第83話 亡者装備、売り切ったぁぁーー!

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ミッション達成! 冥王の杖を手に入れた!

効果:攻撃+444 冥王の杖でダメージを与えた場合、回復や再生できない。

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「っっっしゃっああぁーーーーーー!」


 実演販売道中を終えて、ついに王都でミリータちゃん達と合流した!

 そう、ついに亡者装備を五千個すべて売りきったのだ!

 私達は勝った! やりきった! よくやった! 誰か褒めて!

 例えばそこの紅の刃!


「褒めるぇーーーーー!」

「ひぃぃっ! い、意味わからん!」

「亡者装備がね! 五千個! 売れたのぉ!」

「はぁ!? あんなボッ……いや。素敵な装備といえど、すごい価格の装備が全部売れたって!?」

「ぼったくりって言いかけたね?」


 確かに価格はすごかった!

 だからね! 私は! やりきった!

 最後! 残り六十本くらいがね! ぜんっぜん売れなかった!

 売れなさすぎてまだ買ってない冒険者を三日間くらい追い回した!

 至極まともな交渉の末! 買っていただけたものの!

 まだ残り五十本以上! どうすんのってね! 思うよね!


「そこの勇勝隊とブライアス隊ぃ! これで平和を守れぇぇ!」

「クソッ! おかげで今月の遊ぶ金がなくなった!」

「まぁ我が部隊にとってもありがたい」

「さすがブライアス隊長ォォーーーー!」


 さすが国防を一身に引き受ける男!

 それに引き換え、勇者ともあろう男が遊ぶ金とかみみっちい!

 金! 金! 金に執着とか恥ずかしくないの!

 そういう欲はね! みっともないって言うんだよ!


「マテリ!」

「ミリータちゃん!」

「師匠!」

「フィムちゃん!」


 三人で手を合わせて、そして――。


「私達!」

「オラ達!」

「ボク達は!」

「この度!」

「ミッションクリアしました!」

「鍛冶師としてやり切っただ!」

「平和への貢献を果たしました!」


 足並み揃わない!

 でもいいんだいいんだ!

 大切なのは心よ! 心さえあれば成せば成る!

 私達は成った!


「マテリ! 今夜は打ち上げだ!」

「貴族とかが利用するお店で豪遊しよう!」

「一本数十万する酒とか空けるべ!」

「ミリータちゃんってお酒を飲んでよかったっけ!」

「ドワーフは十歳から飲む!」


 おそるべしドワーフ!

 私、お酒とか飲めないけどがんばって!


「お、おい……。お前ら少し浮かれすぎじゃないのか?」

「は? なんでそういうこと言うの? ミリータちゃん、この紅の刃がノリわるーい!」

「カーッ! おめぇらはつっまんねぇ連中だ! めでてぇ日に祝えない奴なんか地中深くに沈んでマグマにでも頭から突っ込んじまえ!」

「そこまで言うか!? お前ら、ホントどうした!」


 めでたい日には手を取り合って!

 リズムに乗って!


「ミリータちゃん! なんかもう楽しいから踊ろう!」

「踊るべ!」

「踊りましょう!」

「ふぁいふぁいふぁふぁいふぁっい♪」

「ぬうーりゃーぬりゃぬりゃっ♪」

「ぜーんけーんぎっぎっ♪」


 テンションの上昇が止まらない!

 ここ王都のど真ん中なんだけど別にどうでもいいか!


「た、楽しそうだな……」

「俺達も踊るかぁ?」

「踊らにゃ損だぜぇ! ヒャハハハハハッ!」


 一部、人格に支障をきたした冒険者達いたんだ!

 踊れや飲めや! 歌えや歌え!


「あっそれっ!」

「あっそれっ!」

「ふぁいふぁいふぁいふぁい!」

「ふぁいふぁいふぁいふぁーい!」


 元気がますます出てきた!

 この調子でどんどん上げていこう!


「おい! 貴様ら、何をしている!」

「ゲッ! 騎士団長!?」


 極めて正当な理由で騎士団の方々がやってきた!

 天下の往来で踊り狂った集団なんていたら私でも通報する!

 どうする? 踊る?


「マテリ、何をしているんだ?」

「クリード王子!」

「まぁちょうどよかった。君達に相談したいことがあってね」

「この惨状をスルーしますか。さすがはクリード王子です」


 いかなる時も冷静に対応できるからこその王子なのでしょう。

 それよりクリード王子の相談は報酬の匂いがする。


「マテリ。実はアンデッド騒動の黒幕がわかったのだ。そいつの名はズガイア、魔導士協会の評議会直属で六神徒の一人。人は彼をネクロマンサーと呼ぶ」

「ひょーぎかい? ろくしんと?」

「魔道士協会の中枢にいるのが評議会。これがすべての決定権を持つ。その実行部隊が六神徒で、判明している限りでは全世界の魔道士の中でもトップクラスの実力だ。評議会が国にノーと下せば、国の存在が否定される。それを可能とするだけの力がある災厄のような者達だよ」

「そ、それってつまり……」

「どうした、マテリ。震えているのか?」


 六神徒。単純に解釈すれば報酬が六個。

 ダメだ。マテリ、まだ震える時間じゃない。


「君でも六神徒を恐れるか……。しかも悪いニュースが入った。ズガイアがとある町で捕らわれたのだが逃がしたらしい」

「っしゃあぁーーーー!」

「え? つ、続けるぞ。更に奴は力を蓄えるために、グリンデア古城に立て籠って国中のアンデッドを集めている。更に数を増やしたみたいで、中にはレベルが80を超えるアンデッドの存在も確認できたようだ」

「はちじゅうぅーーー!」


 レベル80のアンデッドの討伐報酬!

 なんだろなんだろ!


「僕達も本腰を入れて対処しなきゃいけない。これはエクセイシアの存亡をかけた決戦となるだろう。マテリ、君の力を借りたい」

「報酬は素敵なものですよね?」

「もちろん用意しておく」

「報酬は僕との結婚だとかぬかしやがりましたら地平の彼方までぶっ飛ばしますよ?」

「だ、大丈夫だ」


 なんでちょっと詰まったの?

 とにかくこれで決戦だなんてちょっとだけ寂しい。

 アンデッド関連の報酬が打ち止めかな?

 悲しくて涙が出ちゃう。


「僕もいよいよ覚悟を決めるよ。場合によってはスキルを……」


 できればズガイアとかいうのを生かしてこれからもミッションを期待したい。

 いや、さすがにやらないよ?

 いくら私でもそこまではやらないって。本当に。

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