第19話 旅立ち
コロンの着替えが終わったので、次のタスクに取り掛かろうと思う。
「コロン、ちょっと手伝って。そんでゴン、PumaIVのコンテナを出してくれ。」
「はい、ダイチさま。」「ピッ」
俺とコロンはゴンのインベントリから2m強の長いコンテナを取り出した。
ゴンのインベントリは長尺物でも問題ナシ。全長90㎝のボディーから2m強のコンテナが出てくる不思議・・・。
コロンも目を丸くしてたよ。
「コロン、これはPumaと言って、空から遠くの地上を監視する機械だよ。UAVって言うんだ。」
「・・・空から?機械?UAV??」
「実際に見ないと分からないよね。一緒に組み立ててみようか。」
米軍のRQ-20C PumaIVはエアロバイロメンツ社のUAVで、全長1.5m翼幅3mのグライダーである。
日本製の全固体電池を搭載した PumaIVからは、その滞空時間が大幅に延長され、10時間の飛行が可能となった。
また、同社のスイッチブレード300+を主翼下に取り付ける事により、同機に簡易的な地上攻撃能力を付加する事が出来る。
PumaIVのコンテナには分割されたパーツとなってPumaが収納されており、コロンと二人で10分程で組み立てる事が出来た。
「さっ、これで完成だ。」
組み立てたPumaIVを右手に持って立ち上がった。重量が6kgしかないので、片手で楽に持つことができる。
「うわー、大きいんですね~!」
ロコンが興味深そうにPumaIVを見ている。
「それじゃ、飛ばすよ!ゴン!」
「ピッ」
ゴンがPumaIVのプロペラを回し始めたタイミングに合わせて、俺は助走をつけてPumaIVを思いっきり前方に放り投げた。
するとPumaIVはすぐに高度を上げて、泉の上を飛び越えて行った。
離昇するとPumaIVは胴体下部から複合カメラモジュールが回転して展開され、映像データを送ってきた。
「コロン、これを見てごらん。」
そう言ってコントロール用のタブレットをコロンに渡した。
「えっ、これは・・・まあ!ダイチさま!コロンが見えます!ほら、コロンがここに!あっあっ、尻尾も見える!」
ロコンはタブレットの映像を食い入るように見つめながら、尻尾をブンブン振り回した。
ゴンは離昇したPumaIVを反転させ、空き地の上を再度フライパスさせた。
コロンは頭の上を飛行するPumaIVと、コントロールタブレットの映像を何度も交互に見ながら、PumaIVに向かって大きく手を振った。
「あはっ!コロンだっ!コロンが映ってる!すごい!すごい!」
コロンは初めて見た空撮映像に興奮して、ピョンピョン跳ね出した。
「よーし、ゴン。それじゃこの森の終わりを探そうか。」
巨大樹の梢の遥か上を軽々と飛び越えて、PumaIVは南へ機首を向けて静かに飛翔して行った。
▽▽▽
翌朝、俺は膝立ちしているコロンの後ろに立っていた。
「本当に良いんだね?」
「はい、短く切って下さい。」
背中までのびたコロンの金髪に、一房ずつハサミを入れていった。そうやって切った髪は、コロンの手に渡した。
ショートボブに変わったコロンは、更に幼く見えるが、初めて見た頃の儚さは感じられない。
「ありがとうございます。ダイチさま。これでスッキリしました。」
そう言ってコロンは、切った髪を手に母の墓に近寄った。
墓にはコロンが朝一番に摘んできた花が綺麗に供えられおり、周りにはコロンの仲間の動物たちが沢山集合していた。
「かあさま。コロンはこれからダイチさまとここを旅立ちます。
もう二度と戻って来ることは出来ないかもしれません。
でも、かあさまが寂しくならないように、コロンの心を置いて行きます。」
そう言ってコロンは、墓の手前に開けた小さな穴に自分の切った髪を納めた。
穴にはコロンが着ていた衣類と父親の形見のナイフも一緒に入っていた。
森の動物たちが悲し気にその様子をじっと見ている。
「コロンは俺が預かります。俺なりに精一杯頑張ります。まあ、頼りないかもしれませんが、どうか見守ってください。」
手を合わせて拝んでいるのを見て、コロンも真似て二人で一緒に祈った。
「さあ、出発だ!」
「はい!」「ピッ!」
「みんな今までありがとう!私、ダイチさまと一緒に行くね!
だから、みんな!どうかどうか幸せに!」
墓に供えられた花を揺らした風が、泉の水面を揺らして南へ吹き抜けて行った。
俺たちを導くように。
––––「めぐりあい」了
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
第1章のやっと折り返しです。
1章の後半では、もう1人のヒロインも登場します。
それと、いよいよ物語も動き始めます。
どうぞ、お楽しみに!(^^)
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