第75話 楽しいアンデッドライフ

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霧の森に到達! ミストローブを手に入れた!

効果:敵の命中率が半減する。霧のように透き通ってほぼ見えないローブ。

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「これ、邪魔にならなくていいよね。誰が使う?」

「任せる」

「師匠が使うべきです!」


 失くしたら大変だね、これ。

 到着したのはイグナフ領主がいた町から東にある霧の森だった。

 その名の通り、ずっと霧がかかっていて視界がほとんど封じられている。

 こんな場所だから当然、難関ダンジョンとして指定されていた。

 戦うどころか、歩くことすらままならない上に平然と底なし沼があるみたい。

 確かな報酬すらわからないまま、こんなところに入っていく冒険者という人達はすごいね。


「ミリータちゃん、ダンジョンマップはどう?」

「底なし沼や木とか、明らかに歩けねぇ場所はきっちり表示されてる。宝は……そうだなぁ。なさげだな」

「よし、帰ろう」

「前金に加えてゾンビ討伐をすれば軽く百万単位の金が入るんだがなぁ」

「ミリータちゃん、正義の使命を忘れちゃダメでしょ」


 すっごいジットリした目で睨まれた気がする。

 でもしょうがない。私達はイグナフ領主から依頼を受けているんだ。

 これを放棄して帰るなんて、まず人間のすることじゃない。


「こんなとこでゾンビなんてなぁ」

「ミリータさん。アンデッドは基本的に生物の死骸から誕生します。つまりここで目撃されるアンデッドは元冒険者の可能性があります」

「なーるほど。確かにそこら中に死体があってもおかしくねぇ」


 二人の会話を聞いて改めて思うけど、何が冒険者をそこまで駆り立てるんだろう。

 私には考えられ――


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ミッション発生!

・アンデッドファイターを討伐する。報酬:亡者の牙

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「つぇらっしゃぁぁーーーー!」

「ウォォアアァッ!」


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ミッション達成! 亡者の牙を手に入れた!

効果:鍛冶に使用。

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「さすが師匠! 気配を察知するとは!」


 そう、フィムちゃんの言う通り。

 この私が接近に気づかないと思う?

 殴り倒したゾンビに近づくと、鎧を着ていた。

 生前は男だったとわかるし、しっかり剣を持っている。


「亡者の牙?」

「一部のアンデッドから採取できる貴重な素材だな。これは既存の武器や防具に組み込んでもいいが、集めて新しいの作ってもいいかもしれねぇ」

「どんなの作れるの?」

「そうだなぁ。防具なら即死や闇耐性、武器なら即死効果や闇属性付与とかな」

「んー……」


 魅力的ではあるけど、もう少し考えよう。

 私達はすでに似たようなのを身につけている。


「お、あんなところに小屋があるな」

「こんなところに?」


 こんなところに小屋か。

 中に報酬、じゃなくてアンデッドがいるかもしれない。

 だったら見過ごす理由はないよね。


「こんにちは」

「ひ、人か!?」

「おや、冒険者諸君」


 中には数人の冒険者がいた。

 皆、座り込んで疲弊しているみたいだ。


「早くドアを閉めろっ! 奴らがくるかもしれないじゃないか!」

「あぁはい」

「で、あなた達は?」

「俺達は……」


 話を聞くとこの冒険者達はダンジョン探索にきたところ、アンデッドに追われて帰れなくなったとか。

 やっとのことで小屋に逃げ込んだものの、外にはたくさんのアンデッドがうろついて出るに出られない。

 そして冒険者達が口々に話し始めた。


「まさかこんなにアンデッドがいるなんてな。確かにここにはたくさんの死体があるが……」

「まったくだな。しかも生前が冒険者だったせいで、やたら強い」

「痛みを感じない剣士が襲ってくるんだぜ? だからアンデッドは厄介なんだ」


 もう三日もここにいるらしくて、食料が底を突くところだったらしい。

 私はファイファイばっかりしてたから感覚麻痺してたけど、一般の冒険者諸君にとってやっぱり魔物やアンデッドは怖いわけだ。


「クソッ、舐めてたぜ。せめて耐性さえありゃな」

「アンデッドは大半が闇属性……。中には即死攻撃なんてかましてきやがるのもいる」

「ここで死んでしまったら俺達もアンデッドの仲間入りだ」


 その時、ドアをガリガリと何かが引っ掻く音が聞こえた。

 完全にホラー映画のそれじゃん。


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ミッションが発生!

・アンデッドファイター×26を討伐する。報酬:亡者の牙×26

・アンデッドマジシャン×15を討伐する。報酬:亡者の布×15

・アンデッドヒーラー×8を討伐する。  報酬:亡者の十字架×8

・アーマーデッド×28を討伐する。   報酬:亡者の欠片×28

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「亡者一色ゥーーーーーー!」

「マテリ、考えがある」

「なになに?」


 ミリータちゃんが耳打ちしてくれた提案、それは亡者シリーズで装備を量産することだった。

 ある程度、アンデッドに耐性がつけば討伐しやすくなる。

 それに売れば私達の旅の資金が潤う。

 クリード王子達からもらった大金に加えて、更に大儲けできちゃうわけだ。

 そっか、報酬をお金に変えるのも手か。


「それに冒険者がレアアイテムを持っていれば、交渉の材料にできるかもしれねぇ」

「ミリータちゃんも悪よのう」

「ん?」


 ごめん。このノリはさすがに通じないね。

 そうと決まったからにはアンデッドを討伐しまくらないとね?

 イグナフ領主によればなぜかアンデッドが増え始めたらしいし、報酬とお金のライフドリームだ。

 ではでは、改めて楽しいアンデッドライフを始めますか。

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