第58話 亡国の騎士団
「どうしたんだい?君たち。」
イースが広場でのびているロイタール達3人にトコトコ駆け寄って声を掛けた。
俺はベル・フィンウェルさんがJLTVから降りるのに手を貸してから、JLTVをゴンに収納させた。
収納は出す時とは反対で、JLTVが輝き出して光の膜に覆われて、それが徐々に小さくなって光の球になり、ゴンのマニピュレーターに挟まれて、インベントリに戻されるのだ。
嫌な予感がプンプンするので、目立ちたくなかったんだけど、案の定絡まれてしまった。
「察するに、貴殿がダイチ殿と見受けるが、どうかな?」
来ちゃったよ。化け物が!
剣聖様程ではないけれど、俺の
「その様ですね。あなたは?」
エルフみたいな金髪のイケメンは、煌く笑顔で名乗った。
「私は
エトワルと名乗ったイケメンは、白いマントを跳ね上げて、左手を腰の剣に添えて腰を落とした。
その姿はあくまでも静かで、剣気や殺気等一切感じかれなかったが、俺の
「控えなさい、エトワル!無礼です!」
ベル・フィンウェルさんが怒りを露わに、俺の前に立ち塞がった。
「姫様。しかし、その男もやる気の様ですが。」
しまった!無意識にSFP9を抜いてしまったよ。
「いやいや、全くないぞー。」
俺はSFP9をホルスターに戻して、両手を上げた。降参です、ハイ。
「エトワル!わたくしをその“名”で呼ぶのなら、ここにその名を以て命じます。ゴッズはダイチ殿に危害を加える事を固く禁じます!」
「はっ!尊命しかと!」
イケメンは恭しくお辞儀して、俺の前に道を開けた。
「ギスカール!この件で話があります。後程わたしの部屋へ。」
「はっ、姫様。」
成り行きを面白そうに見ていた剣聖様も恭しくベル・フィンウェルさんにお辞儀をした。
「さ、ダイチ殿。参りましょう。」
▽▽▽
「ご不快な思いをさせ、大変申し訳ございませんでした。」
ベル・フィンウェルさんの客室にお邪魔して、窓際のソファーに腰を下ろすなり、彼女はそう言って頭を下げた。
「正直生きた心地はしませんでしたが、どうか頭を上げて下さい。
えーと、ところで私も姫様とお呼びした方が・・・」
「それはお止めください。
わたしは姫と呼ばれる立場を捨てて久しいのです。できればただフィンとお呼びください。」
フィンさんの白磁の頬にほんのりと朱色がさした様に見えるのは気のせいか?
「分かりました。それでは、フィン、さん。あのエトワルと名乗った男は何者なのですか?顔に似合わず物凄く剣呑な。」
「彼らは
フィンさんは、隣に座っているイースの手を取って続けた。
「良い機会なので、ダイチ様にお話し致します。
この子は、イースはとても古い家の末裔なのです。
でも、この子の血統はとても細くなってしまい、今ではこの子が最後の一人なのです。」
「それでは、イースは・・・」
「この子とは、直接血が繋がっているとは言えません。ですが、わたしの最愛の妹の血統である事に間違いはございません。」
「・・・フィンおばさん・・・」
フィンさんは心細そうに彼女を見上げたイースの頭を、そっと自分の胸に押し当てた。
「イース。可哀そうな子。でも、貴方がたった一人になってしまった、私の大事な一族である事に変わりはないのよ。愛しい子。」
「うん、フィンおばさん。ボクも愛しているよ・・・」
コロンはそんな二人の様子を涙で目を濡らしながら見つめていた。
「そして、わたしとゴッズの騎士達の役目は一つ。この子の、イースの血統を守る事なのです。
何代にも渡りゴッズの騎士達はイースの血統と共に在り、そしてこれからもイースの後葉を守り続けるでしょう。」
▽▽▽
夜の闇に沈むカムランの街。街の北側に位置する高い鐘楼の屋根に白いマントとフードで身を包んだ男が立っていた。
「エトワル君。随分ご機嫌だニャ~。なにか良い事でもあったのかニャ?」
この一帯で一番高い鐘楼の屋根に飛び降りてきた白い影が、音もなくエトワルの隣に着地した。
「キャシャか。見ていたのだろう?面白いオモチャを見つけた。
ところで、何故団長の元に顔を出さない。」
「
今回の招集は常闇の尻拭いじゃないか!
・・・こんなくだらない仕事に栄光のゴッズを使うんじゃないよ!」
「おい、キャシャ。口調が崩れてるぞ。」
「ニャ~」
「しかし、我が栄光の神聖護国騎士団も今やたった7人。騎士団の名もその恐怖さえも、もはや御伽噺の中にしか存在しない。」
「追懐はもっと年を取ってからにするニャ。そんな事ではエトワル君禿げてしまうニャ!」
獣人の女が闇に飛んだ。
「言いたいことだけ言いおって、気まぐれなネコめ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます