第73話 ケルベロス ワンと呼ばれた男

 どうやらレオとモコは病気の母親に代わり、兄妹2人だけで父親が働きに出ているスタンと言う場所へ向かっているらしい。そこで毎年この時期に開催される大商市で父親が働いているそうだ。


 そんな事をみんなでココアを飲みながら話したのだが、2人ともだいぶ疲労しているので、今日はここで野営する事にした。

 だから、ストライカーを街道から少し離して、荒野に入った所で停車させて野営地とした。


 俺は今回のレベルアップで追加された新技能【部隊補給】から、我が日本国国防陸軍が陸上自衛隊の時代から世界に誇る需品装備の最新型、『野外入浴セット3型』をゴンに出してもらった。


 日本人として、“おもてなし”の極意は温泉!

 裸の付き合いこそ、人が分かり合える人類の革新へ導くのだよ!赤い総帥な大佐殿。


 てな訳で


 「おーい!男共!手を貸してくれー!」


 俺はエルフにきと弟子3人衆の手を借りて、『〜大地の湯〜異世界店』を組み立てた。

 ただ、問題なのがこの辺りには水源が無い事だ!


 だから、彼女に相談してみた。エロ猫様事件以来、まともに会話出来てなかったからね。もう、そろそろ・・・ね。


 「フィンさん。貴方は魔道の力で、空気中の水分を集めたり、酸素と水素から水を作ったりして、この貯水タンクに水を貯めることは出来ませんか?」


 「酸素と水素は寡聞にして存じませんが、空気中の水分を集める事は造作もありませんよ。」


 「ああっ、助かります!お手数でなければ、お願いします。」


 彼女は、柔らかな微笑みを浮かべて答えてくれた。


 「はい。容易いご用ですよ。でも、今度時間がある時に“酸素”と“水素”を教えてください。」


 久しぶりに彼女に笑顔で話して貰えた!

 イエス!俺のテンションも爆上げだよ!


▽▽▽


 「なあ、ダイチの旦那。完全武装で何してるんだい?

 それにゴーレムの“ハチ”達がうるさいくらいに飛び回っているし、極め付けはテントの後ろに鎮座してる“ゴーレムの台車”!

 あれにも何かヤバい武装が沢山付いていたんだけど、何処かと戦争でもするつもりなのか?」


 俺はM250軽機関銃をスリングで首から下げ、そして手にはFFV441榴弾を装填したカールグスタフM3E2 MAAWSを持って、“大地の湯”入り口正面を警護している。


 そして俺はついにゴンの最強増加兵装『RCV-L』を【偵察】技能に追加する事が出来た。


 RCV-Lは、英国企業とJLTVの製造メーカーであるOshkosh Defenseが米軍の為に開発したUGVである。


 正確には米陸軍戦闘能力開発コマンド (CCDC) で評価試験中の実証機の内5台がNAVY SEALに回されて、スマートドッグの陸上技能拡張ユニットとして運用実験されていた物だ。


 570 × 220 × 80cm サイズのボディーで、ディーゼル エンジン + 電気モーターのハイブリッド動力で動く特殊ゴム製無限軌道車である。

 ぱっと見はゴム製キャタピラの付いたティッシュボックスである。


 そのRCV-Lの前方に CROWS IIが設置され、M2重機関銃とBGM-71 TOWミサイル × 2発がマウントされており、中央にはゴンが鎮座し、後部にはマイクロUAVコンテナが装備されている。

 

 確かにこれなら、ゴン単独でT.レックスと戦えただろう。


 「ロイタール。今は女性方が入浴中だ。

 不埒な事をしようとしたら、コロス!近づいたら、コロス!考えただけで、コロス!

 分かったら、ここから30m離れろ!」


 俺はカールグスタフMAAWSをロイタールに向けて警告した。


 そう、俺は地獄の番犬、ケルベロス小隊のリーダーだった男だ!

 例え知り合いだったとしても、一切手加減なんかしない!


 「ちょちょ!そんな物騒なモノ、俺に向けるなよ!」


 鉤鼻のコソ泥は、慌てて退散して行った。


 「あ、あの人、コワイ・・・」


 それを見ていたレオが、尻尾を股に挟んでビビっていた。


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