第13話 そこに報酬があるから…
女の子の名前はミリータ。褐色肌をしたドワーフで年齢は二十だけど私より幼く見える。
ミリータは先輩を見習って故郷から遥々と出てきたけど、ここでは小娘が店を出すことを許されていない。
ましてや今は人間達が詐欺紛いのひどい商売をしているせいで、隅にまで追いやられていたと涙ながらに説明された。
つい付き合ってしまったけど私としてはもうこの町から出たくてしょうがなかった。
ミッションは起こらないわ詐欺とぼったくりしかいないわ、挙句の果てにドワーフから迫害されてモチベーションが地に落ちている。
ラダマイト鉱石はどこかに売ろうかとさえ考えていた。
考えていたんだけど、このミリータちゃんが現れたことで事態は変わる。
「そんなわけでな、オラの鍛冶の腕は誰にも負けねぇんだ……」
「うんうん。じゃあ、このラダマイト鉱石を使ってなにか作ってくれる?」
「ラ、ダマイト、鉱石……?」
「まさか幻の鉱石ってわけじゃないよね」
「幻だべがなぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
耳をつんざく絶叫だった。
何事だとドワーフ達が店から出てきたから慌てて笑顔でごまかす。
「なんだ、またミリータか。人間相手に商売しようってか?」
「オラが誰と商売しようと勝手だ。あんたらこそ、人間に仕事とられたくらいでしかめっ面で店構えて情けねぇ」
「フン、こっちにはしっかりとした常連客がいるんだ。お前こそ、ここで商売なんてやったらどうなるかわかってんだろうな?」
「どうなる?」
ドワーフがミリータの頭を掴んで持ち上げた。
ミリータの小柄な体とはいえ、恐ろしい力だ。
「あだだだだ! は、離せ! おろせぇ!」
「半人前が鍛冶なんてほざくな」
「うるせー! オラの勝手だぁ!」
なんだかすごいことになっちゃった。
面倒だからここは私がきちんと謝ろう。
私は何一つ悪くないし事情も詳しく知らないけど、ミリータちゃんはダメと言われてることをやってしまった。
だから私がまず頭を下げて――。
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新たなミッションが発生!
・ドワーフのドグを討伐する。報酬:剛神の腕輪
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「ファイアボォォーーーーーーーーー!」
「ぐあわぁぁぁッ!」
たとえどんな理由があろうとも、暴力をふるっちゃいけない。
正義の血が騒いだ私は迷うことなくドワーフのドグにファイアオーボールを叩き込んだ。
「ぐぅぅ……な、なにをする……!」
「とあぁぁーー!」
「うぐぁッ!」
「てやてやてやぁっ! ファイファイファイファイファアーーーイ!」
「ぎゃあぁぁぁーーーー!」
杖による暴行と火の玉連打だけどドワーフは怯みながらも反撃をしてきた。
恐ろしい形相でドワーフはハンマーを振り回す。
こりゃタフだ。でも私には一発も当てられない。
回避率アップの恩恵が大きすぎる上に、あの大振りだ。
「このガキがぁぁッ!」
「うりゃぁぁッ!」
「うぐっ……」
頭に杖を振り下ろして、ようやくドワーフが倒れた。
いやぁタフだったなぁ。いい汗かいた。
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ミッションクリア! 剛神の腕輪を手に入れた!
効果:レベルに応じて攻撃に補正がかかる。1レベルにつき20上がる。
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「加速的成長ォォォーーー!」
攻撃アップどころじゃない!
レベルが上がるごとにチェックしたくなるやつだ!
さすが神! これをさっそく装着して、と。
「ふんふんふんふんふんっ!」
「ひっ! な、なにしてるだぁ! オラ、わけわかんねぇ!」
素振りをして感触を確かめてみた。
でもこういうのは的がいないとわからない。
あー、早く試したいな。新アイテムを手に入れたときの醍醐味だよ。
早く早く早く的的的的、的、的、的!
「気に入らなければ一級冒険者すら叩き出すあのドグが……」
「グランドドラゴンを槌で叩き殺してたはずだぞ……」
「ドグをあれだけ痛めつけて喜んでやがる……」
気がつけば青ざめたドワーフが私を遠巻きに見ている。
そういえばこの人達、私に戦いを挑んできたんだっけ?
それともドグって人だけ?
いや、ミリータちゃんに因縁をつけてきたわけだから助けた私も無関係じゃない。
「つまり戦う理由が成立すると……新アイテムの試運転をしたいからなぁ」
「なんだぁ、ブツブツ言ってやがる……」
「ね、私と戦お?」
「いぃッ!?」
「たーたーかーおー?」
にじり寄ると、あれだけ強気だったドワーフ達が後ずさりする。
杖を振りながら、私はいつでも迎え撃てるように構えた。
レベルが上がるごとに戦いの自信がついてくるし、ステータスが上がっている実感がある。
あ、そういえばプロテクトリングの効果も試してないな。
でもあえて殴られるのはさすがになぁ。
「ま、待ちやがれ。ミリータについては見逃す。お前にも絡まない」
「え、戦わないの?」
「鍛冶がしたいんだろ? それならそうと最初から言ってくれ」
「言ったんだけどなぁ」
「あんたとは揉めない!」
「……そっか」
少し残念だけど戦意がない人達を痛めつける趣味はない。
剛神の腕輪のおかげで気分がいいし、なかなかいい町です。
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