過保護系男子とマイペース系女子
「――おい、起きろ」
「ん……あと5分29秒」
「なんで変に細かいんだ……。いいから起きろ」
「……わかった」
俺は未来の家に起こしに来ている。
幼馴染の未来は朝にめっぽう弱くて、ほっといたら昼までずっと寝てるから俺が起こしてる。
昔は未来も普通に朝起きれてたんだけどな……。
「ほら、着替え」
「ん」
「トースト」
「ん」
「かばん」
「ん」
「歯ブラシ」
「ん」
「出るぞ」
「いってきま~す」
「行ってらっしゃ〜い」
俺たちは未来のお母さんに見送られて未来の家を出た。
毎朝こんな感じで付きっきりで世話をしている。
たまに過保護すぎやしないかと言われるが、別にそんなことはないと思う。
……どこかからツッコミが入った気がしたが気にしない。
「未来、遅刻寸前だから走って」
「ふぁ〜い」
このペースで行くと遅刻ギリギリで内申点に響くので急がせる。
意外かもしれないが未来はしっかり走ればある程度早い。
持久走では学年トップを取ったこともある。
持久走のあとの授業では爆睡してたけど。
「ほら、一限目は数学だぞ。筆箱と教科書、ノートを出して」
「うん」
未来は学校についたらすぐに寝ようとするので先に机の上に道具を出させてから寝かすようにしてる。
クラスメートたちからはお嬢様と執事みたいだって言われてる。
こんな執事がいてたまるか。
「相変わらず過保護だね」
「ん、賢斗か。おはよう」
「おはよ。相変わらず楯野さんに甘々だね」
「そんなことはないと思う。普通だ」
「ははははは! やっぱおもしろい!」
賢人はなにかが上戸にはいったようで抱腹絶倒という様子だった。
何にが上戸にはいったかはわからないが俺はカバンから本を引っ張り出して読み始める。
「ねえ、桟敷くん」
「ん?」
声をかけられた方を見ると学校のマドンナとか言われている明石さんが立っていた。
少し頬を紅潮させており、緊張している。
どうしたんだろう?
「今日さ、お昼ごはん一緒に食べない?」
「おお、明石さんが桟敷のことをお昼ごはんに誘った……!」
「うらやましす……!」
「いくらでその座を買えるんだ?」
「結構マジな顔でそんな事言うなよ」
周りの奴らが急にどっとうるさくなった。
これが蜂の巣をつついたようにうるさくなったっていう状況か。
あと周りの視線が俺にぶっ刺さって痛い。
「すまない、未来の昼ごはんの面倒を見なければいけないからダメだ」
俺が断ると、教室は更にうるさくなった。
もはやセミが鳴いてるレベルにうるさい。
「そっか……じゃあ、一緒に帰ったりとかは……」
「未来の帰りの面倒を見なければいけないからダメだ」
「じゃあじゃあ、放課後勉強を教えてもらうのは……」
「すまない、それも未来の勉強の面倒見ないからダメだ」
「じゃあじゃあじゃあ! 今週の土曜日遊んだりとかは?」
「それも無理だ。土曜日は未来の遊びの面倒を見なければいないんだ」
周りの奴らは信じられないという表情をしている。
その中で賢人はまた上戸を入れていた。
だから何がそんなに面白いんだ?
「そ、そっか……じゃあまたね!」
そう言って明石は教室の外へ逃げて行った。
逃げる時に、未来に少しぶつかったようで、未来が目を覚ました。
そして明石とすれ違いに担任が入ってきた。
さて……今日も1日頑張りますか。
俺は持っていた本をカバンにしまってノートを広げた。
「……ありがとね」
どこからか眠たげな声が聞こえた気がした。
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設定
・未来は本当は朝に強い
・別に付き合ってない
・主人公は過保護を過保護と思わない
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