第12話 鍛冶師の町
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ガンドルフの町に到達! プロテクトリングを手に入れた!
効果:常にガードフォース状態になる。
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なになになになにガードフォースってなに誰か説明説明説明!
守りが上がっちゃう? 常に?
かたくなるぅぅーーーーー!
さて、レセップの町で情報を聞いて私が辿りついたのはドワーフが集う町ガンドルフ。
鍛冶がお盛んな町で、いい武器や防具が欲しければここを目指せというのが冒険者達の鉄則らしい。
鍛冶師の大半はドワーフで人間はほとんどいない。
人間がいないわけじゃないけど、鍛冶に関しては手先が器用で鉱石の取り扱いと知識に長けたドワーフの右に出るものはいない。
おかげで各地から様々な武器や防具、その他もろもろを持ち込む人でごった返している。
レセップの町以上に大きいらしいから、今から楽しみだ。
どんな報酬が貰えるミッションが起こるのかなっ!
「あ、でもいい匂いがするなぁ……」
屋台か何かがあるみたい。
道中、魔物の肉を解体して焼いていただけだから、人の手作り料理は久しぶりだ。
シスターのエリアさんやレセップの町の町長からたっぷりとお金を貰ったし、たまには贅沢もいいよね。
「ふぉわっふ! おいふぃい……」
行きついた屋台で買った串焼きを一口、食べると遠慮なく声が出た。
甘いタレがかかった何の肉かわからない串焼きだけど、普通に味付けされてるだけでおいしい。
こうなると私も少しは料理くらいやっておけばよかった。
前の世界ではお昼なんてインスタントとコンビニ弁当だったからね。
たまに話題の健康食品に手を出しては三日で飽きた。
気がつけば十本くらい食べ終えた頃、視界の端に屋台と並んで鍛冶屋が見える。
そうだ、私はこのラダマイト鉱石で何かを作ってもらおうとしてるんだ。
最強の鍛冶屋と書かれた看板を信じるかどうかは別として、ひとまず話しかけてみよう。
この人はドワーフじゃなくて人間っぽいけど、まぁいいか。
「すみません。こちら鍛冶屋で間違いないですか?」
「ん? あぁ、そうだ! うちが最強の鍛冶屋で間違いねぇ!」
「そうなんですか。お金ってどのくらいかかります?」
「モノによるが五十万はもらうな!」
「たっかぁーーい!」
思わず叫んだ私を最強の鍛冶屋が訝しむ。
実は手持ちのお金で払えないわけじゃない。
それなりに報酬はもらったけど、残念なことに私は鍛冶の相場を知らない。
職人への依頼だから安く済むとは思ってなかったけど、五十万は想定外だ。
「おいおい、世間知らずかよ。うちみたいな最強の鍛冶屋に頼むならこのくらいは当然だぜ?」
「いやいや、お嬢ちゃん。そこは止めておきな?」
私の背後にもう一人、鍛冶屋らしき人間が現れた。
彼が登場するなり、最強の鍛冶屋が舌打ちする。
「てめぇ、サギル。商売の邪魔するんじゃねぇよ」
「ボボリ、お前はろくな技術もないくせに最強と銘打って高値をふっかける。お嬢ちゃん、ここじゃそんなのばかりだ」
「てめぇのところは安いだけでナマクラしか打てねぇじゃねえか!」
「うちの看板を見ろ。『ナマクラで知られるサギル店、実は最安値で名剣を打っていた。あの閃光のブライアスの剣をうちで打っていたと知ったところでもう遅い。馬鹿にしていた人達、息してる?』だ。最強だの安っぽいんだよ」
「てめぇはてめぇで長いんだよ! しかも客を馬鹿にするんじゃねぇ!」
この世で一番どうでもいい争いが始まってしまった。
ヒートアップした二人を放置して歩き始めると、確かに鍛冶屋がたくさんある。
どの店も看板の気合の入りようが凄かった。
世界一の鍛冶屋。
あの世界三大名工の一人が唸った!?
最高の一打ち、魂の一振り。至極の仕事、ここにあり。
まぁ確かに看板は大切だ。
いくら腕がよくても、外面がパッとしなかったらお客さんはなかなか入らない。
少し過剰に煽るくらいがちょうどいいのかも。
今の人達は人間だったし、目に見える鍛冶屋もそうなのかな?
ドワーフが多いと聞いていたのに。
気になって情報収集をしたところ、ここ最近は鍛冶屋が増えているらしい。
最初は腕のいいドワーフだけの鍛冶屋だったけど、そこへ儲かると知った人達が大量に店を構える。
今じゃろくに鍛冶の基礎もできない人達が鍛冶屋を自称して、かなりカオスな状況だそうだ。
腕が悪いんじゃ儲からないんじゃと思ったけど、そこは知恵を回す人間。
過剰な看板やあの手この手で客を引いていると、親切な冒険者さんが教えてくれた。
なるほど、どこの世界も変わらないわけね。
というわけで残ったドワーフの鍛冶屋を教えてもらったけど、人間の店と違って目立たない。
外観だけ見れば鍛冶屋とすらわからないところも多く、ストイックな職人魂を勝手に感じてしまった。
さっそく鍛冶を頼もうとすると――。
「人間に打つものなんてねぇ! 帰んな!」
「あ、はい」
まさかの人間嫌い設定か。
いや、あの大通りにいたぼったくりと詐欺師みたいなのが溢れてるならしょうがない。
あれから七回くらいしつこい客引きにあってひどい目にあったからね。
じゃあ、次の店なら?
「消えな!」
「あ、はい」
ダメです。詰みました。
悪貨、良貨を駆逐するとはこのことだ。
こうして人間はあの質が低い鍛冶屋を利用するしかなくなる。
途方に暮れた時、ポツンとむき出しの鍛冶場と共に一人の女の子が立っているのが見えた。
汚い字で「かじや!」とだけ書かれている。
「かーじやー!」
「さてと、どこにしようかな?」
「かじぃぃやー!」
「うーん……」
「かじやぁッ!」
「アピールがすごい」
私に接近してきて、もう普通に話しかけてるのと変わらない。
変なのに捕まっちゃった。
「お姉ちゃん、あんなガンコジジイの鍛冶屋なんかダメだダメだ! オラの店で打ってけ!」
「あなたもドワーフなの?」
「んだんだ!」
妙なイントネーションで変な子だけど、すがってみるのも悪くないかな。
ミッションが起こらなくて危うく興味を失いかけた町だけど、まだ希望はあるかもしれない。
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