第25話 子ギツネの決意
コロンを仲間に迎え、泉の空き地を出発して今日で14日目。
未だ飽きもせずこの巨大樹の森は続いている。
途中何本か川を渡るのにとても難儀した・・・ゴンが。
川幅自体は狭いのだが、決まって水量が多い上に流れが思った以上に速くて、ゴンが見事に流されちまうんだわ。
「おいおい、ゴンさん。お前さんの水陸両用だったよな?
米原潜から一緒に西南諸島の島に上陸した根性はどこへやっちゃったんだ?」
「う〜ん!う〜ん!」「・・・」
コロンはゴンに縛りつけたロープを俺と一緒に引っ張って、ゴンを川から引き上げた。
まっ、ゴンの名誉のために付け加えるが、ゴンたちスマートドッグがバージニア級原潜から上陸する時は、同級原潜の艦外収納庫に収納された小型潜水艇ASDS (Advanced SEAL Delivery System) にゴンたちは懸下されて上陸地点に接近し、ASDSから分離された後はスマートドッグ下部に取り付けられた水中推進ユニットの電動プロペラ推進で水中を航行し上陸地点まで接近する。
そして上陸直前にそれを水中に投棄し、自力歩行で上陸するんだ。
なので水中推進ユニット投棄後の陸上では、水深80cm以上の水は自力では渡れない。浮いてしまうんだ、水に。そう言う仕様だから仕方ない。
「ゴンちゃん、よくがんばったねー。えらい、えらい。」
「ピ、ピー!」
川から引き上げたゴンをコロンが誉めている。コロンに褒められたゴンが嬉しそうに見えるのは・・・いやまあいいか。
「コロン。これから先には3つの大きなゴブリンの巣がある。
そのゴブリンの巣を迂回するととんでもなく遠回りになるから、ゴブリンの巣を殲滅しながら進もうと思う。
できるかい?」
「はい!ダイチさま。コロンはやります!このコと一緒だから大丈夫です!(ふんす)」
そう言ってコロンはスリングで首から下げたMP7A2を軽く撫でた。
愛情のある優しい手つきだ。
もちろん俺はコロンにMP7の撃ち方を教える一方、毎晩食後に銃の手入れも指導した。というか、食後の習慣になっていた。
何故がゴンのインベントリから、カリフォルニアのコロナドにあるNAVY SEAL基地の兵舎に置いて来た、俺の私物のライフルメンテナンスボックスが出て来たんだ・・・。
まっ、今更だけどね。私物のキャンプ道具も出てくるし、一体どうなってんだゴンのインベントリ。
私物以外にも食べ物や飲み物からコロンのお菓子まで出て来るんだが・・・後で請求書来ないよね?ね??
ゲフン、ゲフン。
それで、毎日実弾撃ってトレーニングして、毎晩一緒に銃の手入れをしてるんだから、コロンだってそりゃ愛着わくよね。
話がまたまた飛んですまないが、コロンにMP7を与えて良かったと心底思う。
俺たちは途中何度もゴブリンに遭遇した。
大抵俺がM5で始末したんだが、コロンがMP7の取り扱いに慣れたころ、コロンに撃たせたんだ。ゴブを。
元の世界だったら『子供になんて事させるんだ!』とか『虐待だ!』とか炎上しそうだが、いや確実に炎上案件だが、ここは生死の境界が曖昧な異世界なんだ。
考えてもみたまえ。ここはヴェロキラプトルがリアルで闊歩し、双頭4腕のモンスターが人を襲ってる世界なんだぜ。
俺だっていつ命を落とすか知れない世界だ!(できる限りそうならないようにがんばる)
だから俺は最大限コロンに生き残る術を与えたいんだわ。
だからコロンにMP7を与えて、使い方を教えた。
それに最近ではM26グレネードの投擲の仕方も教えて始めたし、M320 グレネードランチャーの撃ち方も教えている。
コロンが初めてゴブリンをナイフで倒したとき、血の気のひいた青白い顔で俺に言ったんだ。
その時コロンの手が小さく震えていた。
「ダイチさま。コロンに力を与えて下さってありがとうございます。
外の力に怯えるばかりだった、フラム村の無力な泣き虫コロンとはこれでさよならです!
これで、コロンの家族に降りかかる理不尽な“力”に、コロンは立ち向かえます。いいえ、胸を張って、誇りを持って立ち向かいます!」
そう言い切ったコロンの震えは収まっており、その黄金色の瞳には強い意志の力が込められていたんだ。
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