第11話 異世界の月

本日2本投稿します。


ひゃほーっ!休日だぜー!

(本日お仕事の方はごめんなさい。)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 倒れていた金色のケモ耳少女を優しく抱えて、泉の側まで運んだ。

 なんとなくクマの怪物の死体の側に居るのが嫌だったんだ。


 それにしても、日本なら小学校低学年位の子供だろうか?

 粗末な衣類から骨の浮かんだ体が見えて、居た堪れなくなった。


 アフリカでよく見た光景がフラッシュバックする・・・


 何かしてあげたいのだが、先ずはゴンと合流しないと何もしてあげられない。


 ひとまず俺はマルチポーチからフェイスタオルを取り出し、泉の水で濡らして少女の顔や手足の汚れを拭いてあげた。


 「ごめんな、今はこれが精一杯なんだ・・・。」


▽▽▽


 それから2時間程経って、やっとゴンが空き地に到着した。しかも、何故かかなりの数のゴブリンを引き連れて・・・ちょっとしたモンパレ状態・・・どうしてこうなった、ゴン?


 「ピーッ!ピーッピピピッ!!」


 必死に助けを叫んでる様な・・・


 夜の暗闇の中、膝撃ちの姿勢でゴブリン共を片っ端から処分した。


 IVASゴーグルとM157スコープは、闇を真昼に変えてくれる。


 あっという間にゴブ共は片付けた。もちろん一匹残らずだ!

 良いゴブリンは、死んだゴブリンだけだからな。


 「おかえり、ゴン。」


 「ピィ〜」


 ゴンは情けなさそうな返事をして、ボディーを俺に擦り寄せてきた。


 おい、一体お前さん、どこでどんな学習したんだ!軍用AI。


▽▽▽

 

 改めてケモ耳少女を観察した。


 7・8歳位の少女なのに、体からは脂肪が失われて、本来なら愛らしくふっくらとしているはずの頬は骨が浮き出て弾力が無く、皮膚は薄くなって乾燥していた。

 窪み始めた目の周りが、彼女がいかに過酷な生活を送って来たのかを語っていた。


 比較的平な場所にビニールシートを敷いて、その上にウレタン製のキャンピングマットを敷き、その上に少女をそっと移し毛布を掛けた。


 どうしてゴンがそんな物を持っていたのか・・・、みんなのゴンヱモンなら当然さ。少女には今それが必要なんだから。


 「ゴン、難民支援仕様のエマージェンシーキットを出してくれ。」


 「ピッ」


 米軍SOCOM(特殊作戦軍)麾下、不正規戦の訓練でアフリカの某国へ潜入した際、俺は現地の難民キャンプで医療サポートを行った。


 どうして日本国国防軍所属の俺が、米軍SOCOMの麾下にいたかって?

 それは所謂の事情ってヤツさ。


 兎に角、米軍としては現地民の好感ポイントが稼げるし、メディク(衛生兵)たちの経験値稼ぎともなる一石二鳥。

 もちろん本命の、世間様に公表出来ない類のダーティーなミッションもあったのだが・・・。


 そこで俺はこのケモ耳少女より重度の飢餓を嫌になる程見てきた・・・


 「もう大丈夫だから!俺が絶対に助けるからな!」


 両手のコンバットグローブを外し、エマージェンシーキットの消毒ガーゼで良く手を拭いて、キットの中から患者用のバイタルチョーカーを取り出し少女の首に優しく巻いた。


 「ゴン!」


 「ピッ」


 ゴンは短く返事して、少女のバイタルサインを俺のIVASゴーグルに表示してくれた。


 何かゴンのヤツ、正確なコマンドを言わなくても、正しい反応するんだよね・・・。

 以心伝心なんてプログラムがあったのだろうか?さすがインテルチップ!?

・・・しらんけど。


 「血圧が少し低いな・・・」


 俺はエマージェンシーキットの中から飢餓患者用に各種ビタミンを配合された低カロリー輸液パックを取り出して、少女の細くやつれた腕に針を刺した。


 「ゴン、輸液パックを持って、この子を見ててくれ。俺はこの空き地の状況を一回り視察してくる。」


▽▽▽


 その夜、ずっと少女の傍らに座り、彼女の手を握って見守り続けた。


 いつしか青く大きな異世界の双月が夜空に昇って、ゴンと俺と少女を淡く優しく照らしてくれた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

月が好きです。


ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」や、ホーガンの「星を継ぐもの」の影響でしょうか。

どちらも、もはやSFの古典ですね。(^^;;


いつか、月をモチーフにしたファンタジーを書いてみたいです。

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