12月の始まり

「いや〜、寒くなったね〜。もう冬だってやっと実感したよ〜」

「そうだな」


 俺と梨奈は買い物からの帰り道そんな会話をしていた。

 厚手のコートやマフラーを巻いている人が珍しくなくなった。

 つい最近まで半袖で汗だくだった気がしたんだけどなぁ。


「でさでさ、おこた、出さない〜?」

「……あったけ?」

「あるよ〜。押し入れの中覗いたら海くんのアルバムが詰まったダンボールの手前にあった〜」

「そうだっけ……?」


 まあ、あるなら探してみるか。

 俺は懐かしのアルバムたちを思い浮かべながら家に帰った。



「……おお、あった」

「でしょ〜?」


 帰ってすぐ押し入れの中を見るとこたつがあった。

 少し型が古いが全然現役の動作をしてくれる。

 こたつをセットして電源をつけるとすぐに暖かくなった。


「あったけえ……」

「だねぇ〜……」


 俺たちはこたつに入ってぐでぐでと寛ぐことにした。

 適当にテレビをつけるが流れるのはニュースばっかりであんまり面白くない。


「あ、そうだ〜。こんなの買ったんだよ〜」


 梨奈はこたつのそばに置いてあったレジ袋からみかんと雪見だいふくを引っ張り出した。


「お、うまそう」

「おこたって言ったらコレがお供だよね〜」


 冬に食べるアイスと言ったらコレの雪見だいふく。

 ちょうど旬の時期できれいな形をしているみかん。

 体を心ごと温めてくれるこたつ。

 最高かよ。


「そういえば知ってる〜? スペインにもこたつってあるんだよ〜?」

「え、そうなの? スペインにもこたつってあったのか。つーか、よくしってるな?」

「本で読んだんだ〜」

「へえ……」


 こたつに入っていると、こんなくだらない会話も途切れること無く続いていく。

 みかんや雪見だいふくをつまみながらのんびりと会話を続ける。


「……お手洗い行きたくなっちゃった〜。海くん、代わりに行ってきてくれない〜?」

「無理だろ」

「じゃあ、行ってくるか〜……よいしょっと〜」

「あ、ついでにお茶入れてきてくれない?」

「おこたあるある〜。1回おこた出るとだいたい何か頼まれる〜」

「確かにあるあるかもしれない」


 梨奈がトイレに行ってしまったので、テレビをぼーっと見る。

 ニュースでは今年の初雪が降ってきたと言っていた。

 適当に外を見るが、雪が降っているわけもなかった。


「……やべえ、眠い」


 こたつに入ってるとすごい眠くなるんだよなぁ。

 あ、もうダメだ。

 俺の意識はそこで途切れた。




「……んあ」

「あ、起きたー?」


 俺が目を覚ますと、梨奈はこたつに戻ってきており、こたつの上に湯呑が置いてあった。

 湯飲みに入ったお茶を飲んだが、もう冷めていた。

 というかみかんが増えてた。


「海くんが寝てる間におばあちゃんからみかんが届いたんだよ〜」


 梨奈が指差す方向にはダンボールに入った三ケ日みかんがあった。


 相当な量届いたな。

「後で梨奈のおばあちゃんにありがとうって電話するか」

「だね〜」


 梨奈のおばあちゃんは静岡に住んでいる。

 だから毎年こうしてみかんが箱で家に送られてくる。

 だいたい、2週間で消えるけど。


「そういえば、三ヶ日みかんって生鮮食品で初めて機能性表示食品になったらしいよ〜」


「そうなのか。というか本当によく知ってるな」

「ついさっきテレビでやってた〜」


 俺は機能性表示食品の三ヶ日みかんに手を伸ばして皮を剥く。

 そしてそのまま口に放り込んだ。


「そういえば海くんって、みかんの白いこれ、なんていうか知ってる〜?」

「アルベド」

「正解〜。よく知ってるね〜」

「梨奈もな」


 相変わらず適当な会話を交わしながらみかんを食べる。

 この絶妙な酸味と甘味のバランスが本当にうまい。

 三ヶ日じゃないけど、温州みかんは三国志時代でも貴重な甘味として有名だったらしい。

 ちなみに梨奈情報だ。


「そんなにみかん食べたら晩ごはん食べれなくなるよ〜」

「大丈夫だ、問題ない」

「エルシャダイだ〜」

「まあ、みかんは大体水分だしな。あと、ご飯が入るくらいには空けとくさ」

「ん、よろしい〜」


 梨奈の作る料理はすげえ美味いからな。

 今から楽しみだ。


「あ、雪だ〜」

「お、ホントだ」


 窓の外には白い雪が舞っていた。

 ここでも初雪が降ったらしい。


「しっかし、雪っていつ見てもきれいだよな」

「そうだよね〜」

「明日、積もるか?」

「どうだろうね〜? 積もってほしいの〜?」

「久々に積もった雪が見たいんだ」

「積もったら明日会社行くの大変になるでしょ〜」

「それもそうか」


 部屋に木霊する俺たちの笑い声。

 これならこんな寒い冬も簡単に乗り越えられそうだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜設定


・同棲してる幼馴染カップル

・冬

・二人共社会人3年目


こんな感じでいっちゃん後ろに設定書きます。

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