第67話 蘇る伝説
◇◆◇ コーウェン伯爵領軍
第2軍司令 騎士ルーアン
ルーアンの指揮する第2軍の前衛500と鉄鬼傭兵団は、たった2人の敵に文字通り全滅させられた。
その時間、30分にも満たない。
「「「ぎゃ––––!」」」
2人の化け物がルーアン自身が位置する第2軍の後衛の最前列を吹き飛ばした!
「お前が指揮官ニャ?」
白いローブを返り血で真っ赤に染めた死神が目の前に立って、赤い唇を三日月に吊り上げた。
「コーウェン伯爵領軍 第2軍司令 ルーアン!」
ルーアンは名乗りを上げて、腰の剣を抜いた。
「ふふふっ。
「な、何とゴッズ騎士団だと?実在したのか!」
「我が騎士団は歴史の闇に自ら身を沈めたからニャ。」
「正に御伽噺に唄われし隔絶した技量に一致する。」
ルーアンはそう言いながら、馬から降りた。
「ほう、態々馬上の利を捨てるニャ?」
「貴方がゴッズの騎士なら、馬上でも地上でも大差あるまい。ならば、伝説の騎士に礼を尽くすまで。」
「ふっ、酔狂な。だか、悪くない。参られよ!」
「うおー!」ザン!
ルーアンが剣を構えて一歩踏み出したその瞬間!ルーアンの首がコトリと、身体から落ちた。
「当代の騎士の実力などこんな物か。今や“騎士の血”もこんなに薄くなってしまった。我らゴッズの闘いは最早望んでも手に入らぬのか・・・」
キャシャは深いため息を付いた。
◇◆◇コーウェン伯爵領
騎士団団長ブロイゲン男爵
ブロイゲンは目の前で起こっている事を理解する事が出来なかった。
「伝令ーっ!第2軍ルーアン司令討死!第2軍は全滅しましたー!」
「何!」「ぜ、全滅!」「ルーアン殿が!」
周りの騎士達に動揺が走った。
「伝令!中軍である第1軍の前衛が敵2人と接敵!交戦を開始しました!」
ブロイゲンが馬上に乗り前方を見ると、前方から兵士の血で真っ赤に染まった土煙が、兵士の身体を爆散させながら物凄い速さで近づいて来るのが見えた。
「ぜ、全軍!て、てつ・・」
「いや、それは困ります。」
気がつくと、目の前には真っ白なローブを纏った美しい顔立ちの金髪の男が、この修羅の戦場に似つかわしくない静かな雰囲気を湛えて立っていた。
「な、何奴だ?」
「
「なっ、何?ゴッズだと!」「バカな!そんなの御伽噺だ!」「あり得んわ!」
ブロイゲンの周りの騎士達が騒ついた。
シュドン!
音速を超えた銀閃がエトワルの周りに飛んで、エトワルを詰った騎士達の首を斬り飛ばした。
「な、何だと!ほ、本物なのか?
ならば、どうしてここに?」
「信じられない気持ちは分かるよ。私自身こんなくだらない闘い自体、ゴッズが介入すべき物ではないと思うからね。」
「で、では、何故こんな・・・」
「気に入らないからさ。我らゴッズの恐怖を忘れて、我が物顔で出師を弄んでいるお前達がな。
それに、どうやらコーウェン伯爵自身、ドラゴンの尻尾を踏んでしまったみたいだからな。」
「そ、そんな・・・」
「さて、そんなにゆっくりおしゃべりは出来ないんだ。気まぐれ猫におもちゃを全部取られてしまうからね。
では、さよなら。」
エトワルは肉厚のブロードソードを上段に構え、闘気を込めた剣の腹で空気に打ち下ろした。
ドババババババ!
闘気を纏った斬撃はエトワルから20m以上直進し、その直線上にあったブロイゲンを始め全ての人間も大地も穿った!
▽▽▽
「やあ、エトワル君。満足したかニャ?」
そこにはゴッズの2人以外、立っている者は誰一人いなかった。
戦場となった荒野一面にはバラバラになった兵士の身体が散乱し、その血は広い荒野を赤く染め上げた。
「お前はどうなんだ?キャシャ。満足できたのか?」
「ガッカリだニャ。量だけは食べられてお腹いっぱいニャ。
でも、ここでも私を満足させられる男がいなかったニャ。」
「だが、これで見逃した兵士達から我らゴッズの恐怖が伝わる。“最強”を忘れ去っていた愚か共も、恐怖と共に再び栄光の
これで“エース”にご満足頂けるだろう。」
「私は満足出来ないから、ダイチに相手してもらうニャ!タップリとニャ♡」
返り血を浴びて真っ赤に染まったキャシャが、艶かしく唇を舐めた。
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