第72話 可愛い旅人

 一行はヴァロワ王国のバスティア街道を、一路王都ヴィロワリア目指して進んでいた・・・なんか、越後のご隠居様の物語みたいだな・・


 さて、俺たちの一行で、ご隠居様のポジはやはり剣聖様だろうか。

 今日もストライカーの装甲の上で胡座をかいていらっしゃる。

 でも最近はドライバーハッチの右でプロテクターM151 RWSの前に座るのが多くなった。

 前方視界が良いからかな?


 「んも〜!ギスおじさん、邪魔ー!RWSの前に座ったら、死角が出来ちゃうじゃない!

 もー!この人撃っちゃう?ダイチ!M2で撃っていいよね?」


 「イース、やめてー!この超至近距離で撃っても、俺らがバラバラになる未来しか見えんのだから!絶対だーめ!」


 「ほっほっほ!面白そうじゃな!どうなるかワシも試してみたいな。

 どれ嬢ちゃん、ヤッテ見るか!

 ほれ、ほれ!」


 「だー!剣聖様も煽らないで下さい!」


 そんな話をしていると


 「あっ、ダイチ。前方哨戒中のピューマが何か見つけたみたい。戦術モニターに映ったよ。


 えーと、あっ大きくなった。

 ゴンちゃんありがとう!


 あっ、子供だ!獣人族の子供が、2人だけで歩いてる?

 うーん。周囲に大人は・・・ナシ

。」


 「ダイチさま・・・」


 コロンが心配そうな声を上げた。


 「分かってるよ、コロン。少し急ごう!」


 ストライカーのアクセルを踏んで、加速した。


◇◆◇レオ


 「お兄ぃ・・・あんよ、イタイ・・」


 4歳になる妹のモコが、道端で蹲って歩かなくなった。

 昨日から乗せてもらえる荷馬車が見つからず、歩きっぱなしだったから、僕も正直しんどい。

 

 でも・・・


 「良く頑張ったな、モコ!えらいぞー!どれ、お兄ちゃんがオンブしてあげるから、もう少しがんばろ!なっ!」


 モコの前にしゃがんで、背中を向けた。


 「お兄ぃらって、ちゅかれてりゅ。」


 モコは頭を振ってイヤイヤした。


 「でもね、モコ。こんなとこで休んでたら、いつまで経っても、スタンには着かないよ。そしたら、父さんが悲しくなるよ。」


 「・・・いやぁ、モコ、しょんなの、やぁー。うっ、ひぐっ、うっ・・・」


 モコが泣き出しちゃった。

 

 「どうしよう・・・」


 「おーい!君たち、どうしたの?」


 綺麗な女の人の声に、後ろを振り向いた。


 離れたところに停まったヘンテコな馬車のうえで、お姉さんが手を振っている。

 耳と尻尾がある!やっった!獣人族のお姉さんだ!


 「モコ、獣人族のお姉さんが来たよ。ほら!」


 「・・うっぐ、ひっぐ・・」


 「あら、どうしちゃったのかなぁ?

 どこか痛いとこでもあるのかな?」


 「ええと、妹が・・・」


 「あんよ、ひっぐ、イタイの、ひっく・・・イタイ、の、ひっぐ、もうやー!うえええん!」


 モコが大泣きし出した。


 「ごめんよ、モコ・・・」


 「あらまあ、それは大変。

 それじゃ、お姉さんがとっても元気になる、とってもとーっても美味しい飲み物を飲ませてあげよう!

 頑張ったご褒美にねっ!」


 「・・ごひょうび?」


 「そっ、ご褒美よ!」


 そう言ってとても綺麗なお姉さんは、モコを抱っこした。


 「さっ、お兄ちゃんも行こう!」


 僕はお姉さんの手を取って、ヘンテコな乗り物へ向かった。


▽▽▽


 「「おいし–––!」」


 コロンお姉さんの仲間の男衆は、みんな尻尾がゾワゾワする人たちばかりだった。

 あ、でも僕らにこの“ココア”って飲み物を作ってくれたお爺さんは、とっても優しそうな人だったよ。


 でも、ビックリしたのは、コロンお姉さんもそうだけど、他の2人のお姉さんも綺麗で、特にフィンお姉さんは綺麗過ぎてなんか落ち着かないんだ・・・どうしたんだろ、僕?


 「さあ、マシュマロを焼いてあげましたよ。これをココアに入れると、もっと美味しくなりますよ。」


 「ん––––––んんん!やわりゃきゃいーの、とーっても、おいしーの!

 ありあと!コロンおねーたん!」


 モコがご機嫌で尻尾と頭を揺らしている。僕も嬉しくてホコホコしてきた!


 「キャー、なにこの子!可愛いすぎて、ボク死んじゃいそう!

 イースおねーたんって呼んで!ねえ、呼んでみてみてー!」


 銀色の髪のイースお姉さんが、目をキラキラさせて、モコににじり寄って行く。

 何かこのお姉さん、危ない気がするんだけど・・・


 「いーしゅ、おねーたん!」


 「きゃは–––!もう、死んだ!」


 そう言って、イースお姉さんは青いマットの上にひっくり返ったよ・・・。

 怖いから、このお姉さんから少しモコを離そう。

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