第85話 決戦という名の報酬

「クリード王子、あんなに数が必要なんですか?」

「斥候部隊によれば、おおよそ一万以上のアンデッドがいるらしい」


 グリンデア古城から離れた最寄りの町を守るようにして、エクセイシア騎士団と冒険者達の連合軍が展開していた。

 勇勝隊、ブライアス隊も加わっている時点で負ける要素なさそう。

 そしてクリード王子と私達は本隊の先頭にいる。

 今のところミッションの気配がないんだけど、もし発生しなかったら?

 そんな恐ろしいこと考えたくない。

 もしそうなったら。ど、どうしよう。


「マテリ、震えているのか?」

「あ、いえ。少し寒くて……」


 頼むからミッション来てください。

 じゃなかったらくだらないアンデッドなんて相手にしたくない。

 一生のお願いの一つです何でもしますから。


「クリード騎士団長。そろそろお時間です」

「わかった」


 予めて決めた時刻になれば本隊がグリンデア古城に攻める。

 そして戦いの火ぶたがきって落とされた。


「開戦だ!」

「いくぞぉぉーーーーー!」


 大勢の声と進軍する足音で地鳴りが起きている。

 こっちも数千単位で戦力がいるし、いい勝負になるかもしれない。

 そうだとして、ミッションが出たとしたら?

 それなら私達がやらなきゃいけない。

 私達がやらないとミッションクリアにならない可能性があるから。


「そう、私達が……やらなきゃ」

「マテリ。あまり気負うな。よし、始まったようだな……僕達もそろそろ行くぞ」


 気乗りしないまま、私達も突撃した。

 そういえばクリード王子を初めて魔道車に乗せた時のテンションが凄まじかったなぁ。

 一通り生活一式が揃っていて移動もできるなんて、王族だって持ってないからね。

 ミリータちゃんもすっかり気を良くして、ドリンクなんか差し出してさ。

 それからテクノロジーについて語っていたけど私は興味ないから寝た。


                * * * 


「な、なんという数だ!」


 さすがのクリード王子も驚いている。

 一万のアンデッドというのは大袈裟でも何でもなかった。

 大小様々なアンデッドが地平を埋め尽くすくらいいて、騎士団や冒険者と激突している。

 クリード王子が先陣を切ってアンデッド達に挑んだ。


「はぁぁッ!」


 クリード王子が複数のアンデッドを一閃した。

 私、剣術とかよくわからないけどクリード王子は達人だと思う。

 フィムちゃんから見てどうかな?


「……すっ、すごっ!」


 フィムちゃんが、さすが師匠を差し置いて言葉を詰まらせるほどだ。

 こうなってくるとレベルとステータスが気になるね。

 それからクリード王子にまとめて斬られたアンデッドはよろめいて、動きが鈍くなっている。

 次々と斬られていくアンデッドも同じだ。

 

「ク、クリード王子……。スキルを解放したのですね」

「騎士団長、僕達は心配ない」

「ハッ! 皆の者! クリード王子達のために道を作れ!」


 ワッと群がるアンデッドをクリード王子はものともしない。

 何せ斬られたアンデッドはほぼ無力化して何もできずに倒されていく。

 後続のサポートにもなっている。


「あれがクリード王子のスキル、レベルブレイクだ!」

「騎士団長、解説してる暇あります?」

「クリード王子に斬られた相手は例外なくレベルが1になる! 人間であればその過程で身につけた技も忘れてしまう! うぉぉ! 押されるぅ!」


 騎士団長、余裕ないなら無理しなくても。

 つまりクリード王子に斬られてしまえば、どんな相手でも無力化する。

 これなら確かにスキルマニアの王様も恐れるわけだ。

 もうあの人だけでいいみたいな状況だし、これはまずい。

 何がまずいかって私のミッションは?


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ミッション発生!

・スカルソルジャーを2000匹を討伐する。 報酬:亡者の骨×2000

・ブラッドマミー×1300匹を討伐する。  報酬:亡者の包帯×1300

・アンデッドファイター×700匹討伐する。 報酬:亡者の牙×700

・アンデッドマジシャン×400匹を討伐する。報酬:亡者の布×400

・アンデッドヒーラー×240匹を討伐する。 報酬:亡者の十字架×240

・アーマーデッド×330匹を討伐する。   報酬:亡者の欠片×330

・スカルドラゴンを40匹討伐する。     報酬:亡竜の角×40

・リビングクロウラーを20匹討伐する。   報酬:血の糸×20

・クルスゾンビを討伐する。         報酬:血塗られた魔法記録書

・バストゥールゾンビを討伐する。      報酬:タルタロスの羽衣

・ズガイアを討伐する。           報酬:冥王の紋章

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「大盤振る舞いきったぁぁぁーー!」

「よし、それでこそマテリだべ」

「さすが師匠……!」


 こういうのでいいんだよ。こういうので。

 ここでようやくアレの出番がきたたわけだ。

 ランプのスイッチをポチっとね。


「主、何なりとご命令を……」

「今から指定するアンデッドをかたっぱしから討伐してね。あそこで戦ってる人間には手を出さないでね」


 アレリアことワンコを呼び出した。

 このお行儀よく座っているワンコに私のミッションを達成してもらうことにする。

 実はこれが有効なのはもちろん実験済みだ。

 ぶっつけ本番でやって報酬が貰えなかったら一生立ち直れない。

 フィムちゃんやミリータちゃんでも討伐すれば有効なんだから当然だよね。


「了解した。では……」

「いってらっしゃい」


 こうして戦場に一匹のワンコが放たれたとさ。

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