第95話 バトルキングとご対面
バトルキング。ドンチャッカ国の王様に与えられる称号で、代々バトルとお祭り好きという共通点がある。
戦いを部下に任せるくらいなら自分が出て戦うくらいバトルが好きで、今日もやり合ってきたらしい。
なんか返り血とか浴びてるし、お腹に角みたいなのがぶっさ刺さってる。抜いてから会ってほしかった。
「よぉ、お前らがドグが言ってたガキどもか。生意気なツラしやがって」
「ミッションも報酬もない上に罵倒された。帰ります」
「すげぇな、お前。仮にも国王の前なんだがなぁ」
「王族の対応はどこかの王子で練習済みなので……」
ずんぐりむっくり、筋骨隆々、髭のお化け。そんな三点セットの風貌の王様が私をからかってくる。
それでも背丈は高くて、私を見下ろせるほどだ。こんなのに凄まれてるものだから怖くて泣きそう。
ミリータちゃんがこの城に来る前に言っていた通り、バトルキングは良くも悪くもハッキリと言うみたいだ。
そうやって相手を怒らせてバトルに持ち込もうとする癖があるとのこと。一番、王様をやらせちゃいけないタイプでは?
まぁでも、ひたすらふざけ通していた王子様よりはマシかもしれない。
「なかなか怖いもの知らずだな! 怖いもの知らずってぇのは二種類いる! 単なるバカか強者か! お前はどっちかな!」
「どっちでもいいんで要件があるなら言ってくれます?」
「ハッハッハッ! じゃあ強者ってことで一つ、試してやらぁ!」
「は?」
バトルキングが拳を突き出してきた。咄嗟にガードしたけど、そこそこヒリっとする。
いきなり何するの、この人? 頭おかしいの? バトルキングは拳を突き出したまま、ニィっと笑う。
「おぉ! つえぇな! 拳が悲鳴をあげてらぁ!」
「あの、本当に帰りますよ?」
「ここまでされて反撃する気もねぇか? 俺が国王だからって遠慮するタマじゃねぇだろ?」
「そんなことしても何も得しないじゃないですか」
なんで私がミッションも出ないのに戦わないといけないのか。誰だって報酬がないとやる気が出ないはずだ。
報酬がないのに戦うとか、いかれてる。私を何だと思ってるのか知らないけど、本来は平和を愛する普通の女の子なんだからね。
バトルキングは諦めたのか、角がついた趣味の悪い玉座に座り直した。
「よくわからねぇが今のお前と戦ってもつまらんな。本当にドグが言うほどの戦闘狂なのか?」
「さっきから話が進んでないんですけど、もう本当に帰りますよ? あとドグさんは後でしばきますね」
「俺の拳を受けきれる奴はそういねぇ。いいだろう、認めてやる。実はお前が実力者なら頼みたいことがあってな」
「報酬は?」
バトルキングがまたニヤリと笑った。もったいつけないで、はよ言え。
「前金で五百万くれてやる。後は成果による。どうだ?」
「前金でそれなら悪くないね。いいよ。でも成果に応じて報酬額が上がるなら、詳細を言ってくれないと困りますよ」
「お前らに頼みたいことってのは近頃、このドンチャッカ国に新種の魔物が現れてな。そいつらの討伐はもちろん、原因を突き止めてもらいてぇ。もちろん発掘したものはお前らのものだ」
「曖昧ですね。討伐はいいんですけど、ヒントとかないんですか?」
「俺が思うに原因は地下にある。この国の地下には未知の資源が眠ってるからな。同時にやべぇものが眠っていてもおかしくない。そいつが新種の発生源なら何とかしねぇとな。被害が出りゃ、戦いを望んでねぇ奴らがかわいそうだ」
バトルキングはバトル好きだけど、国民が危険に晒されるのは見過ごせないってことか。
ガハハとか笑いながら首をはね飛ばしてそうな見た目なだけに少し見直した。感心しているとフィムちゃんが口を開く。
「師匠、もしかしたらですけど……。師匠が討伐した闇の女王のような邪悪な存在が眠っているのかもしれません」
「闇の女王って?」
「邪悪なるものは邪悪を引き寄せる……。ファフニル国で魔王が敵視されていたのも、その法則が信じられていたからというのもあります」
「ということは……」
なんかそういうのを討伐した記憶があるような?
つまり地下に眠ってる邪悪な何かを討伐して、お金を貰えるわけか。そうなると私達も必然的に地下発掘作業をしなきゃいけない。
魔道車にキャタピラとドリルが装着されたから、さっそく活躍するわけか。悪くない。
「マテリ。この国の地下には相当な値打ちものが眠ってるって話だ。悪くねぇぞ」
「報酬を自分の手で発掘するなら悪くないね。なんかテンションが上がってきた」
「よし、オラもドワーフとしてがんばるぞ!」
「師匠! 全力全開で挑みましょう!」
ミリータちゃんはもちろん、フィムちゃんはいつだってモチベーションフルスロットルだ。
お金はできるだけ多く欲しい。手に入れたショップで購入するにはお金がたくさん必要だからね。
ミッションが出るとは限らない冒険者の仕事なんてやってられないし、お金もあまり貰えない。だけど今回の依頼はお宝とお金が同時に貰える。
「話は決まりだな。で、一つ気になったんだがお前らの装備はラダマイト鉱石でできてるんだってな」
「そうですね。あげませんよ?」
「ラダマイト鉱石は幻の鉱石、この国にも英雄が身に着けていた装備以外には一切ねぇ。どこで手に入れた?」
「魔法のツルハシですね。こんな風に叩くと出てくるんですよ。ほら」
「ぷぎゃっはぁぁーーーーーー!?」
バトルキングが仰天して玉座から落ちてひっくり返った。驚きすぎでしょ。
「マ、マジかぁ! こりゃ、こりゃ、あぁーーーー!」
「落ち着いてください。ほしければお金と引き換えに差し上げますよ。ちょっとやってみますね」
「おい! さすがにここで」
「ていっ!」
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ラダマイト鉱石を手に入れた!
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「はい」
「な、なんじゃそりゃあぁぁ! おい! 頼む! 買い取る! 買い取らせてくれぇぇーーー!」
バトルキングが興奮してラダマイト鉱石をせがんでくる。もう幻でも何でもないね。
ラダマイト鉱石は武器や防具だけじゃなく、発掘道具に加工して使えるとのこと。
もし量産できれば発掘作業が大幅に進むみたいだから、私は高値で売りつけることにした。
「だけどバトルキング、これを加工できるのはミリータちゃんだけなんですよね」
「な、なんだって! そいつにそんな才能があるのか!?」
「神の打ち手っていうスキル持ちですからね。どんな鉱石でも扱えるんですよ」
「じゃ、じゃあ加工するとなったら……」
バトルキングがミリータちゃんをちらりと見た。うん、たぶんわかってるよね?
「加工手数料をもらうだ」
「くっ! こ、こんな才能を腐らせていたとはドグの奴ァ!」
やだ、ミリータちゃんったらがめつい。誰に似たんだか。
ミリータちゃんを未熟者扱いして鍛冶をさせなかった人にバトルキングの怒りの矛先が向いてしまった。
あの人に恨みはないし報酬もゲットさせてくれたから、ちょっとだけ良心が痛む。あぁ、やっぱり私はきちんと人の心を持っているよ。
これでドンチャッカ国での行動指針が決まった。掘って掘って掘りまくって報酬ゲット!
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