催眠術
「おっじゃまー!」
「うわあ!」
のんびりとベッドでスマホをいじってると唐突にドアが開けられた。
入ってきたのは幼馴染の花梨だった。
「せめてノックしてくれ……」
「善処する」
「絶対しないだろ……」
今まで何回もそう言ってたけど結局守られてないんだよ!
俺がため息を吐いていると、花梨は本棚の本をいじっていた。
「おい、人の本棚勝手に弄るなよ」
「大丈夫、アダルトな本探してるだけだから」
「お前それ見つけてどうしたいの!?」
すると、本棚から1冊の本が落ちた。
あの江戸紫のハードカバーの本は……!
「何これ……催眠術のやり方?」
「うおぉぉぉ!!」
俺は花梨から本を全力で奪おうと飛び込んだが、たやすくかわされた。
そして俺は本棚に顔面から突っ込んだ。
「急に突っ込んでこないでよ……というか、浩次こういうの興味あったんだ? あと鼻血出てる」
「最近興味持ち始めた……あ、ホントだ」
ティッシュを鼻に当てながら答える。
花梨はベッドに腰掛けて例の本を流し読みしている。
「催眠術なんて存在しないでしょ、あんなの」
「は!? 存在するが!? お前十文字幻斎様知らねえの!?」
「既に様呼び……」
十文字幻斎様は高名な催眠術師で、閃光の催眠術師って異名を持ってる催眠術ショーの第一人者。
日本一有名な催眠術師って言っても過言じゃない。
youtubeチャンネルとかオフィシャルサイトも持ってるから見てみて!
「じゃあ、私にかけてみてよ」
「え?」
「だから、私に催眠術かけてみてよ」
花梨に催眠術をかける?
人に催眠術かけたこと無いんだけど……。
「まさかかけられないの? やっぱ催眠術なんて存在しないのね……」
「おおん!? わかったよかけてやるよ!」
「チョロ……」
俺は催眠術をかけるため5円玉に糸を結びつけたのを花梨の前で揺らす。
「えー、こんなので催眠術かかるのー?」
「黙ってコレ見て」
同じペースでずっと振り子を振り続ける。
そして、ゆっくりと囁き始める。
「あなたはだんだん眠くな〜る……だんだん眠くな〜る」
何回かコレを繰り返していると、花梨の首がカクッと折れた。
するとスースーと寝息が聞こえてきた。
……嘘だろ?
成功したのか?
手を目の前で振るが全く反応はない。
……おっしゃあ!
なんかよくわかんないけど成功した!
ゲッヘッヘッヘ……どんなこと命令してやろうか。
……どうしよ。
「とりあえずかけてみたはいいけど、どんな命令するか決めてなかったしな……」
なんかいい感じのやつ本に書いてないかな……。
本はベッドの上に開いたまま置いてあった。
さっきまで花梨が読んでたからか。
開いているページには、『相手の思いを知ることもできる』と、書いてある。
「……花梨は俺のこと、どう思ってる?」
ただなんとなく。
適当に聞いただけの言葉の……はず。
「……大好き」
「……えっ?」
「ずっと一緒に居たい。朝、お味噌汁を作ってあげたい。今すぐ襲って食べたい」
……。
「あー、手を叩いたら催眠は解ける。1,2,3」
パンッと手を叩くと花梨は目が覚めたようで目を擦っていた。
「――ん」
花梨は少し眠そうな表情で顔を上げた。
少しの間ボケっとしていたが、やがて目があった。
「あれ……なんでココにいるんだっけ?」
「お前が急に部屋に凸ってきたんだよ」
「――あ! 思い出した! ねね、結局催眠術はかかったの?」
「……まあ、かかった」
「ホントに!?」
花梨が食い気味に身を乗り出してくる。
あやうく鼻と鼻がぶつかりそうになる。
「なになに、どんなことしたの!?」
鼻息荒く花梨は聞いてくる。
顔近すぎるし、なんでそんな顔が赤いんだよ。
あとしたのってなんだよ。
「何もしてない。だから安心しろ」
「……意気地なし」
おい何で今俺馬鹿にされたんだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
設定
・浩次が催眠術が好きになったのは1週間前
・花梨は催眠がかかったらチョメチョメしてほしかった
・今度は花梨が浩次に催眠をかけようとした
女幼馴染との物語(一話完結型) 田中山 @tanakasandesuyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。女幼馴染との物語(一話完結型)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます