どうも、物欲の聖女です~無双スキル「クリア報酬」で盛大に勘違いされました~【Web版】
ラチム
第一章
第1話 異世界召喚されて追放されました
「突然のことで驚いているだろう。そなたをこの世界に召喚したのは私だ」
どこかの建物の一室。
目の前にはどこかの国の王様らしき人が玉座に座っている。
左右には鎧をまとった兵士達、RPGでよく見る光景だ。
見渡しても、ファンタジーで見るような衣装に身を包んだ人達ばかり。
夢かと思って何度も目を瞑っては開けてを繰り返した。
ダメだ、現実です。
「あ、あの。人違いでは?」
シーン。そりゃそうだ。
ここには私しかいないし、明確に「そなた」とか言ってる。
老齢で皺が目立つ王様は表情を一切変えない。
「……大臣。説明を」
「ハッ!」
王様は近くにいた大臣に説明をぶん投げた。
それから大臣はおおまかな説明をする。
召喚した理由は私をこき使うためであり、衣食住などの不自由はさせないとのこと。
私が持っているスキル次第ではかなり優遇してくれるし、爵位を与える。
つまりどうあがいても私に自由はなく、何なら明確な労働時間や賃金も一切不明だ。
質問しても「その時の都合で」「出来合いで」とか曖昧な答えではぐらかされる。
異世界召喚されたけどブラックでした。
「ともかく、そなたを悪いようにはせん。ではそろそろスキル鑑定を行うとしよう」
フードを深く被ったいかにもな人が私を水晶玉が置かれている台座の前に立たせる。
心臓が高鳴ってしょうがない。
「スキル……クリア報酬、です」
誰もフードの人に突っ込めない。
あなた達がリアクションしなかったら私はどうすればいいんですか。
はよ、誰か何か言って。
「効果は『与えられた試練を乗り越えれば報酬が得られる』といったものです」
「……どういうことだ?」
「この者になにかの試練が与えられて、それを乗り越えればなにかの報酬が得られるのでしょう」
「それはどういったものだ?」
「そこまでは……」
すごい気まずい空気になった。
そして王様が私をジロリと見て、何かを期待している。
いやいや、元々この世界にいるあなた達のほうが何かわかりそうなものだけど。
「何も変化はないか?」
「ありません……」
「与えられた試練とは一体どういったものか。仕方ない」
王様が兵士に命じて、剣を持ってこさせた。
私に手渡されると一気に体が沈む。要するに重い。
いや重すぎ! こんなの振って魔物退治とかウソでしょ!?
「なんだ、そんなものも持てんのか」
「何をさせたかったんでしょうか……」
「一回でも振ってみろ。私からそなたに命じて、それを達成すれば何か起こるかもしれん」
フラフラになりながらも、私はがんばって剣を上から振った。
その際に近くにいた兵士に刃が降ろされそうになってすごい怒鳴られる。
すみません。体力テストはいつも中の下です。
結局なにも起こらず、王様はわなわなと震え始めた。
「なんだそのクソみたいなスキルは! 何も起こらんではないか!」
「ひっ! すみませぇん!」
王様が玉座から立ち上がって今にも襲いかかってきそうだ。
普通に生きてたらここまで怒られる機会なんてないし、ましてやここは異世界。
一国を治める立場だけあって、さすがの迫力で涙が出そうなほど怖い。
「陛下、どうされます?」
「苦労して召喚術を完成させたというのに……!」
私がいた世界、つまりこの世界から見た異世界の人間は強力なスキルに目覚める可能性がある。
だけど私が意味不明なスキルなものだから、当てが外れたみたいだ。
このままだと何をされるかわからない。
よし、ここは説得してみよう。
「お、お言葉ですが王様。クリア報酬は何かのミッションをクリアすればたぶん報酬がもらえるんだと思います」
「先程は何も起こらなかったではないか! もういい! 貴様に用はない! 追放だ!」
すでに元の世界から追放されてるのにどこへ行けと!?
落ち着け、ここで反論してもいいことない。
立ち会っている偉そうな貴族的な人がヒソヒソと何か囁いている。
時々嘲笑が聴こえてくるからバカにされてるのはわかった。
あれだけ大きな口を叩いておきながら、とか聞こえてきたから王様は自慢する気だったのかもしれない。
とにかくクリア報酬がどんなスキルか、考えてみよう。
「た、例えば魔物を討伐すればすごい金目の物とか貰えるかもしれませんよ」
「では討伐してもらおうか!」
「あっ」
失言した。待って、魔物とか倒せるわけない。
やっぱり魔物がいる世界なのかと改めて後悔した。
「あ、あの。今のはあくまで一例で……」
「剣すら持てぬ小娘がそこまでほざいたのだ。ぜひ有言実行してもらおう」
「いやいやいやいや! 常識で考えて無理ですって!」
「黙れッ!」
「ひぃんっ!」
怖い、もう涙しか出ない。
屈強な兵士が近づいてきて逃げようとする私を取り押さえる。
ちょっとどこ触ってんのよって言いたくなるけどそんな場合じゃない。
間もなく私は二人の兵士に両脇を抑えられて、引きずられていった。
とてつもない力で、私なんかが暴れたところでビクともしない。
魔物がいるような世界だから、そりゃ鍛えてるよね。
「ホントに待ってください! もっと色々試しましょうって!」
「大人しくしろッ!」
私の非力な抵抗も空しく、間もなく馬車に乗せられてどこかへ移動を開始した。
どこへ連れていかれるのか。
試すなんてのは口実で、これは事実上の追放だ。
いらないから捨てる気です。
意味不明に召喚されて、こんなのってないよ。クソ、クソクソクソ。
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