女幼馴染との物語(一話完結型)

田中山

夏休み前の放課後の教室

「あ゛つ゛い゛……!」

「もう7月も後半だしな。本格的に夏だよ」


 1週間後には終業式が控えてる今日このごろの放課後。

 机に突っ伏して溶けているのは幼馴染の麻子。

 サウナのような蒸し暑さに参ってる人は少なくない。


「なんで賢治はそんな熱くなさそうなのよ……!」

「俺、体中に冷えピタ貼ってんだよね」

「あー、いいなー。私も明日からそうしようっと」


 実際俺も冷えピタ貼ってなかったら溶けている一員だ。

 水筒には氷をたくさん入れた麦茶が入ってる。

 でも、もう殆どない。

 めっちゃ飲んだから。


「いやしかし、夏休み楽しみね」

「そうだな。麻子はどこか行く予定あるのか?」

「北海道」

「へー、北海道か……」


 北海道って言ったら冬に行くイメージがある。

 避暑地としては良いのか?


「なあ、北海道ってどこ行くんだ?」

「私は富良野とか札幌。ラベンダー畑とか白い恋人パークとかあるんだよ」

「お土産よろしくな」

「オッケ、コンビニの焼きそばパン買ってくる」

「せめて白い恋人とかで頼む」


 北海道のお土産でコンビニの惣菜パン買ってくるなよ。


「わかったわよ。買ってきてあげるから期待しときなさい」

「サンキュ」

「逆に賢治はどこ行くのよ?」

「兵庫」

「兵庫? あんた、兵庫に親縁者いるの?」

「いや、父さんの母校が甲子園でるから見に行くらしい」

「あー、おじさん、野球狂だもんね」


 仮にも人の父親を野球狂呼ばわりか。

 まあ、否定はしないけど。

 父さんは高校生の頃、地元の野球部に所属していてクリーンナップを担ってたって言ってた。

 まあ、もうその面影は見るも無惨なんだけどな。


「じゃあ、あんたもお土産買ってきてね」

「あいよ、ちゃんぽん買ってくる」

「ちゃんぽん好きだけど関西じゃないわよね?」


 失敬な。

 関西でもちゃんぽんが有名なところ、あるんだぞ?


「じゃあ、玉ねぎでも買ってくる」

「そこで野菜選ぶ?」


 むむ、ワガママ娘め。

 淡路島の玉ねぎは料理人の人が喉から手が出るほど欲しがるんだぞ?

 ※あくまで個人の意見です。でも、淡路島の玉ねぎは本当に美味しいのでオススメします。


「んー、じゃあタコでいいか?」

「わたしタコ嫌い」


 お前タコ食べてないなんて人生の2%ぐらい損してるって!

 明石沖でとれる明石だこは兵庫ブランドの1つなんだぞ!

 ※明石だこもふつうにオススメです。スーパーのパックのタコぶつなんて比にならないぐらい美味しいです。


「わかったわかった。炭酸せんべい買ってきてやるって」

「なにそれ?」


 有馬せんべい本舗の名物せんべいだよ。

 有馬温泉に含まれる炭酸を使って作られたせんべいは昔から食べられてるんだぞ。

 ※明治時代からあるお煎餅の老舗です。おばあちゃんが昔よく食べてた。


「もうなんでも良いわよ……。あんたに任せるわ」

「任された!」

「変なもの買ってこないでよ?」

「流石にお土産はしっかり選ぶ」


 俺、信用されてないなぁ……。

 ちょっと悲しい。


「ねえ、旅行行くのっていつ?」

「8月の半ばだってさ」

「私もそのくらいね。……ならさ、遊ばない?」

「全然いいぞ? 実際俺も少し暇だし」


 夏休みあるある、予定がない日は大体冷房が効いた部屋でゲームしてるだけ。

 それで、2週間くらいすると飽きる。


「それでね……私達だけで少し遠出しない?」

「別にいいけど……どこに?」

「長崎とか?」

「お前ちゃんぽん食べに行きたいだけだろ」

「バレた?」


 放課後の教室に木霊する俺たちの笑い声。

 俺達以外誰もいないのでよく響く。


「でも、長崎だと日帰りは無理だろ」

「当たり前じゃない、だから泊まるの」

「泊まるって……良いのか?」


 年頃の女子が男と宿泊するのは親は黙ってはいないだろう。

 いくら別部屋だとしても。

 麻子の親父さん、過保護だからな。


「多分」

「多分て……」

「大丈夫っしょ。お母さんなら許してくれるだろうし」

「まあ、なんとかなるか……」

「そうそう、なるようになる!」


 コイツと過ごす夏休みは楽しいだろう。

 少し先の夏休みが今からすごい待ち遠しい。

 あと、麻子が日焼けしたところか見てみたい。

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設定


・付き合ってはいないがキスぐらいは当たり前にするぐらいの距離。

・日焼けフェチ。

・主人公も野球ファン。

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