合コンでの最悪の再会からのお持ち帰り

「……なぜあなたがココにいるんですか」

「それはこっちのセリフだ」


 会社の同僚に数合わせとして誘われた合コン。

 適当にやり過ごそうとしてたんだが、そうは行きそうになかった。


「なんだ秋穂。お前彼氏欲しいのか?」

「お生憎様。ただの数合わせです。そういう創星くんこそ彼女欲しいんですか?」

「俺もただの数合わせだ」


 出会い頭に睨み合ったと思ったらなんか言い合ってる俺たち。

 傍から見たら、何がどうしてこうなったのかわからないだろうが、俺たちは幼馴染だ。

 昔、それはそれは仲が良くって結婚の約束までしたほどだ。

 だが、最後に盛大に喧嘩をして学校以外で顔を合わせなくなったら気づいたら秋穂が引っ越して、完全に疎遠になった。

 親には何回も仲直りしろとドヤされたがそれは俺のプライドが許さなかった。

 秋穂の方も似たような状況だろう。


「ねえ〜何してるの〜? お店入るよ〜」

「おい、どした? 店入るぞ?」

「今行きます」

「今行く!」


 俺は店の中から顔をのぞかせる同僚に呼ばれて店の中に入る。

 合コン会場は居酒屋でどうやら個室を予約しているらしい。

 金曜の夜ということもあり、盛況なようだ。


「とりあえずみんな生ビールで良い?」

「あ、私トマトジュースでお願いします」

「あーい」


 トマトジュースって……渋いな。

 とりあえず飲み物を頼んだので自己紹介が始まる。

 男性陣からの紹介で、トップバッターに俺が選ばれた。


「あ〜……日比谷創星です。25才で、〇〇銀行に努めています」


 そう言って頭を下げるとパチパチと拍手が飛んでくる。

 だが、秋穂だけは拍手する素振りを見せない。

 次々と自己紹介が進んでいき、女子陣のトップバッターの秋穂に順番が周る。


「……溝口秋穂です。25才で✕✕大学大学院に通っています」


 周りの人が拍手する中、俺は拍手しない。

 さっきの仕返しだ。


「はーい、生5杯とトマトジュース1杯でーす!」


 店員さんが盆に載せて運んできた。

 後ろを通った店員さんはそれと同じ量を盆を使わないで運んでた。

 すげえ。


「よーし、カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」

「「か、かんぱ〜い」」


 キンッキンに冷えたビールを喉に流し込む。

 やっぱコレ飲むと仕事終わったて思うわ。

 それぞれが話し始める。


「なあ、日比谷。お前、あの子担当してくんね?」


 そう言って同僚が視線を向けたのは秋穂だった。

 ついさっき、「俺、あの子と話してくる!」って言って凸ってったのに。


「どした?」

「いや、俺、話しててなんとなくわかったんだけどあの子、彼氏欲しいって思ってないわ」


 確かに、数合わせって言ってたしな。


「流石に彼氏が欲しくない人と話しててもな……」

「そういやお前彼女作りたいって言ってたな」

「そゆ事。そんな訳で頼む!」


 そう言って同僚は他の女性のところへ行った。

 そういう訳で俺は秋穂の前に座った。


「……なんですか? 私を口説きにきたんですか?」

「いや別に。流石に合コンでフリー状態作っとくのはまずいだろ」

「ああ、確かに……。じゃあ、話してるふりでもしますか」

「そうしよう」


 そう言って話そうとした俺達だが……。


「……」

「……」


 一向に話題が出ない。

 ものすごい気まずい空間の出来上がりだ。

 周りに影響が出るのはまずい……!


「え、ええっと……その……大学院行くなんてすごいな」

「……どうも。教授たちの推薦で行くことができまして……」

「昔から勉強はできてたからな」


 だけというところを強調してやると、秋穂はイラッときたようで表情が一瞬怒りでこわばった。


「……そういう、創星くんも、よく〇〇銀行なんて大手銀行に就職できましたね」

「ああ……」

「えと……なんて言えば良いんでしょうか?」


 俺に聞くな俺に。

 多分なんか罵倒しようとしたんだろうけど、うまく言葉が思い浮かばなかったのだろう。

 昔からバカとアホしか罵倒する言葉知らなかったからな。


「ああ、もう!」

「あ、それ……」

「! にぎゃい……!」


 秋穂は焦って自分のトマトジュースじゃなくて俺のビールを飲んでしまった。

 ビールの苦さに顔を歪ませている。

 その苦さの美味しさがわからないのか、お子ちゃまめ。


「大丈夫か、ほいトマトジュース」

「あ、ありがとうございます……」


 手渡したトマトジュースをガブガブと飲んで落ち着いた。

 そこで1回会話が終わって頼んだ料理を食べ進めることにした。

 そして、テーブルの上の料理が大体無くなった頃……。


「あにゃ〜」


 秋穂が酔っていた。

 しかもほろ酔いじゃなくてガチ酔い。

 呂律がほとんど回ってないし、なにより目が酔ってる。

 焦点があっちこっちしてる。

 ビール1口でガチ酔いすんなよ。


「おい、秋穂。大丈夫か?」

「らいじょうぶ〜、ソーちゃん」

「!」


 コイツ……昔の呼び方を……!


「なあ、日比谷。お前、あの子を送ってってあげたらどうだ?」

「は!? なんで俺が……!」

「いや、あの状態で帰ったら確実に変なおっさんに絡まれるし……知り合いなんだろ?」

「……まあ」

「じゃあ、頼むよ! 俺、今から2人だけの二次会行かないといけないから!」


 そう言うと、夜の街に消えていった。

 成功、したんだな。


「もひゃ〜」

「しっかりしろ、送ってやるから」


 タクシーを捕まえて、へべれけの秋穂からなんとか聞き出した住所に向かった。

 タクシーの中ではずっと寝てた。

 ……久々にコイツの寝顔なんて見たな。

 ちっちゃい頃にはたくさん見たのに。


「……着きましたよ」

「あ、はい」


 秋穂の寝顔をじっと見ていると、秋穂の家に着いたらしい。

 思ったより合コン会場から近かった。

 運ちゃんに料金を払って秋穂をタクシーから引っ張り出した。

 まだ建ってからそんな時間が経ってないであろう一軒家が目の前にあった。

 ネームプレートには溝口と書かれていたので間違いなく秋穂の家だろう。


「秋穂、着いた。着いたから起きろ」

「んみゅ〜?」


 酔っ払いながらも顔を上げた秋穂の顔は紅潮していた。

 それが秋穂の顔の艶色を引き立たせる。


「じゃあ、俺帰るな」

「やだ〜、ソーちゃんも一緒にきて〜」

「なんで!?」


 秋穂さん、あなた俺のこと嫌いですよね!?

 帰ろうとしても俺の腰に秋穂が抱きついてきて離してくれない。


「HA☆NA☆SE!」

「いやだ! ソーちゃんが泊まってくれるって言うまで離さない!」


 何こいつメンドクサ!

 絡み酒かよこんちくしょう!

 結局、俺が折れて泊まることになった。


「風呂はいらないのか?」

「お風呂なんて明日の朝入ればいーんだYO!」


 キャラ崩壊してる秋穂は俺をヘッドロック連行して布団まで直行した。

 地味に首痛い。


「ほいせー!」

「おわっと」


 首投げで布団の上に投げられた。

 秋穂は華奢な見た目をしているが元レスリング部で俺の腰を破壊したこともある。

 もう治ったけど。


「ソーちゃんと一緒のベッドだー!」


 秋穂はなんの躊躇もなく布団に入ってきてすぐ寝てしまった。

 布団から出ようとしたが秋穂ががっちりホールドしているので抜け出せない。

 しかし、秋穂と一緒に寝るなんてちっちゃい頃以来だ。

 ……あんな喧嘩をしなけりゃ、今も仲は良かったのかな。

 俺はそんな事を考えながらゆっくりと医師を手放した。

 ちなみに翌日、飛び起きた秋穂はそり投げしてきた。

 そのおかげで俺は腰を壊して救急搬送された。

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設定


・秋穂と創星は焼肉を塩とおろしポン酢で食べるか焼肉のタレで食べるかで喧嘩した

・創星も元レスリング部

・秋穂はほろ酔い1口でもガチ酔いできる

・創星の腰は持病として将来響いていく

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