第13話 俺のユニークスキルが最強ってマジですか?
「よし、これで大丈夫だよ!」
ノエルは姫様に色んな薬を飲ませたり、色んな術式を施したりしていた。
目に見えて姫様の顔つきが元気になっているし、荒かった息遣いも今は落ち着いている。
しかし……
「ぜ、全裸で施術する必要はあったのかねー?」
「ははは。術式を直接お腹に書き込むからね。裸の方がいいよ。大丈夫。この部屋あったかいし、裸でも風邪はひかないよ」
「そういう事じゃなくて……」
「え?でも裸になるの好きなんでしょ、この娘。まさか嘘?やっぱりこの娘……」
「あ、はいそうです。この娘は露出大好きな変態です。たぶん起きたらめちゃくちゃ興奮して喜ぶと思います」
「あぁ、良かった。じゃあそろそろ、本題に入ろうか」
「本題?」
「うん。夫婦の営み、その1だよ。ついてきて」
そう言ってノエルは俺を案内する。
夫婦の営みっていうと一般的にはセ……いや、そんなハズはない。
相手はまだ子供だぞ!
ノエルの住むという家はとてつもなく大きなお屋敷だった。
実は金持ちの令嬢?まぁ貴族であることは間違いなさそうだ。
でもなんか喋り方とかは貴族っぽくないし、大商人の娘とかかもしれない。
「ご両親とか、いないの?ご挨拶したいんだけど」
「いないよ。ここは僕だけの屋敷」
「えっ?それどういう……」
「さ、着いたよ!」
ノエルは中庭に俺を案内した。
「広い中庭だな。ここで何するの?」
「決まってるじゃん!」
そう言うとノエルは無詠唱で俺に火球を飛ばしてきた。
俺は片手でそれをかき消す。
「あぶな!急に何するんだよ!」
「夫婦が一番燃える瞬間と言えば、命をかけた、コ、ロ、シ、ア、イ♡でしょ」
そう言ってノエルは俺に襲い掛かる。
「千の槍!貫けぇぇぇぇ!」
空から無数の槍が俺めがけて降ってくる!見たこともない魔法だ!
やば!シールド上に!
「顕現せよ!風の障壁!」
俺が詠唱する間にノエルは俺との距離をつめていた。
ノエルは飛び上がって俺に踵落としを決めてくるので、俺は腕で受ける。
腕が痺れる。
「くぅぅぅぅぅぅ!子供の遊びってレベルの蹴りじゃねぇぞ!というか俺は子供に手は出せないぞ。やるならひたすら避けて受けるだけになる」
というか今まで戦った中で一番強いかもしれない。
ノエルって何者?
「勘違いしてるみたいだけど、僕は26歳。魔族って体の成長が遅いんだよね」
「え、魔族?26歳?」
「そう、これで本気出す気になった?」
ノエルは異空間からおどろおどろしい真っ黒な大剣を取り出した。
「魔剣……」
そういうと恐ろしいスピードで切り掛かってきた。
石壁で受けるか?
「顕現せよ、石壁!」
ベヒモスの時と違って、今回は石壁6枚を魔法で出す。
こんだけあれば……
魔剣が石壁とぶつかった瞬間、俺に悪寒が走った。
「あぶね!!!」
間一髪避けた!
避けた場所にあった6枚の石壁はあっけなく真っ二つになり、その辺の地面は黒く腐食した。
「し、死ぬ……。受けただけで死ぬじゃん、こんなの……」
「気に入らない……」
「え?」
「気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない!」
そう叫ぶノエルの目がイッちゃってる!
「な、何が気に入らないのでしょう?」
「明らかに手を抜いている!お前、この僕をバカにしているのか?」
「い、いえ、ノエルさんめちゃくちゃ強いんで割と、本気で避けて受けてたんですが……」
「いや、本気を出してない。何故なら……」
「何故なら?」
「さっきからユニークスキルを一つも使っていない!」
「え?ユニークスキル?」
「タクトのユニークスキル、それを見たかったから私は……」
ユニークスキル。
そう、それは10歳の時に必ず国民が行わなければならない鑑定の儀。
そこで国民は自分のユニークスキルがなんなのかを知らされる。
ユニークスキルは強力なものが多く、戦闘においてめちゃくちゃ役立つ。
例えば剣士だったら剣を使いこなせる上に、成長すれば特殊な技も使える。
魔物が普通に街に出る事もあるこの世の中で、ユニークスキルは欠かせないものだ。
鑑定などの非戦闘系の便利スキルは、戦闘には役立たないかも知れないが、鑑定の儀に必要なレアスキルだし、絶対に食いっぱぐれない有能スキルだ。
その鑑定の儀で、俺は世界で初めてだという特殊スキルがあることが発覚していた。
しかし……
「ごめん、俺のユニークスキルは全く使い物にならないものなんだ……」
「はぁ?ふざけているのか?だってタクトのスキルは」
「そう、掃除がめっちゃ上手いってだけのゴミスキル。俺のスキルは清掃(セイソウ)だ」
「清掃(セイソウ)?……ああ。なるほど。そう言うことか。レベルの低い鑑定だと、ユニークスキルはカタカナの名前しか見れないからね。そういうことか」
「いや、鑑定してくれた神官はベテランで!鑑定のレベルも最大だって言ってた!だから間違いない!このスキルのせいで子供の頃からいじめられていたし!就職もめちゃくちゃ苦労した!スキルの差を埋めるために、資格も取ったし魔法も勉強した!他のみんなにとって固有スキルは大切なものかもしれないけど、俺には邪魔でしかない!」
ノエルは呆れたような顔で俺を見た。
「その神官、ベテランになるまで自分のスキルレベルを偽っているとは。神職より詐欺師がお似合いだな。はぁー。本当に気づいてなかったのか。なるほどな」
ノエルは魔剣をしまい俺に近づいた。
殺気が消えているのでもう襲い掛かっては来ないだろう。
「魔眼(マガン)」
ノエルがそう言うと、目元に魔力が沸々と集まっていった。
「これが僕のスキル。これのおかげで呪文は無詠唱で使えるし、魔眼自体魔力放出で攻撃することもできる。僕は最強のスキルだと思っている。さらに魔眼には便利な機能がいくつもある。こっちきて」
「うん」
ノエルのすぐ前に立つ俺。
「しゃがんで」
「はい」
俺がしゃがむと、ノエルは俺にコツンとおでこをくっつけてきた。
「な、何を!」
ノエルの綺麗な顔がすぐ目の前にある。
26歳と聞いたからかもしれないが、身体と違い、顔つきは確かに大人びている。しかし肌は子供のようにきめ細かく、そのアンバランスさが異様な魅力を放っている。
「じっとして、魔眼で僕の見たものを君と共有するから」
「見たもの?」
「魔眼にはその人のユニークスキルを見る力がある。君の本当のスキルは……」
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