第18話 その子ギツネは着せ替え人形になる

 ――親愛なる同士諸君よ。我の鋼の意思を讃え給え――


 ・・・俺はコロンに手を引かれて、泉までドナドナされた。

 コロンの白い背中、細い腰、濡れた尻尾が揺れて〜ら・・・


 「さあ、ダイチさま。早く早く!」


 コロンは泉に膝まで入って俺を急かした・・・。


 事ここに至っては是非もなし!

 極力コロンを見ないように、目をきつく閉じてコロンの濡れた肌に手を触れた。

 ヒンヤリしたコロンの肌に触れた手が、燃えるように熱く感じる・・・。


 「きゃっ、ダイチさま。くすぐったいです。」


 手に持ったスポンジを思わず落としてしまった。


 コロンは油脂で泡立たなかったため、俺は髪を三度、体を二度丁寧に洗った・・・。

 手が震えて、上手く洗えなかったよ・・・ほんと。


 だが、人の気などお構いなしに、コロンはくすぐったいと身をよじってキャッキャとはしゃぐんだ・・・。


 そしたら、


 「ダイチ様!今度はコロンがダイチ様を洗って差し上げます!」


 などとのたまうので、丁寧にお断りしたのだったが、泣く子とコロンの涙目には敵うはずもなく、結局髪だけ洗ってもらったのだった。


 お互いにさっぱりした後、ゴンが気を利かせて果汁1%の果実水を用意してくれた。


 「ん~~~~っ!」


 声にならない叫び声をあげて、コロンが大喜びしていた。

 ナイスだ、ゴン!


 さて、いくら温かいとは言っても、このまま(裸族)ではいけない。(ワイ上裸族状態)

 子供物、しかも女の子の服に関する知識など、クスリにしたくても全くない俺は、全てをまるっとゴンヱモンに丸投げした。


 「ゴン。コロンの衣類一式出してくれ。」


 「ピッ」


 「?」(コクコクと果実水を飲んでいる子ギツネ)


 ゴンが次々とインベントリから取り出す衣類を、黙々とコロンに着せてあげた。

 ・・・同期には既に嫁持ち・子持ちがおるのだが、そいつらこんな気持ちなんだと悟りを得た俺であった。


 「う~ん。下着に関しては何も言うまい。俺も知らんし。

 だが、何故上に着る服にこれを選んだんだ?ゴン!」


 米軍の白っぽい迷彩パターンの戦闘服上下。コロンにピッタリなサイズが米軍にあった事自体びっくりだよ!いや、ゴンマジックなのか?

 しかもお尻から尻尾が出せるように加工がしてある!

 なんて・・・GJだゴン!


 「おお!似合っているよ、コロン。クルっと回って、俺に良く見せてくれないかい?」


 「・・・はい、ダイチさま・・・」


 コロンははにかんで、頬を真っ赤に染めながら、上着の裾をつまんで目の前でクルリと回って見せてくれた。


 キターこれ!コロンしか勝たん!!


 今シャンプーとリンスをしたばかりの長い髪は、水分を含んで黄金の様に輝いている。

 米軍の迷彩パターンが、コロンの薄桃色の肌と黄金の髪を引き立てている。

 米軍がこんなにセンスの良い仕事をするとは・・・あり得ん!


 「うん、まるでコロンの為に作られたようだ!とっても可愛いよ!」


 相棒だった”アイスマン”がよく言ってた。男なら女性を褒める機会は、決して逃してはならないと!


 「そうだ、コロンならこれも似合うんじゃないかな?」


 ゴンのインベントリに手を突っ込んで、朱色のスカーフを取り出して、コロンの襟元に巻いてあげた。


 「うん!やっぱり似合った。この方が女の子らしくてずっといいよ!うん。」


 「ピッ」


 どうやらゴンも同感のようた。


 「ところで、ゴンさん。何か足りない気がしないかな~?」


 「ピッ」


 俺の問いかけに、ゴンは短く答えてソレを取り出した。


 「さすがゴン!よく分かっていらっしゃる!」


 ゴンが取り出したヘルメットは、現在米陸軍で採用されている樹脂製のヘルメットとは形がちがってた。ついにゴンオリジナルデザインかっ!

 そのヘルメットはサイズといい、ヘルメットの上部に付けられて獣人の用の耳の穴といいコロン専用ヘルメットだった。


 「コロン。これをかぶってごらん?」


 そう言ってコロン専用ヘルメットを渡した。


 「はい」と返事してコロンは、ヘルメットをかぶった。


 ヘルメットから突き出た耳が、ピコピコ動いて可愛らしい。


 「ぷっ、はは!ピッタリだね。可愛いよ。」「キュピッ」


 「むう〜」


 そう言ってコロンが口を膨らませた。

 笑ったのがお気に召さなかったらしい。


 お尻の尻尾の穴といい、ヘルメットの穴といい、何気にゴンの有能さに感心した俺であった。

 

 ゴン、恐ろしい子・・・

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