第53話 3者面談?もとい圧迫面談

 イースがフィンおばさんと呼んだ女性と抱き合っていると、彼女たちの周りを4人の男達が取り囲んだ。


 どいつも油断ならない雰囲気がプンプンする!


 「どーれ、イース。やっと見つけたぞ。」


 男達の背後から、灰色のローブを着た老人が現れた。


 俺はその老人を一目見た瞬間、絶望を味わった!


 「なんだよ。この街は化け物だらけなのか?」


 「フー!」


 コロンが威嚇しながら、MP7を構えて俺の前に立った。尻尾の毛が逆立っている!

 コロンの足はガタガタ震えて、今にも倒れそうだ。


 「ほう、その娘っ子といい・・異邦の戦士といい・・・・中々のものだな。」


 「やめてよ!コロンちゃんとダイチを虐めないで!ギスおじさん!」


 そう叫んでイースがコロンに抱きついた。だが、その途端コロンは気を失ってイースに崩れ落ちた。


▽▽▽


 アスランの店先で騒ぎを起こしてた俺たちは、アスランの求めにより彼の店の2階にあるアスランの自宅に招かれた。


 アスランは、どうやらフィンおばさん(どう見てもお姉さんにしか見えない)やあの恐ろしい老人と知り合いのようだった。


 それで、俺たちは今、アスランの豪華な応接室を借りて顔を合わせている。


 この応接室に入ってまず俺は、俺たち全員の武装をゴンのインベントリに仕舞って、全力で無抵抗アピールをした。


 この老人がマジで恐ろしい。


 「はっはっは。では、ワシも剣を置くとしよう。そう恐れられては話が進まないからな。」


 そう言って彼の後ろに控えたもう1人の老人に腰の剣を外して渡した。


 そして勧められるままに、豪華なソファーに気絶したコロンを抱いたまま腰を下ろした。

 正直コロンを抱いていないと、俺まで気を失いそうなんだけど。


 対面のソファーには、正面におっかない老人が座り、隣には濡れ羽色の美しく長い髪を腰まで垂らした、絶世の美女が座っていた。


 その隣にはイースがチョコんと座っている。


 それから物騒な雰囲気の4人の男達は、それぞれ油断なく部屋の四隅に陣取って、ピリピリした気配を撒き散らしている。

 うん、ウザいなぁ君達。


 おっかない老人の剣を預かった老人が皆にハーブティーを淹れてくれた。


 「さて、若いの。ワシはギスカール・ロベール。当代の剣聖を名乗っておる。」


 剣聖キター!ワイまじ死んだ!


 「私は八神 大地。ダイチと名乗っています。こことは違う世界から来ました。元の世界では軍人で、士官をしておりました。

 この子はコロン。巨大樹の森で助けた子です。

 そして、コイツはゴンと言います。機械ですが、知能を持っています。」


 一気に言い切ったよ。


 「ほう、色々と突っ込み所満載だな。」


 「わたしはベル・フィンウェル。女魔道士をやっております。」


 「ダイチ、ボクの言ってたフィンおばさんだよ。」


 「おばさんって、お姉さんの間違いだろ!って、あっ、失礼しました・・・」


 つい、無意識にイースに突っ込んでしまった。


 「はっはっは!まあ、せっかくだ。ダルマンの入れてくれた茶でも飲みながら、気楽に話そう。」


 剣聖からの“圧”が少し緩んだ。


 「それで、ダイチ殿がイースを助けてくれた、で相違ないかな?」


 あっ、気楽になんて言いながら、また“圧”が強くなったじゃないかーい!


 「はい、巨大樹の森を流れる川で、流されて来たイースを助けました。」


 「そうだったね、ダイチ。でもあの時は目覚めたら真っ裸だったから、ビックリしたよ!」


 「ちょ!おまっ、イース!黙れ!」


 「何!」「裸だと!」「チッ!変態め!」「・・・」


 やめなさい君達!殺気が漏れてるぞ!

 あー、SFP9で良いから、今すぐ手元に欲しいー!


 あっ!美しいお方が、麗美な眉を顰めていらっしゃるぅー!

 もう、だめぽ・・・


 「何故そのような事を?」


 美しいお方。いっそ死ねと言って下され〜


 「イースは長時間水温の低い川を流されて来た為、明らかに低体温症の症状が出ていました。

 正直、危険な状態でした。

 その為、一刻も早く濡れた体を拭いて寝袋で体を温め、加温した輸液を点滴する必要かあったのです。」


 「貴方は医術の心得がお有りなの?」


 ああ、どうか言葉で責めないで、鞭で打って下さい・・・


 「ピーピッピッ!」


 「ダイチ、また変なこと考えてただろー?ん?んー??」


 「滅相もありません、お嬢様!」


 しまった、敬礼してしまったあー!


 「ふふふ、面白いお方。」


 「「「「ちっ!」」」」


 「はっはっはっ。それでどうしてイースを救った?

 別にになりそうだった訳では有るまいに。」


 「目の前で、人が死にかけてたら、助けることにどんな理由が必要でしょうか!ましてや子供だったら尚更だっ!」


 「ほう、ワシに立ち向かうか?武器も持たずに!

 お若いの。覚悟は出来ているのだろうな?」


 殺気は感じられない。だが俺の命が尽きた事が厳然とした事実として理解できた。


 「俺はコロンを守ると誓った!この子の母親の墓前に!

 俺ではアンタに勝てないさ!万が一にもな。

 だが、心臓の鼓動が止まるその瞬間まで俺はアンタを殺す為に足掻き続ける!この子を守る為にな!」


 俺はポーチの中に忍ばせていたスタングレネードを取り出そうと、腰のポーチに手を突っ込んだ。


 「ふんっ!」


 剣聖の手刀の斬撃が飛んできた!ヤベー!


 その瞬間、コロンの身体が目もくらむ黄金の輝きを発した!





 


 

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