第9話 聖女様?
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ミッションクリア! 全上昇の実を手に入れた!
効果:全ステータスが+100される。
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「デクトロ一味の逮捕、ご協力感謝します!」
ボスを含めてデクトロ一味を縛り上げて衛兵に突き出した。
聞けばこの町には経験が浅い衛兵が配属されているらしく、デクトロ一味には手を焼いていたらしい。
中途半端に捕えてもボスが手下を引き連れて報復にくるから手を出そうにも出せずにいた。
そんな中、私がこの一味を引き渡したんだから手を握って何度も感謝される。
「マテリさん、本当にやってくれたんですね!」
「エリアさん、こんなものでいいかな?」
「すみません、会ったばかりなのに無理を言ってしまって……それなのにあなたは叶えてくださった」
「ちょ、何してるのさ」
エリアさんが跪いて私に祈りを捧げた。
ここまでされると照れるやら、報酬の一つでも欲しいやら。
でもこの祈りのおかげでかすかに疲れがとれた気がする。
本人はほとんど役に立たないスキルといっていたけど、そんなことない。
たとえ小さな事象でも、ほんの少しでも気が安らぐなら誰かの役に立っている。
どこかの王様みたいに損得と大小、有か無でしか見られないのはちょっとかわいそうかな。
「それでぜひなにかお礼がしたいのですが……」
「きたこれッ!」
「は、はい?」
「いえ、お礼ですか。気を使わなくてもいいですけど、いただきます」
危ない、危ない。
お礼に飛びつくなんて相手にしたら失礼だよね。
私にしては気を使ったはず。
ではぜひ、ご好意に甘えよう。ん?
「なんか人が集まってきてない?」
「皆さん、マテリさんに感謝してるんですよ。私もあなたが聖女のように思えて仕方ありません」
「せーじょー……?」
「自ら危険を冒して人々を救ってくださる……まさに聖女です」
「えー、あー……そう」
全員が私に祈りを捧げ始めた。
言っちゃなんだけど、異様な雰囲気だ。
エリアさんの話によれば、この町の住人の大半はソアリス教の信者らしい。
だからこの祈りはわかるんだけど――。
「聖女様だ……」
「あの方は聖女様の生まれ変わりに違いない……」
「あぁ、尊い……」
尊いとかネット以外で使われる場面があったなんて。
どう見ても聖女とは程遠い容姿だし、盛大に勘違いさせてしまっている。
そこにミッションがなかったら普通にこの町は素通りしていたかもしれないのに。
傍から見たら無償で人助けをした聖女になるんだ。
ちょっと痒いなー恥ずかしいなー。
「今夜はうちに泊まっていってください。お食事もご用意します」
「お世話になります」
まぁ貰えるものはもらっておこう。
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名前:マテリ
性別:女
LV:15
攻撃:218+13
防御:190+26
魔攻:159
魔防:140
速さ:213+40
武器:火宿りの杖
防具:スウェット
ヒラリボン
スキル:『クリア報酬』
称号 :『捨てられた女子高生』
『スキル中毒』
『物欲の聖女』
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* * *
「エリアちゃん、なんだか今日はハツラツとしているな!」
「えぇ、元気をいただきましたので」
教会前の清掃をしている時、近所の方が気軽に話しかけてくださりました。
確かにこの方の言う通り、私には活力が漲っているのかもしれません。
「お父上が亡くなられた時とは見違えたよ」
「あの時はご迷惑をおかけしました」
「いやいや、あいつとクソスキル談義ができなくなって俺もだいぶ落ち込んだよ。ましてや娘のエリアちゃんにしてみればな……」
「フフフ……確かおじさんのスキルは片足立ち靴下履き、でしたよね?」
「言うなよ! 恥ずかしい!」
あれは夢だったのではないかと思う時があります。
マテリという少女は私が見た幻ではないか。
そう思うほど現実感がない出来事でした。
ふらりと現れた彼女は勇敢にもデクトロ一味の前に立ち、あっという間に撃退。
それから一切の見返りを要求せず、あの一味壊滅を快諾していただいたのです。
一体、彼女は何者だったのでしょうか?
やはり聖女様の生まれ変わりなのかもしれません。
「いいか、エリアちゃん。この俺のスキル、片足立ち靴下履きは本当にひどいんだ。何なら俺の妻だってできるからな」
「私もできますよ」
「だろ!? はぁー、あの閃光のブライアスみたいなかっこいいスキルなら俺も今頃は変わった人生を送っていたのかなぁ」
「でも素敵な奥様とご結婚できたじゃありませんか」
デクトロ一味がいる時は怖くてこんな他愛もない会話もできませんでした。
私達だけじゃありません。
町の皆が活気づいています。
衛兵の方々も、あれから訓練を強化したようです。
マテリさんのような少女に救われたことが少なからず負い目となっているのかもしれません。
でも皆さん、いい方向に向かわれたようです。
私も一人ですが、これからは前向きに教会の運営をがんばりたいと思います。
「じゃあな、エリアちゃん。仕事いってくる」
「いってらっしゃいませ」
ぺこりと頭を下げて、私は朝日を浴びながら掃き掃除を再開しました。
こうした気持ちのいい朝を迎えることができたのはマテリさんのおかげです。
あのお方はやはり聖女様、いつかまた出会える日がくることを願います。
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