」


「えっ?その年で新米冒険者?今まで何やってたの?」


「鷹の……」


そこまで言って気がついた。


俺の経歴を話すわけにはいかない。


「鷹の?」


「えーっと、鷹の調教師をしてました!」


「鷹の調教師が何でいきなり冒険者!?」


「えー、クビになりました」


「クビ!?鷹の調教師ってクビになったりするもんなの?」


「えーっと……鷹を、食べちゃいました……」


おっさんは、こいつヤベェやつだという顔で俺を見ている。


「じゃ、じゃあここに名前書いて。登録料は銅貨5枚な!」


「えっと、今持ち合わせなくて、依頼料払いでお願いします」


俺がそういうとおっさんはついに俺に背を向けて新聞を読み出した。


「そこの掲示板に依頼が貼ってあるから好きなの持ってけ」


それだけ言って、後は見向きもしなかった。


まぁ仕方ないよな。


俺が掲示板を見に行こうとしたその時だった。


「ただいまー」


明るい雰囲気の若い女性がギルドに入ってきた。


最近美人によく会うなと、俺は思った。

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