Cake for Two

補聴器を付ければいい

そしたらそんなに大声じゃなくていい

お互いの努力で会話ができる

それで万事OK


でも、補聴器を付けられない理由があるのかも

あるいはどうしても付けたくない理由

それはなんだろう そしてどうすれば会話が可能に

どうすれば どうすれば


逐一いちいち考えるしかない

ケースバイケースで聞いてその都度対応

そういうしち面倒臭いクソ面倒臭いことをするのが、多様性

そりゃあ鬱陶しいわな

誰か“こうすればいいんだ”と命令を


それにしても俺はあくまで“迷惑をかける存在”で

あなたは“迷惑をかけられる存在”なのね

だから“配慮”だの“思いやり”だの

ただの一人の人間だなんて思っちゃくれない


俺は宇宙人じゃないし

宇宙人に変身したわけでもない

俺はあなたと話ができる

俺はあなたと意思疎通ができる

わかり合うとか難しいことを考えないで

そのことを忘れないで


“カミングアウトされたら受け入れなきゃいけないの”

それは要するに拒絶がしたいってことかね

まさか愛の告白をされたと思ってるんじゃあるまいね

ああまた一から始めなきゃならないのか


実は障害を抱えている

“パッと見、普通だけど”

そりゃあそうさ

“普通”にしてなきゃ差別するんでしょ


それにしても俺はあくまでも“迷惑をかける存在”で

あなたは“迷惑をかけられる存在”なのね

だから“配慮”だの“思いやり”だの

ただの一人の人間だなんて思っちゃくれない


俺は宇宙人じゃないし

宇宙人に変身したわけでもない

俺はあなたと話ができる

俺はあなたと意思疎通ができる

わかり合うとか難しいことを考えないで

そのことを忘れないで


二人でケーキを

別に和菓子でも中国菓子でも

同じテーブルを囲むなら

しっかり考えなきゃ


でも状況によっては

“みんなコーヒーで”の方がいいときもある

そう状況によっては


逐一いちいち考えるしかない

ケースバイケースで聞いてその都度対応

そういうしち面倒臭いクソ面倒臭いことをするのが、多様性

そりゃあ鬱陶しいわな


でももう“このまま”を続けるには

どうしても限界が来ているんだ

これまである人たちを“まあいいじゃん”とおざなりにしてきた

それは“残酷”だから


距離を置けたならそれがいちばんいいのだけれど

だからと言ってこの星から逃れられるわけじゃない

“距離を置く”とはどういう意味かを考えたい

僕たちは、すでに同じテーブルを囲んで“しまって”いる

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