わっかんねえよ……!

「なんで……なんでこんな事になったんだろうね……!」


 きれいで大きな瞳から大粒の涙がでて頬を伝う。

 ああ……本当にそうだよ。

 俺は何も言わないで肯定した。

 宿敵で――大事な幼馴染の魔王に。



「ボクたちさぁ……仲良かったよね? 川で泳いだり、おいかけっこしたり……」

「一緒に昼寝もしたし……一緒に怒られたりもした」

「だよね……じゃあさぁ……なんで剣を交えてるの?」

 

 俺は何も言えない。

 やめようと思ったら今すぐやめられるはずだ。

 手に持ってる剣を投げ捨てることもできる。

 へし折ることも出来る。

 でもやめられない。

 なんでだ?

 わからない。

 てんでわからない。


「お互い……馬鹿だよね」

「……そうだよな。ほんと……バカだよな」


 俺たちは祭り上げられただけ。

 俺は勇者の血を引いていたから。

 彼女は魔王の血を引いていたから。

 勝手に言われて、流されるまま。

 ……こう考えるとやっぱり俺たちが一番バカだ。

 止められるものを止めない。


「ねえ……もう、終わりにしようよ……」

「ああ……お互い、苦しまないためにも」


 俺と彼女はそれぞれ剣を構えた。

 剣がまとう魔力が衝突して石壁と石床が揺れる。

 どちらが先に動いたからわからない。

 常軌を逸した速度で距離が埋まる。

 2人が同時に剣を振って相打ちになるかと思った。

 だが、違った。

 彼女は剣を振らなかった。

 彼女は、――――笑った。

 俺は振った剣を止めようとしたが止まらない。

 彼女の体を裂いた。

 赤い鮮血が銀色の剣と俺の手と顔を染める。


「あ、あ……あああああああああ!」

 

 今更後悔しても遅い。

 わかってる。

 わかってるんだ。

 だけど、止まらない。

 止められるわけがない。

 堰を失ったように後悔の念が溢れてくる。

 俺の頭を一瞬で支配する。

 そこからは早かった。

 俺は落ちてる剣を拾って自分の喉に突き刺した。

 俺の喉からも彼女と同じように鮮血が飛び散る。

 コレを見た奴らはどんな反応するんだろうな。

 自分の首を突き刺して後悔の念に顔が歪んで死んでる勇者。

 笑って倒れて一切の悔いもなさそうな魔王。

 ……ああ、もうそんなのどうでもいいや。

 俺は意識が遠のくのをはっきりと感じながらまぶたを閉じた。

 

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設定


・勇者くんと魔王ちゃんは仲良しだった。

・つい数年前までは人族も魔族も仲が良かった。

・戦争は悲惨

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