第22話 少女がための刃

本日も2話投稿します。(^^)


どうぞお楽しみください。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺がコロンにMP7A2を与えて、その使い方を教えたのは、それをコロンに強く求められたからでもあったが、それは・・・


▽▽▽


 時は三日前に戻る。


 コロンがゴンに乗って移動することに慣れた頃、ゴンが前方にゴブリンの小集落を発見した。


 「ピッ、キュピッピ!」


 「ん?ブラックホーネットの索敵映像か?うわー、ゴブリンの巣じゃないかー。」


 俺たちの進行方向を哨戒している5番機が、森の巨木の間に散在している小屋とも呼べないとても粗末なゴブリンの住処をそのカメラに捉えた。


 奴らの住処は全部で4つ。そうしてる間にも、出入りしているゴブリンが確認できた。


 「よし。小規模なコロニーみたいだから、殲滅しよう。このまま見逃して進んで、俺たちの背後を取られるリスクは犯したくないからな。」


 そう言って装備を確認した。


 M5のマガジンが弾納に6と小銃に1。1マガジン20発の弾薬だから合計で140発の6.8×51mm .277 SIG Fury弾。

 それとSFP9とそのマガジンが合計3。


 これだけでも十分だが、念の為にM26グレネードを6発ポーチに入れた。


 「コロン。俺はこれからこの先にあるゴブリンのコロニーを殲滅してくる。その間、ゴンと大人しくここで待っててくれないか?」


 コロンにヘルメットを被せながらそう言い聞かせた。


 「ダイチさま・・・」


 コロンはプルプル震えながら涙を流してイヤイヤした。


 「大丈夫!俺はゴブリンなんかに絶対負けないから。」


 膝をついてコロンの目の高さに合わせて、安心させるようニッコリ笑ってコロンに語った。


 「そうだ、コロンの父さんのナイフの代わりに、このナイフをコロンにあげよう。お守りにな。」


 そう言って俺はCOLD STEEL社の RECON SCOUT SK-5を専用の鞘と一緒にコロンに手渡した。

 このリコーンスカウトは初めて“アイスマン”と共同でミッションを完遂した時、あいつが自分の愛用のナイフだと言って俺にくれたものだ。


 コロンはリコーンスカウトを鞘から抜き取ってナイフを見つめた。


 「綺麗なナイフ・・・」


 流石鍛冶屋の娘。


 「このナイフがきっとコロンを守ってくれるから。」


 だまってコクリと頷いたコロンとゴンを残して、俺はゴブリンのコロニー殲滅に向かった。


▽▽▽


 殲滅自体はなんて事のない簡単なミッションだった。


 巣の外に出ていた五匹のゴブリンを中距離射撃で仕留め、4つの巣の中にM26グレネードを放り込むだけの簡単な仕事だった。


 ただそこで問題が起こったんだ。


 俺がゴブリンの巣の中にグレネードを放り込んでる隙に、俺の死角にあった巣からゴブが一匹素早く飛び出して、偶然コロンたちの方へ逃亡したんだ。


 その際運悪く、ブラックホーネット5番機の視界も巨大樹に遮られて、この逃げたゴブリンを認識できなかったんだ。

 そしてコイツをゴン本体のセンサーユニットが直接捉える距離まで、コロンたちに接近を許してしまったんだ。


 『ピーピーピー!』


 突然俺のヘッドセットにゴンからのアラートが響いて、IVASの戦術マップにコロンたちに接近する赤いドットとゴブリンが映し出された。


 「クソ!」


 俺は自分の愚かしさを罵りながら、全力でコロンに向かってダッシュした。


 「コローン!」


 叫びながら巨大な幹を回り込むと、そこにはゴブリンの血で汚れたリコーンスカウトを手に、震えながらコロンが立っていた。そしてその足元には息絶えたゴブリンが転がっていた。


 「ダ、ダイチさま!」「ピー!」


 コロンの無事な姿を見て、その場にへたり込んでしまった。

 ゴンがえらくお冠だったことは、この際無視だったが・・・・。


▽▽▽


 そんなことがあったので、俺はコロンに自分の身を守れる力を与えることにしたんだ。

 もちろん、コロンもそれを望んだことは言うまでもない。


 それで散々迷って、迷い抜いてコロンが中距離で戦えるようにPDW、即ち個人防御火器であるH&K MP7A2を与え、その使い方を指導したのだった。

 

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