第27話 南の森の王

◇◆◇ブゴブル


 ブゴブルは生まれながらのゴブリンロードであり、今この広大な原初の森の南域の“王者”であった。

 南域の王権は同じゴキブリロードの父だった者から奪った。


 原初の森では各領域の“王者”になると、“王者“の種はその領域で繁栄を謳歌する事ができた。

 それが“王種”の交代が起きても、何万年と続く原初の森の掟だった。


 ブゴブルは己の半身たる“宝剣”を手に、自分の巣穴から出てきた。

 三匹の雌と巣立ち前の十一匹の子を残して。


 「“眷属ドモ・ヨ、集・マレー!“」


 ブゴブルは天に向かって大きくそう叫んだ。


 「ブヒィー!」「ブイブイ!」「ブフー!」「ブイー!」


 ブゴブルの忠実なジェネラル達を先頭に数多の眷属が駆け寄ってきた。


 ブゴブルは集まった1000に近い戦士達を見渡した。


 後少し、いや季節を後一巡待てば、戦士達の数は2千を優に超え、西の“支配者” 天敵である俊竜ラプトルに挑めた筈であったのにと、ブゴブルは儘ならぬこの状況を残念に思った。


 「ブイ、ブヒィ」


 大きな棍棒を手にし、顔に俊竜の傷跡を付けたジェネラルが進み出た。


 ブゴブルは再度戦士達を見渡してから、語り始めた。


 「“近隣ノ、村ガ、オ・ソワ、レタ!

2ツ・トモ、全滅シタ!”」


 「「「ブヒィ–––!!」」」


 眷属達が怒りの咆哮を上げた。


 「“敵ヲ、探シ・出シテ、必ズ・殺セ–––!”」


 ブゴブルが眷属にそう命じた瞬間、頭上から黒い筒状のナニカがすごい速さで落下してくるのを感じ、手に持つ宝剣で迎え討とうと頭上に振るった。


 宝剣と黒い筒が交差しようとした瞬間、黒い筒が爆発しブゴブルと周りのジェネラル達を吹き飛ばした。


◇◇◇


 二つ目のコロニーを殲滅した。


 一つ目のコロニーより大きなコロニーだったが、コロンも俺も慣れてきた為か、作戦通り順調に片付けることができた。


 そして今、俺たちは最大のコロニーを見渡している。


 「随分大きなコロニーだな。さっきのヤツの3・4倍の規模はありそうだ。」


 「はい。でも空き地になっていて、巨木がないから見易いですね。」


 「ピッ」


 コロンはもう既にやる気満々で、M320スタンドアローンを手にソワソワしている。


 「まあ、待て。コロン。待てだ・・」


 コロンを宥めた時、ソイツがコロニー中央の大きな巣穴から出てきて、物凄い咆哮を上げた。


 「ブヒィ–––!ブブヒィ–––!」


 するとそれに応えるかのようにコロニー中からゴブリンの雄叫びが上がった。


 「ブヒィー!」「ブイブイ!」「ブフー!」「ブイー!」


 数え切れないゴブリンが巣穴から手に手に棍棒を持って中央に集まって行く。


 「すごい数のゴブリンですね・・」


 「ああ、そうだね。中央にいる一際大きなゴブリンが王様かな?その周りにも、四匹の大きなヤツがいるね。」


 まずは頭から潰そうか。


 「ゴン。スイッチヴレード600」


 「ピッ」


  バシュ


  素早くスイッチヴレードを空き地の中央に向けて射出した。


 「ゴン。あの王様の頭上2mで起爆させろ。王の取り巻きも一緒に狙うんだ。」


 「ピッ」


 「さあ、スイッチヴレードが起爆したら、パーティー開始だ!」


 「はい、ダイチさま!」


 「ピッ!」


◇◆◇ブゴブル


 ブゴブルは爆発の衝撃で気を失い掛けたが、ギュッと歯を食いしばり耐えた。

 それ以上に、敵の攻撃で吹き飛ばされ、地面に倒された事に頭が沸騰する程の怒りを覚えた。


 ブゴブルがこれ程のダメージを負ったのは、あの青の俊竜との闘い以来だった。


 ブゴブルは拳を地面に押し付けながら、ゆっくりと体を起こした。


 目眩と共に、耳がキーンとなって周りの音が良く聞こえない。


 だがそれ以上に、ブゴブルは目の前で繰り広げられている光景が理解出来なかった。


 戦士達が皆北に向かって突撃している。

 しかし、次々と戦士達の間で小さな爆発が起こり、部族の戦士達が吹き飛ばされて倒れていく!


 一方、ある一定の所まで走り着くと、戦士の体が血煙を上げて、次々に倒れて二度と立ち上がらなくなった!


 戦士達の命の灯火が次々に消えて行くのがブゴブルの魂に伝わって来た!


 「“これが闘いだと言うのか!

 フ・ザケル、ナ–––!儂ハ、認メン、ゾ–––!コン・ナ、闘イ、認メル・モ、ノカ–––––!“」


 ブゴブルは天に向かって、血を吐き出しながらウォークライを響かせた!


 「“ウオ゛オ゛オ゛オ゛–––––!”」






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