第2話 なるほど。これがクリア報酬
「ぐすっ……えぐっ……」
もうやだ、帰りたい。今は暗い森の中だ。
あれから武器を渡されて魔物討伐を命じられたけど、無理に決まってる。
兵士達は私がおろおろしてるのを見て笑っていた。あの人達、人間じゃない。
その時、足場がちょうど小高い丘になっていたみたいで転げ落ちてしまった。
「いたた……こ、ここは?」
軽く意識を失って目が覚めた時には森の中、誰もいない。
運悪く変な森に落ちてしまったらしい。
あの人達が捜索なんてするはずもないし、これは詰んだかな。
ひとまず生きていたのは奇跡だ。
でもこのままだと、どのみち野垂れ死ぬか魔物に殺される。
「クリア報酬って何なのォ……」
暖かいご飯を食べて眠りたい。ゲームやりたい。
異世界召喚とか実際に起こっても迷惑なだけだ。
あーあ、もうホントにあーあ。あーーーーーーー腹立ってきた!
「そもそもクリア報酬ってなに!」
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魔の森に到達! 火宿りの杖を手に入れた!
効果:攻撃+13 火属性魔法『ファイアーボール』を使える。
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なんて?
ふと、私の手には杖らしきものが握られていた。
これは、これはもしかすると。もしかするかもしれない。
うんともすんとも言わなかったスキルがここにきて発動した。
これ、使ったら無制限でファイアーボールが使えるやつ?
某RPGにもそんなアイテムがあったような気がする。
それにこのメッセージウィンドウ、ステータスも?
「す、すてーたす、おーぷん……」
実際に声に出すと恥ずかしい。
これで開かなかったらどうしよう。
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名前:マテリ
性別:女
LV:1
攻撃:1
防御:1+1
魔攻:2
魔防:1
速さ:2
武器:なし
防具:スウェット
スキル:『クリア報酬』
称号 :『捨てられた女子高生』
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ひどいステータスが開示された。
基準はわからないけど、たぶん低い。
魔の森とかいう中盤辺りに出てきそうなダンジョンに存在していいステータスじゃない。
RPGでお馴染みの称号も余計なお世話だ。
とにかく今やらなきゃいけないことは、この魔の森を脱出することだ。
そうと決まれば――。
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新たなミッションが発生!
・スライムを一匹討伐する。報酬:攻撃の実
・火宿りの杖を使う。 報酬:魔攻の実
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「ホントに?」
早くも魔物討伐ミッションがきてしまった。
貧弱ステータスだけど、火宿りの杖があればいける?
いやいや、まずは脱出が先だ。
杖を握りしめて警戒しながら歩き始めた。
どこから何が飛び出してくるかわからない。
遠くで聞いたこともない何かが唸っている。
見つかったら終わりだ。慎重に――
「スリャアーーー!」
「ひぃっ!」
木陰からウネウネしたスライムが登場した。
こんなアグレッシブなスライムとか聞いてない。
手が、手が震える。早く、これを、使わないと。
使うってどうやって?
RPGでは火宿りの杖を使ったとかいうメッセージが出るけど、どう使うの?
使うってなに?
「スリャリャブシャァァー!」
「もうヤケクソだぁー!」
杖を振ると火の玉がスライムめがけて一直線に放たれる。
ぼしゅんという音がした後、スライムが完全に蒸発した。
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ミッションクリア! 攻撃の実を手に入れた!
効果:攻撃が+10される。
火宿りの杖を使った! 魔攻の実を手に入れた!
効果:魔攻が+10される。
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スライムが蒸発した地面から何かが光りながらポップアップする。
空中に浮かぶ攻撃の実と魔攻の実らしきものを手に取ってみた。
食べていいもの、だよね。ぱくり、と。
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攻撃が1から11に上がった!
魔攻が2から12に上がった!
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「ほう?」
シャドーボクシングみたいにシュッシュッてやってみたけど今一つ実感がわかない。
いや、私は強くなった。気持ち、気持ち。
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新たなミッションが発生!
・リトルゴーレムを一匹討伐する。報酬:防御の実×3
・火宿りの杖で魔物二匹討伐する。 報酬:魔攻の実×2
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やだ、私のスキルすごすぎ?
誰だ、クソみたいなスキル扱いしたの。
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