第24話 闇夜の戦闘
◇◆◇
大きなカイトシールドとロングソードを手にしたワルレンの隣に、バスターソードとバトルアクスを両手に持ったディーンが森に向かって構えた。
その二人の後ろに隠れるよう、短剣を手にしたロイタールが構えて、後方のベル・フィンウェルとイースを守るようにロングボウに矢をつがえたエルドリンクが立っていた。
「来た!」
ロイタールが小さく叫んだ。
すると川原と境界の巨木の影から次々と剣を手にした男達が現れた。
「狼牙傭兵団か?」
ディーンが誰何する。
「いや、傭兵共にしては腕が立つな。バウドの私兵、親衛隊ってやつかな?」
ロイタールが敵を看破した。
「・・かかれ!」
ロイタールに看破された敵のリーダーが叫んだ。
すると、素早く飛び出して来た男にベル・フィンウェルが流星のような火魔術を放った。
「うお–––!」「がっ!」
ベル・フィンウェルが魔法を放つと同時に、エルドリンクが矢を放った。
「距離を詰めろ!子供には怪我をさせずに捕らえろ!それ以外は殺せ!」
「そう思い通りにさせるかよ!犬共め!」「下郎め!ふんっ!」
ディーンとワルレンの大剣が敵の突撃を切り裂いた。
「ぎゃー!」「うがぁ!」
火魔術で燃えた男が松明となって、ワルレンとディーンの剣閃が斬り飛ばした血潮が闇に浮かび上がった。
「ひっ!ぼ、ボク・・・」
男達が命さえ投げ捨てながら自分達を目指して突進してくる圧力に、イースは恐怖し震えた。
ディーンとワルレンの壁を突破した男の腕をロイタールの短剣が斬り飛ばした。
だがどうした偶然か、斬り飛ばされた男の右腕が、剣を掴んだまま回転してイースに向かって飛んできた。
「きゃっ、ぅわあ―――!」
イースは恐怖のあまり甲高い声で叫んで、その場から逃げ出してしまった。
最も安全なベル・フィンウェルの元から離れて。
すると戦闘には加わらず、距離をとってじっと様子を窺っていた黒いマントの男が飛び出して、音も立てずに走り寄りイースをマントに包んで闇に逃げ込んだ。
「イース!」
一瞬の隙にイースを奪われてしまったベル・フィンウェルは激怒し、雷を身に纏いながら両手で流星の火魔術を敵に連射した。
「ロイタール!イースを追って!」
敵を次々と倒しながら、ベル・フィンウェルは鉤鼻の小男に命じた。
だが、ロイタールはベル・フィンウェルが命ずるより早くイースを攫った男の後を追って駆け出していた。
▽▽▽
「ふん――!う――!」
イースは男にきつく抱えられ、走りながら口に猿轡を嵌められ手も拘束されていた。
イースは男に乱暴に扱われて気を失いかけた時、突然イースを抱えた男が突然立ち止まった。
カッ!
男の目の前をナイフが飛び去り木の幹に突き刺さる。
「俺の目を盗むとは、お前バウドの親衛隊じゃないな。・・・サッグパンシバルか。」
ロイタールに追い詰められた男のイースを抱える腕に力が篭った。
『・・・ロイタール・・・』
イースはそこで気を失ってしまった・・・。
イースを抱えた男は黙って腰の短剣を抜いた。
ロイタールはクルクルと自分の短剣を回しながらイースを抱えた男の周りを慎重に移動した。
「シッ!」
鋭い気合と共にロイタールの斬撃が連続で繰り出された。
フィイントを織り交ぜながらロイタールは敵を更に追い詰めて行った。
「クッ!」
イースを抱えた男がロイタールの鋭い攻撃を躱そうと半身を引いた時、足をついた川原の石がぐらついてバランスを崩してしまった。
ロイタールはその一瞬を見逃さず、裂帛の闘気を込めた一撃を打ち込んだ。
「ふん!」
黒いマントの男は辛うじて首元でロイタールの必殺の一撃を受け止めた。
だがロイタールはすかさず左手に隠していたナイフを敵の顔面に投擲した。
「うっ!」
顔面に致命的なナイフを受けた男は身を翻して、最後の力で後方に跳んだ。
だか、それも予想していたロイタールは鋭く前方に踏み込んで、男の胸に深く短剣を突き立てた。
だがイースを抱えた男は自分の胸を突き刺したロイタールの力も利用し、咄嗟にロイタールの胸を蹴って後方の川の中へ飛び込んだ。
「しまった!」
ロイタールはすぐ追おうとしたが、暗闇の中を流れる水の流れはあまりにも早く、ロイタールはイースを見失ってしまった。
「イース―――!」
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