第68話 最凶の暴君
◇◆◇ 青鷲傭兵団 団長オラベル
青鷲傭兵団のオラベルは、咄嗟にカイトシールドで急所を庇ったお陰で飛び散った煉瓦の雨から身を守る事が出来た。
だが、煉瓦を払い除け立ち上がったオラベルが見たのは地獄だった。
崩れた城壁から打ち込まれた40mm擲弾が中庭にいた一部の兵士を爆炎で飲み込み、また別の一角では毎分625発の30x113mmB弾が次々と兵士の身体を爆ぜさせていた。
「まずい!まずいぞー!
野郎共!生きてるなら集まれー!このままではなぶり殺しだ!密集して突撃するぞ!!」
オラベルは、まだ生き残っていた部下達を集めた。
「いいか、生き残りたかったら、死に物狂いで俺に付いて来い!敵は10人もいないんだ!肉薄すれば勝てるぞぉ!」
青鷲傭兵団と砦の兵士達は、崩れた城壁の間から砦の外に全力で突撃に出た。
◇◆◇コーウェン伯爵
コーウェンは家宰のクロワと付近にいた騎士に救われて、何とか城塞の中に逃げ込んだ。
するとそこに、全身の赤と黒の奇怪な入れ墨紋様を焦茶色のローブで隠した男がやって来た。
「伯爵様。悪夢を解き放ちます。もう良いと言うまで、決してここを出ないで下さい。」
「ざ、ザルスの連れてきた男か!あ、アレを使うのじゃな?よよ、宜しい!やってくれ!」
「はい」
人間らしさを全く感じさせない入れ墨の男は、頭を下げると城塞の外に出て行った。
◇◇◇
「「「ワー!ワー!ワー!」」」
崩れた城壁を乗り越えて、200人程の兵士が突撃して来るのが見えた。
「イース!次弾M1040キャニスター弾装填!って–––!」
「キャニスター弾、発射ー!」
ドガーン!
M1128 ストライカーMGSの105mm砲から発射されたM1040キャニスター弾は、砲口から飛び出すと容器内に収められていた約 2,000 個のタングステン ボールを飛散させて砦から飛び出して来た敵全てを薙ぎ払った!
その時
GrrrrrrGwoooooo!
ゾクッ!心臓が縮んだ!
M1040キャニスター弾が巻き起こした血潮の混じった土煙の向こうから、ソレが現れた。
Gwooaaaaaa!
「T.レックス!」「暴皇竜!」
ティラノサウルス!
白亜紀最強の一角!いや、史上最強の生物!
元の世界のT.レックスよりも巨大な全長12メートル、体重14トンを超える最凶の暴君が、正門を吹き飛ばしたヘルファイアの残留ロケット燃料の炎の向こうからその威容を現した!
「暴皇竜!禁忌の秘術を犯したのは何者か!」
フィンさんがガンナーハッチを開け身を乗り出し、T.レックスに向かって叫んだ!
「暴皇竜!ここはお前のいるべき所ではない!立ち去りなさい!」
フィンさんの全身から湧き上がった“力”のオーラが、T.レックスに向かって“力”の本流となって飛び出した!
GuuuOOoooo!
T.レックスがそれに向かって聞く者の魂を凍らせる咆哮を上げた!
「駄目じゃ、効かんようだの。」
剣聖様が冷静に呟く。
「コロン!アイツにAGM-114L ロングボウ ヘルファイアを撃て–––!」
「は、はいっ!」
バシュ––––––––––ドガーン!
ミリ波レーダー誘導のロングボウ ヘルファイアがT.レックスに命中し、9kgの高性能成型炸薬弾が超高圧のメタルジェットの噴流となってT.レックスの体内で破壊の限りを尽くした!
grrrru・・・・ドン
最凶の暴君ティラノサウルスは、血の塊を吐き出しながら大地に沈んだ。
だかその時、更なる絶望が俺たちを襲った!
GurrrrGWOOOoooo!
もう1匹のT.レックスが城門の瓦礫を飛び越えて飛び出して来た!
ヤツはグングン加速して接近して来る!
「コロン!M230機関砲を撃て–––!」
「はい!」
ドンドンドンドンドンドン
近すぎてT.レックスの速度に照準が追いつかない!
「「!」」
ディーンとワルレンが無言で3台のストライカーの前に立った。
ロイタールもその後ろに構える。
俺たちの盾になるつもりか!
俺はイースが搭乗している隣のM1128 ストライカーMGSに向かって跳んだ!
「ストライカーMGSの車長ハッチにあるM2重機関銃ならっ!」
「どうやら、敵が一枚上手だったか?
ワシが出る!」
剣聖様はストライカーの装甲に胡座をかいて座っていた姿勢から跳躍し、突進して来たT.レックスの頭上へ一気に跳んだ!
ドン!キィン!
俺には何が起こったのかは見えなかった。
ただ、音速を突破した衝撃波と剣の鞘音だけが耳に届いた。
すると、突進して来ていたT.レックスが頭から縦に2枚に下ろされて倒れた。
やっぱ、1番恐ろしいのは剣聖様だった。
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