第47話 物欲まみれが多いです

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エクセイシア王都に到達! 妖精のイヤリングを手に入れた!

効果:属性攻撃ダメージ+30% エルフが装備時、更に属性攻撃ダメージ+50%

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「フィムちゃん、このイヤリングをあげる」

「こ、これは……師匠。ついに私の実力を、いえ。これで浮かれず、精進しろということですね」

「うん、もうなんでもいいよ」


 プレゼントには素直に喜びなさい。

 もうこういう子は放置して、ようやくエクセイシアの王都に辿りついた。

 ファフニル国とそれほどの文化の違いは見られないけど、一つ異様な点があるとするなら。


「なぁ、なんかどいつもこいつも杖を持ってねぇか?」

「しかも二本……全員、女性じゃん」


 そう、女性全員が二本の杖を持っている。

 それも小さな女の子からお年寄りまで、世代が広い。

 クリード王子の訳の分からないお触れのせいだ。絶対そうだ。

 だけどここまで極端なことになる?

 皆、どれだけ欲深いのさ。

 しかもどうせ、相手が王子だから報酬もたっぷりとか考えてるに違いない。


「こりゃマテリに負けてねぇな」

「やだなぁ、ミリータちゃん。そんな人聞きの悪いこと言わないでよ」

「オラはこいつらと同類だと思われたくねぇ。マテリ、とっとと王子のところへ行くぞ」

「やだなぁ、まるで私も同類みたいな言い方じゃん」


 ミリータちゃんの無言の肯定を受け取ったところで、お城に向けて歩き始めた。

 さすがにここで魔道車は乗り回せないからね。

 歩いても歩いても、いるのは杖を二本持った女性達。

 そして私達が連れてきた方々もまた燃えている。


「ルーシエ、これはなかなかライバルが多い。しかし器量はお前のほうが上だ」

「わかってるわ、お父様。私の玉の輿願望を甘く見ないでほしい」


 クリード王子がどんな気分でお触れを出したのか知らないけど、とてつもないモンスターを生み出している気がする。

 これには私もドン引きだよ。

 いくら家が貧乏だからって、騙すようなやり方で結婚していいのかと。

 大体、何がどうなってこんなことになったのかな。

 ちょうど、そこの女性二人が何か話している。


「あらぁ、奥様。今日も無駄な着飾りですこと。オホホホ」

「奥様こそ、その樽みたいなお腹で杖をお持ちになってどうされたのかしら?」

「な、なんですって! クリード王子のようなお方は一周回ってこういうふくよかな体形を好むのですの! あなたこそゴブリンみたいな化粧ですわねぇ!」

「はぁーーー! 言ったわねぇ、このオーク女!」


 聞く価値なんて微塵もなかった。

 どこの世界でもこういう界隈があるのか。

 それに比べたら私なんて健全もいいこと。オホホ。


「そろそろ城に着くはずだ。うぉ! す、すげぇ行列!」

「これ全部、報酬目当て? 正気じゃないでしょ。本当に浅ましい……」

「おめぇもその一人だ」

「ミリータちゃんが容赦ない」

「事実だ」


 ながーい行列の最後尾に並んでからひたすら待った。

 すると判定が終わったのか、前のほうから歩いてきた女性達が意気消沈している。

 いや、どれだけチャンスがあると思ったのさ。


「おどきなさい!」

「そうよ! シャルンテ様のお通りよ!」


 最後尾のほうから珍妙な人達が荒々しくやってきた。

 並んでる人達を突き飛ばしたのは金髪ドリルヘアーでいかにもプライドが高そうなお嬢様とその他の取り巻き大勢。

 ははぁ、ああいうのもいるんだ。

 もちろん二本の杖常備で、その色合いは赤とピンクで目が痛い。

 しかもなんかバラがついてる。そのオプションって必要?


「シャ、シャルンテ様だ」

「相変わらず嫌な女……」

「シッ! 聞かれたら何されるかわからないよ!」


 もちろん周囲からの評判もよくない。

 あんなの報酬とは縁がなさそうだし、どうか絡んできませんように。

 そのシャルンテは前髪をかきあげてから、改めて私達を冷たく見渡した。


「あなた達のような平民がクリード王子に近づこうなんて、図々しいにも程がありますわ。帰りなさい」


 当然、誰も動こうとしない。

 明らかにイラついたシャルンテが杖で床を打つと、乾いた音がした。

 その威力なら大したことないですね。


「聞こえなかったのかしら? 平民風情はお帰り、と言ったのですわ」

「シャルンテ様は侯爵令嬢。クリード王子と釣り合うのはこのお方だけよ」

「わかったらそのブス面を引っ提げて帰りなさい」


 取り巻きのイキりがすごい。

 でもびびったのか、すごすごと帰る女性達が出始めた。

 それに満足したのか、シャルンテは偉そうにまた歩みを進める。

 だけど途中でルーシエちゃんと目が合った。 


「あら、誰かと思えば田舎町の貧乏貴族じゃない。とっくに野垂れ死んだと思いましたわ」

「……お久しぶりです」

「国に何一つ貢献できない薄汚い貧乏女がクリード王子に近づこうなんて……浅ましいですわッ!」

「うぁッ……!」


 シャルンテがルーシエちゃんの頬を杖で殴った。

 お父さんのダクマンさんに起こされながら、頬を押さえている。


「あのお方に相応しい女はわたくしと決まってますのよ! あなたのような家畜の肥料にすらならない女に――」


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新たなミッションが発生!

・シャルンテを討伐する。報酬:エンチャントカード・傲慢

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「つぁりゃぁぁッ!」

「うげごふぉッ!」


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ミッション達成! エンチャントカード・傲慢を手に入れた!

効果:ステータスの合計値が1000以上の時、攻撃を受けた時に確率で一定時間無敵になる。

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 シャルンテが杖の一撃で倒れたと同時に報酬ゲットォ!

 これ良さげ! 良さげ!


「ミリータちゃん! これどうする? 誰が使う? カードって悩みどころがあっていいよねぇ!」

「これはオラ……いや、フィムちゃんかなぁ?」

「いえいえ! これはぜひ師匠が使うべきです!」


 速さが低くて防御が高いミリータちゃんが適任かな?

 いざとなったらこれを盾にして斬り込んでもらえるし――ん?

 なんか静かだね?


「シャ、シャルンテ様……」

「あ、あなた! いきなり何をなさるのかしらッ!」


 私、またやっちゃいました?

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